鳩(ハト)をかたどった豊島屋(神奈川県鎌倉市)の焼き菓子「鳩サブレー」。鎌倉銘菓だが知名度は全国区だ。豊島屋は鳩グッズや海水浴場の命名権などでSNSでもたびたび話題になっている。明治27年創業の老舗と銘菓が、なぜこれほど人々の興味を引きつけるのか。豊島屋の久保田陽彦社長を小口氏が直撃する。
売名行為は嫌い
小口覺(以下、小口) 老舗の銘菓でありながら、定期的にネットで話題になります。
久保田陽彦社長(以下、久保田) なぜ話題になるんでしょうね? なぜこのタイミングで、何が原因でと、いつも不思議に思っています。例えば海水浴場の命名権なんて何年も前の話(2013年)なのに、定期的にバズるんです。
小口 鎌倉市内の3海水浴場(由比ガ浜海水浴場、材木座海水浴場、腰越海水浴場)の命名権を取得しながら、元の名前をそのまま残された。
久保田 その発表の記者会見も、たいしたことはないだろうと一人でふらっと会場に行ったら、テレビカメラが何台も並んでいて、お昼のニュースにもなって驚いた。こちらとしては、狙ってやっているわけじゃなかったので、訳が分からなかったというのが正直なところです。
小口 それだけ、世間が注目したニュースでした。県外に住む人も「いい話だな」って思いましたから。
久保田 「鳩サブレー海岸」とかにしたら油っぽくて泳ぎたくないでしょ(笑)。鳩サブレーみたいにこんがり焼けちゃうのかって感じじゃないですか。基本的に売名行為のようなことは大嫌いなんですよ。他の人から言っていただけるのはありがたい話ですが、自分からは言いたくない。
インスタグラムは社長みずから
小口 これだけTwitterで話題になるのに、公式アカウントはない。
久保田 Twitterは武器になるのか凶器になるのか、よく分からないのです。ただ、インスタグラムはアカウントがあって、私が毎朝7時過ぎにアップしています。毎日プレッシャーがかかるんですよ。
小口 インスタグラムの効果はありますか?
久保田 店頭にもインスタグラムを見て来ていただいたというお客さんがいらっしゃいます。
小口 お店に来るお客さんの層は? 今日は平日ですが、修学旅行か遠足なのか中学生が目立ちました。
久保田 お客様の年齢層は割と高めです。子どもたちが来てくれるのは本当にありがたい。鎌倉でいい思い出をつくってもらって土産話にしてほしい。お父さんやお母さんに、「鎌倉に行って楽しかった。今度みんなで行きたいね」と。うちのお菓子で、そういう演出ができたらうれしいですね。
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