ストーリーづくりが難しいなら、キャラを立てる!

ゆうこす 私はライバーを育成していますが、「モチベーション」と「自己プロデュース」は事務所として支援できると思うんですけど、ライバー個人でストーリーをつくるのって結構難しいですよね。事務所がストーリーをつくって、「あなたはこういう設定で」というわけにもいかないですし……。

前田 確かに、難しいです。これはもはやプロデュースの領域。もし、自分自身がストーリーをあまり持っていないと感じる場合は、ある種虚構の「キャラクター」をしっかり立たせることでも十分に代替できます。有名な歌手でも、本当にその人の人間性をそのまんま反映した人と、全く別のキャラを演じるケースに分かれますよね? 後者を演じきるというのも、一つの手です。

ゆうこす 確かに!

前田 こうやって誰もが異口同音に同じことを言ったりイメージしたりできる状態にもっていくのが、「キャラ立ち」するということかなと。誰かと同じキャラにしても埋もれてしまうので、「ほかの人と比べてどうキャラが違うのか」という俯瞰(ふかん)目線がとても重要です。だから、「あなたはこんな“唯一無二”を持っている」ということに気づかせてあげるのが、今後、ライバー事務所にも求められてくると思います。誰もがストーリーを持っているというわけではないし、必ずしもその必要はない。

 ただ、ちょっと難しいのが、「虚構」がキャラづくりにおいて大事なキーワードであることです。先ほどあったように、ライブ配信はうそをつけない。つまり、一定の虚構性が必要なキャラづくりと、ライブ配信自体の相性が、必ずしも良いわけではない。キャラとは、本人の素の性格とそっくりそのまま一致するものでもない。

 キャラ立ちという虚構性と、うそがないライブ配信の両立は、結構難しいものです。ライブ配信も虚構のまま、演じたままのキャラでやらないといけないとなると、かなりの器用さが求められるからです。だから、動画じゃなくて声だけの配信も増えていたりするのかなと。顔を出さずにいれば、「別の星から来ました、宇宙人です」っていう設定でやろうと思ったら、それで頑張れる。

 一流のアーティストやスターは、ファンと合意の上で、ステージ上で徹底的に虚構を演じられます。多くのライバーは、限られた人数の濃いファンにとっての身近な存在として人気者になりますが、ファンが多くて偶像性の高いいわゆる一流のスターにはなかなかなりづらい。ここが難しいところ。ライブ配信者が一流のスターになるには、どこかで虚構性や偶像性――エンタメで言えば、例えば歌唱力や演技力という実力を磨くこともその一環――を引き上げないといけません。ネット発の歌い手でマス化したスターは何人もいますが、全て、卓越した音楽性が前提となっています。このあたりは次回詳しく話します。