ゆうこすがさまざまな分野のプロフェッショナルからノウハウなどを学んでいくこの連載。今回は前回に引き続き、ディー・エヌ・エー(DeNA)運営のライブコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」の担当者に、人気ライバーの共通点や企業との取り組みについて聞いた。

(編集部)
 ライブ配信者(ライバー)を育成・マネジメントする321という事務所を運営するゆうこす。彼女によれば、登録している約900人のライバーの間で一番関心が高いライブ配信アプリがPocochaだという。後編ではコラボイベントとして実施した「マスクタイムライン」に感動した様子だった。

DeNAの水田大輔氏(左)
DeNAの水田大輔氏(左)
プロフェッショナルの紹介
今回インタビューしたのは、主にゲームなどのインターネット事業の開発・運営をしているDeNAが提供するライブコミュニケーションアプリ「Pococha」の担当者、同社ネットサービス事業部ソーシャルライブ事業部企画推進部プロダクトオーナーの水田大輔氏だ。Pocochaでは、ライブ配信を始めたばかりの初心者でも、楽しんで配信を続けられるような仕組みをたくさん用意しているのが特徴という。

ゆうこす 前回はPocochaのサービス内容について詳しくお聞きしましたが、ライバーさんが継続しやすい仕組みになっていて、金銭的にも精神的にもありがたいサービスだという印象を強く感じました。ちなみにトップクラスのライバーに共通する特徴はありますか?

水田大輔氏(以下、水田) ファンと家族のように向き合えてコミュニケーションが取れるライバーが人気です。というのも、Pocochaに限らずライブ配信アプリにはファンコミュニティー機能と呼ばれるグループチャットなどができる仕組みが実装されているケースが多い。それはグループやギャング、アジトなど、アプリによって呼び名が違いますが、Pocochaでは「ファミリー」という表現を使っています。そのファンコミュニティーで、ファンをファンとして扱うのではなく、日々の悩みや目標を含めて、まるで家族のようにきちんと向き合えるライバーさんが非常に人気で、ファンの熱量を上げることができているように思います。

ライバーと視聴者がチャットで会話できる「ファミリーチャット」
ライバーと視聴者がチャットで会話できる「ファミリーチャット」

企業コラボ「マスクタイムライン」で大盛り上がり?

ゆうこす 今、ライブ配信業界が盛り上がってきていて、徐々にライブ配信に興味を持ち始めている企業さんもいらっしゃると思うのですが、ビジネスパーソンの中にはマーケティング施策としてどのようにライブ配信と関わっていけばよいのか分からない人も多いと思います。Pocochaさんは企業とタイアップなどは実施しているのでしょうか?

水田 現状は一部のイベントで試験的にタイアップの検証を実施しているところです。直近で面白かったのは、多種多様なデザインが施されたマスクをある企業さんにご提供いただき、特定のイベントでポイントを集めたライバーや視聴者には自宅にそのマスクが届くという企画です。企業さんと一緒に企画を考えたコラボイベントという位置付けになります。いわゆる広告案件ではありません。

マスクを使ったコラボイベント(写真はイメージ)
マスクを使ったコラボイベント(写真はイメージ)

 コラボイベント企画の肝は、「マスクタイムライン」という特設エリアを、さまざまなデザインのマスクを着けたライバーさんで埋められるようにしたことです。みんなで一体感を演出できたので、とても盛り上がりました。今回はあくまでコラボイベントだったので、マスクして配信したらマスクタイムラインに表示されると言っているだけで、必ずマスクを付けてPR的なライブ配信をしなければいけないというルールはありませんでした。

ゆうこす それはすごくいいですね!

水田 「それが届いたのか!」とか「俺そっちのほうがよかった!」などライバーや視聴者同士のやり取りがあったり、みんなでマスクを着けて配信したりするなど、本当に盛り上がりました。昔からライブ配信では、顔出しに対する抵抗があり、今でもマスクを付けて配信しているYouTuberさんもいるほどです。誰でも楽しめるアプリにしていきたいという思いがあるので、「Pocochaってマスク着けている人はいないよ」「マスクしてはダメだよ」という雰囲気にするのではなく、「マスクを着けてるんだ!」「こういうマスクのほうがデザインがかっこいいしお薦めだよ」と言われるようにしたかったんです。

 マスクタイムラインで「マスク着けてもこんなに楽しく配信できる!」と思ってくれた人や、良くも悪くもみんなでマスクを着けて配信するという「ワル乗り感」を使った盛り上げ方をPocochaは試しているという印象を持ってくれた人もたくさんいると思います。まだまだ事例は少ないのですが、今後も試験的にさまざまなコラボ企画にチャレンジしていきたいですね。

