メタボ、やかん、バナナ、おでん……数々の面白蛇口を発表し、その存在を世間に知らしめてきた水道用品メーカー、カクダイ(大阪市)。しかし、ネタだけで生きていけるほどビジネスの世界は甘くない。カクダイがネタで笑いを取りながら、しっかり利益を上げている秘訣(ひけつ)はどこにあるのか?
「いちびる」と「かぶく」
小口覺(以下、小口) お笑いに振った蛇口の「Da Reya(ダレヤ)」シリーズを、2012年1月から販売しています。もうすぐ10年になりますが、売れていますか?
多田修三さん(以下、多田) 面白いと思われても、実際にこうした壁に取り付けるタイプの蛇口が必要な場所って、ご家庭の中でありますか?
小口 ないですね(笑)。
多田 Da Reyaシリーズは最初、社内組織の強化、主に製造工場で一人一人のモチベーションを高める目的でスタートしたので、売る気もなければ、ヒットを狙ったわけでもないんです。
小口 一般ユーザーの反響は想定外だった。
多田 当社は、住宅をプランニングする人や、住宅工事をする人に対して販売するBtoBの会社ですから。ネット記事などに取り上げていただいて会社の認知が広まったのは間違いないですけど。
小口 住宅のプランニングや工事をする業者さんの反応は?
多田 最初は、業者さんが事務所のトイレなどにつけて面白がってくれていました。そこから、飲食店などの店舗で、非日常感を出したいという用途でだんだんと広まっていった。どうせそんなに売れないだろうと、最初は一律1万円に価格を設定していたことも、高く売れる商材という評価につながりました。普通の蛇口は1500円程度なんです。
小口 大阪ならではの笑いも意識されていた?
多田 多くの人は大阪の笑いを勘違いされているんですよ。上方の文化なんでしょうけど、“自分をよく見せるために相手を笑わせる”気質が関西にはあるんです。相手を笑わせることで、自分が優秀であると示しているわけです。我々も自社が秀逸であると見せるために笑いを取りに行っている。笑われようとしているのではなく、自慢してるんですよ。
小口 秀逸さで言えば、デザイン性が高いオシャレな蛇口も作られています。
多田 デザインに凝った製品も、根っこは一緒です。関西特有の言葉で「いちびる」があります。「おまえ、いちびりやな」という風に使いますが、冗談を言って和ませることを「いちびる」という(諸説あり)。関東の人にも分かりやすく言うと「かぶく」でしょうか。“こんなすごいデザインの蛇口があるよ”というのは、私から言うと「かぶく」なんです。
小口 つまり、「いちびる」と「かぶく」で2つのラインを持っている。
多田 こんな形の蛇口は他社には作れないでしょうと、ここ10年、いちびり続けながら、かぶくこともできるようになってきたんです。
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