口中清涼剤「仁丹」のイメージが強い森下仁丹だが、近年は健康食品の通信販売や、他社への原料供給で売り上げを伸ばしている。同社が開発した機能性表示食品の素材や、強みとするカプセル技術について、森下仁丹社長の森下雄司さんを小口覺氏が直撃する。
小口覺(以下、小口) もう年末・年始が見えてくる時期ですが、「おせち」も販売しているんですね。しかも「薬膳おせち」とか。どんな味なんでしょう。
森下雄司さん(以下、森下) おせちは今年で16年目、「薬膳おせち」となってからは今年で6年目になります。薬膳独特の薬っぽい味でなくおいしいと好評で、リピーターも多いですね。
小口 16年も。通信販売で数量限定なんですね。ビフィズス菌のサプリメントなど健康食品も多いようですが、こうした食品は仁丹と何か関係があるのでしょうか。
森下 通販で売っている健康食品などに使われているカプセル技術は、50年前から研究してきたものですよ。
小口 仁丹でカプセル技術?
森下 きっかけとなったのは、液体仁丹の開発です。仁丹は固いでしょう。歯が弱ってきた年配の方には、その固さが問題になるだろうと、口に入れてすぐに溶けるカプセルの研究を1971年から始めました。製品化は92年で、「カプセル仁丹」を発売しました。
小口 カプセルの仁丹……ありましたね。“プチッ”というか“ネチッ”とした食感の。
森下 日本では現在販売していませんが、タイでは「JINTAN NUDE」の名前でまだ売っています。このカプセル仁丹開発の過程で、より甘味を付けられる親水性物質のカプセル化ができ、さらに直径1ミリメートル以下のマイクロカプセル化もできるようになり、食品や医療品など幅広い分野で応用できるようになりました。
小口 それが、ビフィズス菌のサプリに使われている「ハイパープロテクトカプセル」ですか。
森下 腸溶性のカプセルです。ビフィズス菌や乳酸菌は胃酸に弱く、生きたまま腸まで届きにくい。そこで、胃酸で溶けない耐酸性のカプセルを開発しました。しかしそれだけでは消化されずに体から出てしまうので、胃酸では溶けないけれど腸で溶けるように作られています。
小口 薬の効果を体内の狙った場所で発揮させるDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の考え方ですね。それに有効なカプセル技術を持っている。
森下 カプセルを多重構造にして、異なる物質を段階的に放出させることも可能です。例えば、外の成分は口の中で溶かし、中の成分を胃で溶かすことで、口臭と胃が原因の臭いに2段構えで対策できます。食品では、食べている途中で異なるフレーバーに変化させたり、味を長持ちさせたりする効果があります。以前に他社さんが販売していたガムにも採用していただきました。海外の食品メーカー、香料の供給メーカーにも採用されています。
小口 かんでいると途中で味が変化するガム、ありましたね。あれは森下仁丹のカプセル技術によるものだったのですね。
小口 仁丹を液体にしようという挑戦が、会社を支える技術につながったわけですね。実際に、そのカプセル技術を使ったビフィズス菌サプリの評判はどうでしょう。お通じなどの効果はそんなに実感できるものですか?
森下 お通じは、他のお悩みより効果を実感しやすいでしょう。効果を実感してもらえれば継続購入につながるし、周囲の人に紹介してもらうことにもつながります。ヨーグルトなどの食品と一緒に摂取するという考え方もあります。このカプセル技術は雪印メグミルクさんの「恵 megumi ビフィズス菌SP株ヨーグルト」にも採用されているんです。
小口 なんと!
森下 通信販売事業が好調なのは、「仁丹」の名前のおかげでもあります。お客さんは年配の方が多いので、仁丹の名前で大丈夫と思ってもらいやすい。だいぶ高いげたを履かせてもらっていると思います。通信販売を始めてから30年になりますが、皆さんが仁丹を知ってくださっていたおかげで、早くから軌道に乗せることができました。
小口 最初からブランドの認知度が高かったことが有利に働いたわけですね。それも、先にうかがった、仁丹の発売当初から広告に力を入れてきたことが効いていそうですね。
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