ゆうこすがさまざまな分野のプロフェッショナルからノウハウやスキルなどを学んでいくこの連載。後編では、前編に続きBASEの執行役員、神宮司誠仁氏と、小柄な女性向けのアパレルブランド「COHINA」のディレクター・田中絢子氏に、ライブ配信を成功させてコアなファンを獲得するためのコツや、今後のライブ配信市場の予測などについて聞いた。
(編集部)
前回は、BASEの特徴やCOHINAがどのように成長してきたか聞いたゆうこす。後編では、インターネットショップの運営者が、ライブ配信を通じてコアなファンを集めるための取り組みや、日本のライブ配信市場の展望についても、詳しく話を聞いた。
ファンがつく前に諦めてしまう人が多い
ゆうこす 前回は、神宮司さんにネットショップを簡単に開設できるサービス「BASE」の特徴や、BASEを活用してネットショップを運営してきた田中さんに、コアなファンを獲得するに至った施策を聞きました。
特に、ライブ配信はファンとの距離を縮める重要なツールで、今後も重要性は増していくと思います。ただ、ライブコマースは17年に中国で火が付いて、日本でもたくさんの企業が参画しましたが、いまいち盛り上がらなかった印象です。廃止になったサービスも多くありました。神宮司さんに伺いたいのですが、どうして日本では流行(はや)らなかったと思いますか?
神宮司誠仁氏(以下、神宮司) 日本もライブ配信をする環境は整っていると思います。スマホはほぼ1人1台持っていますし、通信面も問題ありません。ただ、当時はすぐに結果を求めすぎだったのかなという気はしています。ライブ配信は始めてすぐに結果につながるものではありません。COHINAさんのようにコツコツとコミュニケーションを取ってコミュニティーを作ることで徐々に売り上げが立っていきますが、そこへ行くまでに諦めてしまう人も多いですね。
ライブ配信をすればすぐに売り上げが上がると思っていたのに、想像と違って撤退してしまうブランドも多いですが、見ていて惜しいと思いますね。
ライブ配信は本来ものづくりと相性が良いと思います。例えば、BASEでは、ハンドメイド作品を作っている様子をひたすら流しているオーナー様もいます。そして、COHINAさんのようにポイントポイントでどっちの色が良いか聞くなど、コミュニケーションを取っています。
ゆうこす 確かに! 私も最初にBASEライブを見たときは「えっ?」と思いました。ライブコマースは、芸能人をアサインして高いテンションでひたすら商品紹介をするようなイメージでした。インターネット通販で売っているものを紹介しているだけですが、音質や機材にもこだわって華やかでキラキラしていますよね。
そのイメージでBASEライブを見てみると、最初は「何だ、このアングラ感は」と思いましたが、一方的に話すのではなく作り手とつながれるような緩い空気がとても良いなと感じました。作り手と話して商品に対する思いやストーリーを知ることで、商品ができたときの感動も生まれますし、そのブランドのファンになるのではないでしょうか。
神宮司 BASEは、誰でも使えるようなネットショップ作成ツールです。そのポリシーをライブ配信として表現するのはどうすれば良いかと考えたときに、自分でものづくりをしている人に積極的に使ってほしいと思いました。BASEは前回もお話しした通り、個人でネットショップを開設している人が多いので、本業が別にある人も大勢います。ライブをテレビ番組みたいにガッツリ作り込んでしまうと息切れしてしまうので、長期的なブランドコミュニティーを緩やかに構築したい人には向いていると思います。