ゆうこすがさまざまな分野のプロフェッショナルからノウハウやスキルなどを学んでいくこの連載。後編では、ライブ配信アプリ「17 Live(イチナナライブ)」を運営する17 Media JapanのCEO(最高経営責任者)小野裕史氏に、企業との取り組みや、日本でこれからどのようにライブ配信が広がっていくのか、ライブ配信市場の今後について聞いた。

(編集部)
 前回は、17 Liveのサービスの特徴についていろいろ聞いたゆうこす。後編では、17 Liveがタイアップした企業との面白い取り組みや、これから日本でどのようにライブ配信が広がっていくかなど、ライブ配信の未来について小野裕史氏に語ってもらった。

プロフェッショナルの紹介
今回インタビューしたのは、ライブ配信アプリ「17 Live」を運営する17 Media Japanの代表・小野裕史氏。17 Live は、アイドルやタレント、アーティストになりたいという夢を持つ一般人がライバーとなり、視聴者の応援によってお金を稼ぎながら夢をかなえていく。この形態を「投げ銭(ギフティング)」といい、視聴者は課金アイテムを購入して自分が応援しているライバーに投げる(ギフティングする)ことによって、応援ができる仕組みだ。そしてライバーは、視聴者から贈られた課金アイテムから報酬を得ている。

花王のケープと大規模タイアップを実施

ゆうこす 前回のお話で、17 Liveさんは独自のイベントをつくったり、100人近い社員がライバーをサポートしたりしていることが分かりました。企業とのコラボやタイアップは事業化していないのでしょうか?

小野裕史氏(以下、小野) そんなことはありません。花王さんとのタイアップ事例を紹介しましょう。2019年の9月に日本上陸から2周年ということで、幕張メッセで2000人以上を集めたリアルイベント「超ライブ配信祭」を開催したのですが、このイベントを花王のヘアスプレー「ケープ」のプロモーションに活用したいと花王さんから相談がありました。

リアルイベント「超ライブ配信祭」
リアルイベント「超ライブ配信祭」
ライバーの中から3人のケープイメージモデルが選ばれた
ライバーの中から3人のケープイメージモデルが選ばれた

 そこでケープのイメージモデル3人を選出するオーディションを企画しました。全女性ライバーを対象に17 Live上でケープについてのライブ配信を実施してもらい、視聴者から贈られたポイントなどをより多く獲得した上位20人が「超ライブ配信祭」で行われる最終審査に進出。「超ライブ配信祭」では投票などの審査を経て3人がイメージモデルに選ばれました。

 ライブ配信をプロモーションに活用することは、あまり事例がないので数カ月かけて(花王さんとオーディションの内容などを)一緒に設計しました。結果的にケープに関するライブ配信が4000時間も生まれたんです! 4000時間ですよ、その時間ずっとケープが語られていたんです。

ゆうこす ちょっと笑っちゃいますね。テレビCMを4000時間流したら、いくらかかるでしょうね……。恐ろしい数字です。

小野 さらにすごいのは、ケープを模したアニメーションギフトが70万回投げられたことです。YouTubeの広告は基本的に見るだけですが、17 Liveのケープの場合は視聴者がアクションを起こすという、参加型のプロモーションになっている。これがライブ時代の新しいプロモーションだと実感しました。花王さんとの取り組みは一つの例ですが、ランボルギーニさんなどの大手ブランドと組んだイベントも開催しています。

ケープを模したアニメーションギフト「ケープベイビー」
ケープを模したアニメーションギフト「ケープベイビー」

ゆうこす 今後も企業とのタイアップを増やす予定ですか?

小野 もちろんです。ライブ配信を誰もが楽しむサービスへと育て、ライブ配信から新たなスターが生まれてくるような世界をつくるためには、大手の企業やブランドとのタイアップは重要だと考えています。台湾はもっと進んでいて、来年に向けて大統領選挙が行われているのですが、大統領候補が17 Liveでライブ配信しています。

ゆうこす 17 Liveでですか!? ギフティングもできるのでしょうか?

小野 もちろんです。国民からのコメントに、大統領候補がダイレクトに返事しているのが面白いです。市長も普通にライブ配信していますし、つまり政治家ですらライブ配信を使っている時代になっているのです。

 また、台湾では17 Liveがつくったライブ配信用の公式番組がテレビにも流れていて、そこに企業がスポンサードしています。同じようなことは日本でもいずれ起きてくると思っていて、1~2年先になるかもしれませんが、台湾で起きたことは必ず日本でも起きるのではないかと踏んでいます。テレビなど大きなメディアと組むのは、ライバーをスターにしていく一つの重要な方法だと思います。

 さらに、20世紀FOXと組んでメインキャストがほぼライバーの映画を製作しており、劇場公開される予定です。つまり、台湾ではテレビにも出るし、映画にも出るライバーが続々と生まれています。同じような世界を日本でも目指していきます。

今後、ライバー事務所が増える?

ゆうこす もし小野さんがおっしゃる通りの世界になるとしたら、今後ライブ配信事務所が増えてくるのではないかと思うのですが、そういう事務所とアプリとの関わりはどうなっていくとお考えですか?

