東大阪市の新興家電メーカー・ライソン。2万台以上を売り上げたペヤング専用ホットプレートや、巨大わたあめ機、ポップコーンメーカーを応用したコーヒー豆の焙煎機など、ネットをざわつかせる製品を連発している。面白いアイデアがどう生まれて製品化に至るのか、小口氏が同社社長と開発担当者を直撃した。

「焼きペヤングメーカー」。クラウドファンディング「Readyfor」で約518万円を集めた。超大盛りのペヤングがちょうど収まるサイズ
「焼きペヤングメーカー」。クラウドファンディング「Readyfor」で約518万円を集めた。超大盛りのペヤングがちょうど収まるサイズ

小口: ライソンとして家電事業が独立したのは2018年。その前はピーナッツ・クラブという会社で家電を作られていました。

山俊介さん(以下:山): ピーナッツ・クラブはゲームセンターの景品などバラエティー商品を販売している会社です。ラジコンやぬいぐるみなどを中国から輸入し、ドン・キホーテ(ドンキ)さんやディスカウントストアさんに卸しています。

 もともとは、吉名電工という社名で、1970年代は車のオーディオ部品を作っていました。創業者から今のオーナーに代わった際に玩具店を始め、「殻を破る」という意味を込めて屋号をピーナッツ・クラブに変えたそうです(86年)。ライソンは、ゲームセンター以外の販路を担当していた営業部を独立させ、家電量販店やホームセンター向けの商品を企画開発して卸す会社として発足しました。

ライソン代表取締役社長・山俊介さん
ライソン代表取締役社長・山俊介さん

小口: もともと、おもちゃ屋さんやゲームセンターの賞品を扱われていたので、そのバラエティー感覚が家電にも受け継がれているんですね。

山: DNAとしてありますね。会社に応募してくる人も、おもちゃやキャラクターが好きという人が多く、家電が好きな人は来ない(笑)。

「焼きペヤングメーカー」はホットケーキが焼けない!?

小口: 「焼きペヤングメーカー」がネットで話題になりました。

山: 発売から4カ月ほどで2万台以上売れました。芸能人の方がインスタグラムに上げていただいてどっと注文が増えた。

小口: すごい。でも正直そのままお湯入れて作るほうが簡単じゃないですか。水を入れて麺をほぐすとか、ふつうの袋麺のやきそばと同じくらい手間がかかりますよね。

山: 確かにそうですけど、また違ったおいしさになるので。焼く工程によって香ばしく、ソースがよく染みこみ、水分を吸収して食感も生麺に近くなります。

小口: なるほど。これは既存の小さなホットプレートの名前を変えて売ったのでは?

山: 実は違います。最初、フライパンでテストしたときはおいしく焼けたんですが、ホットプレートではうまくいかなかった。おいしく焼くには、ヒーターの温度が足りなかったので、高く設定しました。だからホットケーキは焦げてしまう。お客さまからご指摘をいただきましたが、ホットケーキが焼けるとは言っていない(笑)。

小口: だからペヤング専用。ほかにもインスタント焼きそばがある中、なぜペヤングに?

山: たまたまペヤングのまるか食品さんと取引があり、社長に「これ作っていいですか?」と聞いたら二つ返事でOKをもらえたので。東洋水産さんや日清食品さんとも取引はあるのですが、ホットプレートを作らせてくれるかと言ったらたぶん無理やろう。ペヤングだったらやらしてくれそうやなと。

小口: まるか食品さんは独特のノリの良さがあります。同じ連載で過去に取り上げさせてもらいました(「ギガマックス爆誕 なぜ『ペヤング』は攻め続けるのか」)。しかし、関西だとペヤングはあまり流通してないですよね。

山: そうですけど、ペヤングが好きな人はめっちゃペヤングが好きなんですよ。「U.F.O.」が好きな人よりも好きが大きい印象です。出すんやったらペヤングのほうが刺さると思いました。

小口: それは分かります。

山: メッセージが一番伝わりそうだったのがペヤング。なぜかと言うと、扱っているメインの商品が焼きそばなので。そこは勝算がありました。

小口: なるほど、形状が四角いから作りやすいとかじゃない(笑)。

山: 1回「U.F.O.」でもやったんですけど、焼くとソースの味が少し強くなってしまった。ペヤングのほうが若干薄味で焼いたときにちょうどいい味になりました。

小口: 値段が2980円と安いのも買いやすい。ドン・キホーテで見て、売れなくて値下げしたのかと思いましたが、最初から安かった。安くて面白い家電を「バラエティー家電」と名付けたんですが、御社のオリジナル商品はまさにこれです。

