前回に引き続き「元美容部員 和田さん。」との対談をお届けする。現在、シャープをはじめSNSアカウントの“中の人”が増えて、話題になっている。これを見た若い社員からSNSを活用したいと提案された場合、いったいどうしたらいいのか――、ゆうこすと和田さん。の答えは?

(編集部)
 SNSアカウントを使って消費者にブランドや商品をアピールしたいと思っている企業は多い。ところが、誰を担当にすればよいのか、また社内で「SNSで発信したい」という若者に対してどのようにサポートすればよいのか分からないケースは少なくない。後編では、社員からインフルエンサーになった元美容部員 和田さん。と、インフルエンサー育成を手掛けるゆうこすに、企業がSNSを活用し、成功するための秘訣を語ってもらった。

美容クリエイター「元美容部員 和田さん。」(左)
美容クリエイター「元美容部員 和田さん。」(左)
プロフェッショナルの紹介
今回インタビューするのは、元美容部員の経験を生かした美容系How To動画が人気の「元美容部員 和田さん。」。2018年5月26日にYouTube チャンネル「和田さん。チャンネル」を開設し、チャンネル登録者数は80万人以上を誇っている。

社内インフルエンサーのメリットとは?

ゆうこす 私は企業に就職せずに起業したタイプですが、和田さん。のように、会社に属しながらインフルエンサーを目指すのは難しいことだと思います。和田さん。はC Channel(東京・港)からどのようなサポートを受けていますか。

和田さん。 動画の作り方が分からなかったので、C Channelが動画を実際に制作する会社だったことは、私にとってとても大きかったです。また、何かに没頭して作ることはもともと好きで得意でもありますが、効果的な見せ方や客観的な視点から見たときの意見などを教えてくれる環境が常にあるというのはありがたい。動画作成だけでなく、スケジュール管理もしてくれるので、全面的にサポートをしてもらっています。

ゆうこす 会社に属しているという軸がありつつも個人の発信ができることは、今の時代に求められています。その一番の成功例が和田さん。なのでしょう。

 でも、動画を作ると「炎上リスク」という問題が付いて回ります。何か問題が起きたときに(責任を)背負いきれなかったりするところが会社としても怖い部分だと思います。和田さん。は、炎上してしまったことはありますか。

和田さん。 個人的には「すごく炎上したな」という感覚になったときはありましたが、会社側がコンプライアンスについて、きちんと知識を持って守ってくれたので、問題が大きくなることはほとんどありませんでした。また、動画を作る段階で「これは危なくないか?」と意見してくれることも、炎上を未然に防げている一因なのだと思います。

 とはいえ、ゆうこすさんもあまり炎上しませんよね?

ゆうこす  私の場合は、「モテ」や「ぶりっ子」というテーマで配信することを明示しているので、それが嫌な人はそもそも見に来ません。自分の軸をしっかり出したのが良かったのではないかと思っています。

 そもそも、企業のことを発信する企業アカウントは、ユーザーから見ると思い入れが持てなかったり、新着情報しか配信していないからフォローしたりする気が起きない、といった状況に陥りがちです。ところが、和田さん。というスターが生まれることで、和田さん。をきっかけにC Channelを知った人もきっと多くいると思います。

 一方、和田さん。もC Channelからきちんとサポートしてもらって自由にコンテンツを作られていて、双方にメリットがあるように感じています。両者がこのような関係になれたことは、企業に所属しながらインフルエンサーを目指したい、SNSで発信したいと思っている人が一番知りたい点ではないかと思うのですが、会社側から要求されたことはあったのでしょうか?

和田さん。 何かを要求されたことはほとんどなく、「YouTubeに関しては何も言われたくない」という気持ちもあったので、結構自由にやらせてもらっています。

 インフルエンサーは名前や顔を出すというリスクもありますし、自分を信じてついてきてくれているお客さまに対して自分が満足のいく情報を伝えることが大切です。なので、企業側から「ここはこうするんだ!」「もっと企業のことをアピールしてほしい」と言われていると、「やらされている」というのが動画を通じてお客さまにも伝わってしまいます。それは絶対に嫌だったので、自分の気持ちを素直に伝えて、理解してもらえたのが良かったのではないでしょうか。

ゆうこす すてきな現場ですね。では、社内に「SNSで発信したい」という部下がいたら、会社側はどんな言葉を掛けたらよいと思いますか?

