前回に引き続き、ネットざわつかせる新興家電メーカー・ライソンを紹介する。今回は新製品の「秒速トースター」の開発の背景や工場を持たないことのメリットなどについて小口氏が山俊介社長と開発担当者の甲斐大祐氏に直撃した。

1分かからずトーストが焼ける「秒速トースター」
1分かからずトーストが焼ける「秒速トースター」

高級食パンを秒速で焼くトースター

小口: 58秒でトーストが焼ける「秒速トースター」のクラウドファンディングが始まりました。これは、どなたの企画ですか?

山俊介さん(以下:山): オーナーですね。毎週月曜日に会議があるんですが、そこで「1分で焼けるトースター作れや」と。バルミューダさんはじめ、高級トースターがある中、うちらが作るとなると、とにかく速く焼けるのがいいんじゃないかというコンセプトです。秒速にしたのはシロカさんが1分で焼けるトースターを出したので、1分を切るようにしました(焼き目4で1枚目58秒、2枚目43秒、3枚目38秒)。

小口: 秒速という表現が強くていいですね。

山: 格闘技も1分切ったら「秒殺」と言うじゃないですか(笑)。ポップアップトースターにしたのは、熱源が近くてスピードアップに有利だからです。高級食パンは水分が多く、普通のトースターでは焼き切れないこともある。もう1つ、高級食パンは耳が軟らかいのが特徴で、ポップアップトースターだと耳に加わる熱を調整できるので、硬くならない。

クラウドファンディングの「Makuake」で公開翌日には支援額が100%を突破
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小口: 一般的なポップアップトースターでは2~3分かかるので、それにしても速い。

甲斐大祐さん(以下、甲斐): 秒速トースターでは、通常2枚焼きのポップアップトースターの熱(850W)を1枚に集中させています。このまま2枚焼きにすると、日本の家庭では使用可能な1500Wを超えるので、1枚焼きにしました。

山: 最高400度と、魚焼きグリルぐらいの温度を出しているので、1秒2秒で焼き目の濃さが変わる。パンを焼きまくってきれいに焼き目が付くよう、それはもう何百枚もパンを焼きまくって根性で微調整していきました。

小口: 最後は根性なんですね。

最高温度400度以上と魚焼きグリル並みの高火力のクロムヒーターを搭載し、パンの表面だけを効率的に焼くことができる。水分の蒸発量を4%に抑えることで、高級食パンのもっちり感を残しつつ、外側をサクッとした歯ごたえにしたという
最高温度400度以上と魚焼きグリル並みの高火力のクロムヒーターを搭載し、パンの表面だけを効率的に焼くことができる。水分の蒸発量を4%に抑えることで、高級食パンのもっちり感を残しつつ、外側をサクッとした歯ごたえにしたという

自社で工場を持たないから作りたいものが作れる

小口: 製造を発注する工場はいくつぐらい抱えているのでしょう。

甲斐: 常に動いているのは30ぐらいです。

山: 中国で開催される展示会で見つけることも多いです。

小口: 国が違うだけでも大変そうですが、別の工場に頼むとなると一から関係構築しなくてはならない。

甲斐: 私は中国語が話せるので、直接交渉しますけど、言葉が通じても話が通じない(笑)。品質面のボーダーラインが全然違いますし、向こうには向こうの文化があるのでそれを正していく作業が入ります。それが一番難儀なところで。

小口: 結構強気に出てくるとは聞きます。

甲斐: 向こうでは立場がフィフティフィフティなんですよ。

小口: お金をもらうほうが下ではない。決裂することもありますか?

甲斐: ありますね。「だったらやめる」が脅しじゃないこともあるので。その限界を見極めるのが難しいところです。

小口: コーヒー豆焙煎機の「ホームロースター」を作っている工場はポップコーンメーカーと同じ?

甲斐: 違います。別のポップコーンメーカーを作っている工場ですが、うちが買っているところではない。実は綿あめ機を作っている工場です。付き合いは長いんです。熱源とモーターを使った構造にも詳しかったので話を振ってみました。作りたい商品に応じて工場を選んでいます。

小口: 工場を持たないメリットは?

山: 自社の工場があると、その工場を生かさないといけなくなり、新しいアイデアが生まれにくい側面があると思います。工場を持たない分、アイデアとスピード感で勝負したい。ここ2~3年、中国の工場がAmazon(アマゾン)を通して日本に進出してきているので、自分たちで企画するものを増やしていかないと生き残っていけないと実感しているところです。

小口: 今後もアイデア製品を増やしていく。

山: 資金やリスクの面で限度はありますが、デザインしていても貿易していても、そちらのほうが楽しいとは思うので。

小口: ホームロースターや秒速トースターはデザインを黒で統一、「LITHON」のブランドロゴも入っています。よりブランド力を高めていこうと。

山: ピーナッツ・クラブ(ライソンの母体となった会社)のときは類似商品や価格重視の商品が多かったのですが、それだけでは色々限界が来ました。自分たちの商品を作っていこうとなった。それが会社を独立させた理由でもあります。

小口: ステージを上げるぞみたいな感じですね。とはいえバラエティーものも続けていく。

山: そうですね。意識高い製品ばかりだと疲れるんで(笑)。やっぱり気の抜けた商品を今までのお客さんが求めていますし。取り扱いジャンルは減らしたいという気持ちもありますが、どうしてもお客さんから要望があったりすると増やしてしまう。

甲斐: ついつい思いついちゃうんでね(笑)。

アイデアが製品化するかは社員のやる気次第

小口: 思いついちゃうのは、社員全員が?

山: ええ。会議のときにぽろっとアイデアが出たり、社員からメールが来たり。あとは、ホームロースターのときのように、お客さんにこんなの作れないかと言われることもあります。それらのアイデアに対して形になりそうなものから手を付けていく。これは実現できなかったですけど、タピオカがすごくはやっていたので、社員からタピオカミルクティーメーカーが作りたいというアイデアは出ましたね。

小口: 早くしないとブームが終わっちゃう(笑)。

山: チャーハンメーカーも、ずっとアイデアとしてはあります。パラパラのチャーハンをかき混ぜて作ってくれる。

甲斐: 構造的に複雑になりすぎるし、価格もだいぶ高くなってしまう。フライパン振ったほうが早いんで(笑)。家電はそこのさじ加減が難しいですね。

小口: 最終的な判断はやはり社長が決める。

山: それはそうですが、きちんとしたマーケティングもしないですし、開発のスタッフがやる気が出たら進んでいきますし、やる気が出なければ企画を出した人がやる気が出るまで進めていく(笑)。作れそうな工場が見つかれば動きますし、見つからなければそのままという感じですね。

小口: ゆるいというか、柔軟さが御社のスピード感を生んでいるんでしょう。本日はありがとうございました。

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【意識低いポイント】「やっぱり気の抜けた商品も今までのお客さんが求めていますし」
「大阪らしい」というとステレオタイプの表現に過ぎるかもしれないが、クスっと笑えてネットで話題になるような芸風は強み。面白い思いつきがスピーディーにリアルな製品となる、しかも低価格で生産できる時代だからこそ、ライソンの存在感はさらに強まっていきそうだ。

(写真/小口覺)