ゆうこす すごく楽しそうですね! 私がインフルエンサーやYouTuberとしてPR案件をお受けするときは、プロモーションしてほしいというクライアントさんの商品を持って「これがいいです」って言うだけのお仕事しかしたことがありませんでした。なので、ある商品を使ってみんな一緒になって盛り上げるというのはすごく新鮮で、今後増えてきそうですよね。

水田 Pocochaのファンマネジメントの一環で、ライバーや視聴者と直接運営が関われるミートアップイベント「ポコベース」を月1回くらいのペースで実施しているのですが、そのときにもマスクを着けてくるライバーや視聴者がいます。視聴者の中には、特に意識をしていたわけでもないのにイベントでポイントがたまって家にマスクが届き、感動したから着けてきた人もいました。

ユーザーの声をリアルに聞くことができるリアルイベント「ポコベース」
ユーザーの声をリアルに聞くことができるリアルイベント「ポコベース」

 このような、商品をもらえる体験やライブ配信を通じて得られる感動、ライバーや視聴者同士で繰り広げられる「マスク届いてよかったね」「こんなデザインだったんだ、羨ましいな」などのやり取りは、僕らからわざわざ発信をお願いしたりしなくてもできたのが一番の発見ですね。

 また、今回のコラボイベントは、「認知」というシンプルな文脈でマスクを広く配布することがメインの取り組みでした。

ゆうこす 今後、プロモーションとしてPocochaさんと一緒にやりたいという企業さんがいたらどうすればよいでしょうか?

水田 Pocochaにはパッケージ化されたプロモーション方法がないので、ご相談があればかなり柔軟に一緒に検討したいと思っています。

 我々はオープンプラットフォームという考え方をしているので、Pococha1社で(プロモーション案件を)独占するのではなく、DeNAの分析力やノウハウを活用して支援することで、さまざまな角度から新しい取り組みを始めていければと考えています。なので、ライブ配信の良さである「リアルタイムであること」をきちんと生かすという発想で、Pocochaで何か試験的な取り組みにチャレンジしたいという企業さんがいらっしゃれば、前提にとらわれず挑戦していきたいので、ぜひご連絡をいただきたいです!

今後はさらにイベントを強化する

ゆうこす それは楽しみですね! 今後、Pocochaの機能強化はどのような方向性ですか?

水田 カラオケ機能を追加する予定になっていまして、そろそろリリースします。また、イベントはもっといろんな人に楽しんでもらいたいという思いがあります。今まではBランクからすべてのイベントが楽しめるように設計していたのですが、ランクに関係なくイベントを楽しめる方法があるのではないか、という議論が社内で進んだので、最近はPocochaを始めてすぐに楽しめるイベントをたくさん提供できるように取り組んでいます。

ゆうこす 最後にどんな人にPocochaさんのサービスを利用してもらいたいですか? もし「こんな人にPocochaはお薦め!」というのがありましたら教えていただきたいです!

水田 ここ数年、「経験」によって価値を創出する「経験経済」がトレンドですよね。今後は、その経験経済の中で、「変革経済」と呼ばれる、変わることに価値を見いだす、自分がまだ見たことない世界を踏むという考え方が提案がされていくようです。

 その観点でいうと、ライブ配信はまさに視聴者はライバーが育っていく一瞬一瞬をリアルタイムで楽しめる。一方のライバーは今日や明日、来月という単位で、一歩一歩自分が変わっていく体験ができる職業です。「成功したからやっと○○になれる」というのではなく、成功するまでの間にライバーも視聴者も変わっていけるようになっています。

 1つのイベントが実施されるにあたって、ライバーさんや視聴者からさまざまな声をいただくのですが、EからSランクがある中で、特にBランクやCランクのライバーさんから、「人前で話すことに不安がなくなった」「さまざまな世代とコミュニケーションを取ることで、今まで知らなかった知識や情報を得られるようになり、世界観が広がった」という声がありました。ライバーを見ていると、変革という言葉でしか表現できない事例をたくさん目の当たりにできるので、変革経済の1つのショーケースになるのではないかと思っています。「変わってみたい」「自身を変革したい」という思いがある人が、Pocochaのドアをノックしてくれるとうれしいですね。

ゆうこす ありがとうございました! 本日お話しいただいたことを早速会社に持ち帰って今後のライバー育成に役立てたいと思います!

(写真/稲垣純也)