ゆうこすがさまざまな分野のプロフェッショナルからノウハウやスキルを学んでいくこの連載。今回は、数々の有名なテレビCMを手掛けるクリエイティブディレクターの篠原誠氏に、情報やメッセージをうまく伝える方法をお聞きした。

(編集部)
 YouTubeでの動画配信や、Instagramでのライブ配信を行っている、ゆうこす。そんな彼女が、15秒や30秒という短い時間でメッセージを届けるテレビCMに着目した。ネットの動画配信やライブ配信とテレビCMは、いずれも見ている人に情報を届けるという目的は同じだが、両者に考え方の違いや共通点はあるのか――。クリエイティブディレクターの篠原誠氏に、多くの視聴者にメッセージを届けるために意識していることや、思いを伝えるコツを教えてもらった。

プロフェッショナルの紹介
今回インタビューしたのは、CM好感度ランキングで1位を獲得し続けるauの「三太郎シリーズ」や、UQモバイル、家庭教師のトライなどの有名CMを手掛ける篠原誠氏。大学卒業後、電通へ入社。2018年に「篠原誠事務所」を設立して、CMだけでなく作詞やドラマの脚本なども手掛けている。

好きな人からのメッセージは伝わる

ゆうこす 私は企業からのPR案件を受けたり、自分で広告を出すようにもなったのですが、視聴者にどうすればうまく伝えられるのかなど、見せ方に悩んでいます。そこで今回は、篠原さんにいろんなことを学ばせていただきたいと思っています! まずは、篠原さんの経歴や手掛けられたお仕事などについて教えていただけますか?

篠原誠氏(以下、篠原): 私は1年前まで、電通のクリエイティブディレクターでした。クリエイティブディレクターは、企画を立てるCMプランナーや、キャッチコピーを考えるコピーライターを束ねる監督みたいなものですね。私はコピーライター兼CMプランナーでもあるので、自分でCMを企画する場合と、自分の下にチームを作って、ディレクションだけをする場合があります。今はauの「三太郎シリーズ」「意識高すぎ! 高杉くん」、UQモバイル、イケメン5人が登場する花王のアタックZEROや、家庭教師のトライなどの広告を担当しています。

ゆうこす すごい。知っているCMばかりです。auの「三太郎シリーズ」はCM好感度ランキングで4年連続1位ですよね?

篠原 正直、こんなことになるとは思ってなかったのですが(笑)。ほかには、トヨタイムズ、キリンビールの一番搾り、WOWOW、JTなども担当していますが、CMだけではなく、ドラマの脚本を執筆したり、CMソングの作詞もしています。浦島太郎が歌う「海の声」などですね。

ゆうこす 私は普段、YouTubeで動画をアップしているのですが、その動画は15分ほどの尺で作っています。ところが、篠原さんが制作されているテレビCMは、その時間の1/60にあたる15秒ほどです。私は、15秒の動画を作ったことがないので、全く想像ができないのですが、その15秒の動画の中で、人々を楽しませるコンテンツをつくる楽しさや難しさは何でしょうか?

篠原 15秒や30秒と尺が短い映像とはいえ、視聴者の多くは、CMをテレビ番組本編の間に挟まっている邪魔なモノだと思っています。YouTubeのように能動的に見に来ている人たちはほとんどいません。そこで大切にしているのが「共感」です。

 例えば、自分の好きな人が「今日という日は今日しかないんだよ」と言ったら、「ああ、なんか良いこと言うなあ」と思いますよね。しかし、好きでもなんでもない人が同じことを言うと「そんなの当たり前だよ」となるはずです。好きになってもらってからメッセージを届けると相手に受け入れてもらえやすいんです。だから、早い段階で「好感」を持ってもらうように意識しています。そして好感を生むポイントとなるのが、共感です。共感をいかに短い尺の中で生むかが、難しくもあり、楽しいところでもあります。

 共感を生むのは「面白い」「かっこいい」「美しい」など、単純なことからです。例えば、発信者側がかっこいいと思う映像を流し、それを見た人が「かっこいい」と思った時点で共感は生まれます。両者が同じことを感じると共感が生まれるのです。同じ映画を見た感想を話しているときに、泣くポイントや面白いと思ったシーンが同じだと、共感して好感を生みますよね。感じる気持ちの喜怒哀楽は何でもよいのですが、同じところで同じ感情を生むポイントを作ると、共感が生まれて好感が生まれます。ちなみに、一番分かりやすくて手っ取り早い共感を生む手法の1つが、有名人の起用です。メジャーでかっこいいとされている人や面白い人は、その人が出演するだけで視聴者が同じ印象を持つので、共感を生みやすくなるのです。

 次に大切なのが伝えるメッセージを1つに絞ることです。クライアントはさまざまな情報を詰め込みたがります。でも共感のポイントを作ったうえで、1つのメッセージを15秒の中でしっかり届けることが大切です。

大都会・東京はマスではない!?

ゆうこす テレビもインターネットも全国規模だと思いますが、場所によって感覚が違いませんか? 私は福岡県出身ですが、東京と地元では感覚が違う気がします。篠原さんは、都会や地方などを意識してCMを作られているのでしょうか?

篠原 広告はその名の通り「広く告げる」マスコミュニケーションです。いかに人口の大部分の感覚に触るか、ちゃんと気持ちをつかまえられるかが大切なので、とても意識しています。実は、僕がマスだと思っているのは、東京以外です。都会と田舎ではなく、東京とそれ以外に分けています。東京はなぜか特別で、そのほかの地域はゆったりしているし、おおらかだと思います。例えば、地方の結婚式で、旬のギャグをやったとしても、みんな「○○ちゃんおもろいなあ」となりますが、東京では、そういう風景はあまりお目にかかれない。

 東京はとがった表現やシュールなものも喜ばれますが、東京以外の地域では「分からない」とかになってしまうことが多い。逆にベタなものは東京では「なんかダサいね」と思われがちな気がします。もちろん程度はありますが。東京の人口は2000万ちょっとで、日本の総人口1億2000万の2割にも満たないので、マスではないと思って除外して考えています。