和田さん。 会社にとってイメージが悪くなることやリスクが発生しうることは避けるべきです。でも、人に良い影響を与えたり、人の気持ちが明るくなったりすることであれば、「まずは好きにやってみたら」と言ってもらえると、部下はうれしいと思います。会社に迷惑にならないようにしようと、自然と思えるはずです。

ゆうこす 今までのお話を聞くと、和田さん。と会社の間で、コミュニケーションを取れる環境があったのが良かったのでしょうね。

 私はTikTokをあまり分かっていませんが、例えば自社の社員が「TikTokをやりたいです!」と言って来たら、未知の世界は怖いので、簡単には任せられません。自分の会社がよく知らないツールで何をしゃべっているのか分からないという状況は不安で仕方がないので。

 企業側は2週間に1回でもいいので定期的にSNSの担当者とコミュニケーションを取って、今のSNSの流行や、今実施している取り組みの内容、何がバズったかなどを話す時間があったらうまくいく気がします。そこで、「ちょっと駄目じゃないだろうか」と思ったら、ストップをかけられる。SNSにはそれぞれ独自の暗黙のルールなどがあり、肌感はずっと使っていないと分からないので、それを教えてもらうことも、会社にとっては有益な情報になると思います。

会社は背中を押してあげてほしい

ゆうこす C Channelでは社員インフルエンサーを育成する取り組みは行っていますか。

和田さん。 社員ではありませんが、素人を発掘するという取り組みはやっています。裏方気質の社員が多いので表に出るのはなかなか難しいのですが、ゆうこすさんの会社でもインフルエンサーの社員さんがいますよね? コミュニケーションをかなり取られているんですか。

ゆうこす 実は毎月面談を行っています。いきなり会って「じゃあ話してください」と言われても、上司には言いづらいと思うんです。なので、デザイン的にもかわいいスプレッドシートをあらかじめ作って、その子自身のやりたいことや、今不安に思っていること、挑戦したいこと、SNSで悩んでいること、会社に求めていることなどを、事前に書いてきてもらっています。もちろん、何を書いても怒らないことが大前提ですが、それを見ながら話すと、「言いづらい」状況を回避できるのではないかと。

 和田さん。のお話を聞いていると、所属している会社にお返ししたいという思いが伝わってきます。

和田さん。 ちょっと人気が出てきたら、会社のことはどうでもよいと思ってしまったり、会社とは殺伐とした関係なってしまったりする人が結構いますが、両者にとって良い関係になるにはサポートし合うというか、コミュニケーションが大事になってくるのは間違いありません。

ゆうこす 今、SNSが分からないけれども挑戦したい若者がいて、会社としてもそういう人が生まれてきたほうがメリットはあると理解していても、どうサポートすればよいのか、そもそも誰を担当にすればよいか分からないケースがほとんどだと思います。

 和田さん。も最初は会社に背中を押してもらって、試行錯誤をしていたとおっしゃっていましたが、実は私もそうなんです。最初から「モテ」とか「ぶりっこ」を確立できていたわけではなくて、配信をしながら、ユーザーからフィードバックをもらいながら自分の個性とか軸が定まっていきました。最初に誰かに背中を押してもらえるのが、一番大切だと思います。周囲でSNSの運用に興味を持っている人がいたら、コミュニケーションを取りつつ、その子の成長を手厚くサポートしてあげたら、双方にとってよい結果になるのではないかと思いました。

 最後に、和田さん。の今後の展望を教えていただけないでしょうか?

和田さん。 自分の武器は、インフルエンサーだけを経験した人には分からない、現場で経験した課題や、一般社会人的な目線です。インフルエンサーとして活動していきたい人のサポートだけでなく、前職である美容部員の活性化や底上げ、自分が今まで通ってきた道の中でぶつかった課題をどんどんクリアにできる事業やサービスを立ち上げたいと思っています。お世話になった美容業界に対して、新しいサービスで盛り上げていきたいですね。今年1年はYouTubeを一生懸命頑張って、来年あたりで化粧品のプロデュースなどもできたらいいなと思っています。

ゆうこす それはすごく楽しみです! 和田さん。と企業とインフルエンサーについてお話をしてきましたが、最初からスーパースターというインフルエンサーはほとんどいません。いろんな経験をしている人が一流のインフルエンサーになれるので、もし社内でSNSを使って情報発信をしたい人が現れたら、会社側は背中を押してあげてほしいと思います。

和田さん。の今後の活躍に期待しています!
和田さん。の今後の活躍に期待しています!

(写真/稲垣純也)