ゆうこすがさまざまな分野のプロフェッショナルからノウハウやスキルなどを学んでいくこの連載。後編では、前編に続きBASEの執行役員、神宮司誠仁氏と、小柄な女性向けのアパレルブランド「COHINA」のディレクター・田中絢子氏に、ライブ配信を成功させてコアなファンを獲得するためのコツや、今後のライブ配信市場の予測などについて聞いた。

(編集部)
 前回は、BASEの特徴やCOHINAがどのように成長してきたか聞いたゆうこす。後編では、インターネットショップの運営者が、ライブ配信を通じてコアなファンを集めるための取り組みや、日本のライブ配信市場の展望についても、詳しく話を聞いた。

プロフェッショナルの紹介
今回インタビューしたのは、ネットショップを簡単に開設できるサービス「BASE」の執行役員・神宮司誠仁氏と、155センチ以下の小柄な女性をターゲットにしたファッションブランドCOHINA(コヒナ)を展開するディレクターの田中絢子氏。BASEは、HTMLなどの知識がなくてもネットショップを気軽に構築できるサービスで、個人を中心に約80万のショップがオープン。さらに、ライブ配信機能の「BASEライブ」や資金調達サービスの「YELL BANK」など、ショップオーナーを支援するサービスも豊富に用意されている。COHINAは、2018年1月にオープンしたアパレルブランド。小柄な女性を中心に支持を集め、19年3月時点で月商5000万円を売り上げるまでに成長した。ライブ配信を400日連続で行うなど、ファンとのつながりを大切にしながらブランドを展開している。
BASE(東京・港)執行役員の神宮司誠仁氏(左)とCOHINAを運営するnewn(東京・渋谷)の田中絢子氏(右)
BASE(東京・港)執行役員の神宮司誠仁氏(左)とCOHINAを運営するnewn(東京・渋谷)の田中絢子氏(右)

ファンがつく前に諦めてしまう人が多い

ゆうこす 前回は、神宮司さんにネットショップを簡単に開設できるサービス「BASE」の特徴や、BASEを活用してネットショップを運営してきた田中さんに、コアなファンを獲得するに至った施策を聞きました。

 特に、ライブ配信はファンとの距離を縮める重要なツールで、今後も重要性は増していくと思います。ただ、ライブコマースは17年に中国で火が付いて、日本でもたくさんの企業が参画しましたが、いまいち盛り上がらなかった印象です。廃止になったサービスも多くありました。神宮司さんに伺いたいのですが、どうして日本では流行(はや)らなかったと思いますか?

神宮司誠仁氏(以下、神宮司) 日本もライブ配信をする環境は整っていると思います。スマホはほぼ1人1台持っていますし、通信面も問題ありません。ただ、当時はすぐに結果を求めすぎだったのかなという気はしています。ライブ配信は始めてすぐに結果につながるものではありません。COHINAさんのようにコツコツとコミュニケーションを取ってコミュニティーを作ることで徐々に売り上げが立っていきますが、そこへ行くまでに諦めてしまう人も多いですね。

 ライブ配信をすればすぐに売り上げが上がると思っていたのに、想像と違って撤退してしまうブランドも多いですが、見ていて惜しいと思いますね。

 ライブ配信は本来ものづくりと相性が良いと思います。例えば、BASEでは、ハンドメイド作品を作っている様子をひたすら流しているオーナー様もいます。そして、COHINAさんのようにポイントポイントでどっちの色が良いか聞くなど、コミュニケーションを取っています。

BASE執行役員の神宮司誠仁氏
BASE執行役員の神宮司誠仁氏

ゆうこす 確かに! 私も最初にBASEライブを見たときは「えっ?」と思いました。ライブコマースは、芸能人をアサインして高いテンションでひたすら商品紹介をするようなイメージでした。インターネット通販で売っているものを紹介しているだけですが、音質や機材にもこだわって華やかでキラキラしていますよね。

 そのイメージでBASEライブを見てみると、最初は「何だ、このアングラ感は」と思いましたが、一方的に話すのではなく作り手とつながれるような緩い空気がとても良いなと感じました。作り手と話して商品に対する思いやストーリーを知ることで、商品ができたときの感動も生まれますし、そのブランドのファンになるのではないでしょうか。

神宮司 BASEは、誰でも使えるようなネットショップ作成ツールです。そのポリシーをライブ配信として表現するのはどうすれば良いかと考えたときに、自分でものづくりをしている人に積極的に使ってほしいと思いました。BASEは前回もお話しした通り、個人でネットショップを開設している人が多いので、本業が別にある人も大勢います。ライブをテレビ番組みたいにガッツリ作り込んでしまうと息切れしてしまうので、長期的なブランドコミュニティーを緩やかに構築したい人には向いていると思います。

コツコツ取り組んでファンを獲得する

ゆうこす 田中さんはCOHINAでライブ配信を続けていますが、成功するための秘訣は何だと思いますか?