小野 テレビは約70年続く産業として現在も存在しています。そこに多くのタレント事務所や映像プロダクションが関わっています。それと同じ世界がライブ配信にも起きてくるでしょうね。その中で、例えばジャニーズさんや吉本興業さんみたいな有名な事務所もあれば、新興のところもあったり……、音楽やダンスなどジャンルごとに強みを持つ事務所が出てくるかもしれない。日本のライバーをアジアやハリウッドなど、世界に売り出す動きもあるのではないかと思います。実際に中国では、まさにそうなっています。

ゆうこす 日本では17~18年くらいから、ライブコマース向けのアプリが出ては無くなっているという状況ですが、ライブ配信プラットフォームを運営している側からすると、どのように見ていますか?

小野 実は年内には、当社も本格的にライブコマースに参入します! 台湾ではライブコマースが非常に伸びています。驚くことにライブコマースでマンションが売れているんです。ゆうこすさんは洋服をネットで買いませんか?

ゆうこす ほぼネットですね。

小野 考えてみてください。静止画の写真とテキストだけで、よく買えると思いませんか? 動画がある場合もありますが、ライブ配信なら、「こんなにストレッチするんだ」とか「後ろのデザインはこうだ」など、いわゆるリアルな接客と同じようなことができますよね。

 同じように賃貸物件を見に行くときも、不動産会社で気になる物件をピックアップして内見に行きますよね。ライブ配信で同時多発的にたくさんの人に内見を実施できれば、お互い効率がよくなります。

ゆうこす 賃貸ほどやってほしいです!

小野 正直、5つぐらい内見して、4つは失敗した、来るんじゃなかったみたいなことがある。時間のムダですよね。日本では法律の問題もありますが、台湾では同じ原理で、ライブ配信でマンションが売れているんです。なので、ライブ配信のほうが売れるものって必ずある。洋服やアクセサリー、コスメなどがそうだと思います。ライブコマースはようやく日本でも本格的に始まってくると思います。

ゆうこす 17 Liveがライブコマースに参入するというお話がありましたが、なぜ今なのかなと思って。去年、ショッピングアプリにライブコマースが入るなど、いろんなアプリが立ち上がったタイミングでも問題なかったのではと思うのですが、なぜ時間が必要だったのでしょうか。

小野 実は特許が絡んでいます。今までのライブコマースは、ライブ配信を見て買い物をしようとすると、別のサイトに飛ばされて、そこで決済してまたライブ配信画面に戻ってくる流れになっています。それを私たちは、ライブ配信の画面の中だけで、すべてが完了するという新しい技術を開発していて、これが年内にはスタートします。今年の頭から台湾で立ち上がって、国内でもテストをしていました。ようやく日本でも体制が整ってきたというのが現状です。

ライブコマースまだどこも手探り状態

ゆうこす 日本でもライブコマースアプリが増えたのに、あまり盛り上がらなかったのが私には疑問なのですが……。なぜだと思いますか?

小野 いくつか要因はあると思うのです。ライブコマースが難しいのは、まず「売る人」「売るモノ」「買う人」の3つそろえないといけないこと。ライブ配信だと、配信する人と見る人の2つの要素で成り立つのですが、ライブコマースはそこに「モノ」が入るので、やはり難易度は高くなる。その3つをしっかりそろえて日本で展開しているライブコマースの会社はまだ存在しておらず、仕上がりに時間がかかっているのだと思います。

 とはいえ、さまざまな企業がライブコマースへの取り組みを始めていることは、市場全体を盛り上げる意味でとても重要だと思います。すでに中国ではライブコマースは非常に伸びており、日本においても間違いなく期待できる市場だと思います。

今後のライブ配信市場について

ゆうこす すごく楽しみです! 17 Liveさんから見て、今後のライブ配信の未来についてお聞きしていきたいと思っています。今、いろんなライブ配信アプリが出てきていますが、これからはそれが淘汰されて減っていくと思われますか、それともどんどん増えていくと思いますか?

小野 「特化型」のライブ配信が増えると思います。今でもバーチャルライバーだけに特化したアプリだとか、声優だとか、ジャンルがすでに分かれてきています。市場全体が盛り上がってくると、いわゆる限られたカテゴリーで特化した強いサービスが増えてくると思います。

ゆうこす その中で17 Liveさんは今後も夢を追い掛ける人を応援していくのでしょうか?

小野 我々は日本全体のライブ配信市場の中で、売り上げの半分のシェアを持っていて、2位に2~3倍の差をつけています。つまり、「ちゃんとお金を稼げる場所」になっていると自負しています。言い換えれば、それだけライバーにも視聴者にも熱量が生まれているから、お金につながっているのだと思います。

 ライブ配信サービスを提供する企業として大事なのは、ライバーがちゃんと食べていける環境をつくること。それが一番できているのは間違いなく17 Liveだと思っていますし、だからこそ今後は、ミュージックやスポーツなど、さまざまなジャンルのライバーがちゃんと収入を得られる世界を広げていくことが目標です。

ゆうこす ライブ配信だけでなく、ライブコマースのお話なども聞けて、とても参考になりましたし、今後の展開がより楽しみになりました! 貴重なお話をありがとうございました。

(写真/稲垣純也、写真提供/17 Media Japan)