田中絢子氏(以下、田中) 基本的には辛抱強くやり続けるしかないと思います。BASEライブを提供している神宮司さんの横でお話しするのは心苦しいですが、COHINAではインスタライブを使っています。理由は単純に見てくれる人が多いからです。何社かプラットフォームを試しましたが、結局インスタに戻ってきてしまいました。それでもインスタライブを始めた当初は、同時視聴者数は3人程度です。そのうち1人がひたすらコメントをくれて、こちらもひたすら返すような配信を続けていました。

ゆうこす それでも店頭に立って1対1で接客することを考えるとすごく効率いいですよね。

田中 まさにおっしゃる通りです。私たちは数人しかいないのに数千人の視聴者に同時に発信できるのはネットならではだと思います。確かに最初は3人かもしれません。もちろんいきなりコンバージョン(購入)にはつながりませんが、成長すれば強力なツールになります。

 個人的には、最低3カ月は続けてみるべきだと思います。そこまで続けると「この人はインスタライブを定期的にやっているな」とか「細かい有益な情報を教えてくれるな」と感じる人が増えて認知度も上がっていきます。そこからがスタートではないでしょうか。企業なら台本や機材調達など考えることもたくさんあると思いますが、配信自体はスマホ1台あればできます。

COHINAを運営するnewnの田中絢子氏
COHINAを運営するnewnの田中絢子氏

ゆうこす とりあえずやってみるのが大事というわけですね。COHINAさんは、ライブ配信をしていて売り上げが伸びたときはどんなときでしたか?

田中 「視聴者参加型」とか「ライブ配信限定」のような企画があると、視聴者の方も盛り上がると思います。例えば、先日はライバー(配信者)のコーディネート対決をやりました。テーマを決めて2人のライバーがコーディネートした服をどちらが良いか視聴者に投票してもらいます。そして最後には勝ったライバーのコーディネート一式を視聴者にプレゼントするという企画です。そのときは投票数がすごく伸びてコメントもたくさん付きました。単に情報発信するだけならYouTubeでも良いはずなので、「ライブに参加した人しか体験できないコンテンツ」があると良いと思いました。

ゆうこす 神宮司さんはBASEライブ運営者として、視聴者数が多い、あるいは売り上げが高いブランドの共通点は何だと思いますか?

神宮司 きちんと視聴者とコミュニケーションが取れているブランドだと思います。また、COHINAさんと同じように、視聴者同士のコミュニケーションが活発なブランドも強いですね。例えば、BASEライブでは、数週間前にコメントに視聴者の名前が付く機能を追加したところ、同じライブ配信に参加している視聴者同士で(商品の)使い方を教え合っていました。このようなやり取りが自然に発生するブランドは売り上げが高い傾向があります。

自己表現をしたい人がライブ配信に行き着く

ゆうこす 最後の質問になりますが、今後ライブ配信は伸びていくと思いますか? ブレイクする条件などがあれば教えてください。

神宮司 以前のライブ配信は、テレビ番組みたいに力を入れてキチッと作り込む人たちが中心でした。今後は「コミュニケーションを続けるために長期的に行う必要がある」ということにみんなが気づけば、少しずつ伸びていくのではないでしょうか。ゲストに芸能人やインフルエンサーを呼んで単発で盛り上げるのではなく、じっくり取り組むスタイルが浸透してほしいと思います。

田中 私は、今後間違いなくライブ配信は伸びていくと思っています。お客様にアプローチする手段としてやらない理由がないですし、メリットしかないと思います。また、SNSの主流は写真から動画にシフトしつつありますが、YouTubeのようにコンテンツを考えたり編集したりするのは大変です。そんな中で自己表現をしたい人が、ライブ配信に行き着くのは自然な流れではないでしょうか。今後はライバーもどんどん増えていくと思います。

ゆうこす 今回お話を聞いていて、ライブ配信にはトップユーチューバーのようにスターがまだいないと思いました。ライブ配信はコアなコミュニケーションが中心で、配信自体がバズったり再生回数が激増することはほとんどありません。今後、ライブ配信を主体にYouTubeやメディアにも登場する人が出てHIKAKINさんのような人が誕生すれば、ライブコマース市場も拡大していくかもしれませんね。本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!

(写真/稲垣 純也)