山: その辺は狙っています。パナソニックさんとか大手の家電メーカーと戦っても無理なので。

小口: 笑いを取ってネットでバズらせる戦略。しかも会社の沿革を聞くと、昨日今日始めたバラエティー路線ではないですし。

ライソンはゲームセンターの景品などバラエティー商品を販売しているピーナッツ・クラブから分社化して設立された
ライソンはゲームセンターの景品などバラエティー商品を販売しているピーナッツ・クラブから分社化して設立された
開発・製造を担当している甲斐大祐さん(ライソン国際部 部長)
開発・製造を担当している甲斐大祐さん(ライソン国際部 部長)

ポップコーンメーカーから生まれたコーヒーの焙煎機

小口: 家庭用コーヒー豆焙煎機「ホームロースター」は、クラウドファンディングの「Makuake」では、目標金額の1809%、5428万円も集めました。一般販売価格でも2万円と、焙煎機としてはかなり安い。

2万円と低価格な家庭用焙煎機「ホームロースター」(左)と、アイデアのベースとなったポップコーンメーカー。熱風を当てながら作るポップコーンメーカーのように熱風で焙煎し、同時にチャフ(コーヒー豆の薄皮)を弾き飛ばして分離する機構を持つ
2万円と低価格な家庭用焙煎機「ホームロースター」(左)と、アイデアのベースとなったポップコーンメーカー。熱風を当てながら作るポップコーンメーカーのように熱風で焙煎し、同時にチャフ(コーヒー豆の薄皮)を弾き飛ばして分離する機構を持つ

山: 弊社で長く取り扱っているポップコーンメーカーを改造してコーヒー豆を焙煎している人たちが海外にいたそうです。コーヒー専門店の「ハマ珈琲」さんから、「(焙煎機を)作れませんか」と言われて1回テストしましたが、全然うまくいかなかった。僕らには焙煎の知識がなくて、必要なものが全く分かっていなかった。

小口: 結局焙煎には何が必要だった?

山: 最も必要だったのはヒーターの熱量です。結構、開発に2年ぐらいかかりました。できたときも本当に売れるのか全く分からなかったので、クラウドファンディングに出したということです。ペヤングのときも、それで反響を見ることができたので。

小口: クラウドファンディングの活用はいつから?

山: 18年に発売した「ジャンボわたあめ屋さん」が最初ですね。原宿やアメリカ村で特大サイズのわたあめが流行っていたので作りました。それまでBtoBのビジネスがメインだったので、お客さんからの応援コメントや、めっちゃ汚れるというクレームなどを直接聞けたのは非常に面白く新鮮でしたね。

直径30センチ以上の巨大わたあめが作れる「ジャンボわたあめ屋さん」。2018年、クラウドファンディング「Makuake」にて実施し、約147万円を集めた
直径30センチ以上の巨大わたあめが作れる「ジャンボわたあめ屋さん」。2018年、クラウドファンディング「Makuake」にて実施し、約147万円を集めた

小口: 「ホームロースター」は、ライソンさんにしては意識高い製品ですよね。ドンキじゃなくて、普通の家電量販店に置いてもらえそうな……我ながら失礼な物言いですが(笑)。設計とか大変だったんじゃないですか?

山: もちろん、製品の条件はこちらで決めますが、基本的には提携している中国の工場に投げっぱなしです。

小口: デザインも?

山: はい。「ホームロースター」の場合は、取っ手を付け足すなど使い勝手の部分は後から依頼しました。

甲斐: ポップコーンであれば3分でできるので問題にならないのですが、焙煎は時間がかかるので、その熱に耐えられるような素材や構造を採用する必要があります。それに、最後に組み立てるのも工場ですので、最初から向こうに考えてもらったほうが合理的です。

小口: なるほど。しかし、設計も向こうとなるとパクられ(まねされ)そうです。

山: おっしゃる通りです。日本人の細かい要求に耐えられる工場は数が限られていますので、そこに発注すれば類似製品がすぐに手に入る。すごいスピードでパクられるかもしれません。

小口: 今の時代のものづくりは、そういう世界なんですね。

直径10センチのたこ焼きが作れる「ギガたこ焼き器」。焼き上がるまでに20分以上かかるため、その隣で通常サイズのたこ焼きが作れるようになっている
直径10センチのたこ焼きが作れる「ギガたこ焼き器」。焼き上がるまでに20分以上かかるため、その隣で通常サイズのたこ焼きが作れるようになっている

(後編に続く)

【意識低いポイント】「最初から向こうに考えてもらったほうが合理的なんです」
一般的なメーカーではなかなか言えるセリフじゃないですよ、これ。アイデアに独自性があるからこそ、相手に任せられるのだろう。ファブレスの企業は増えていますが、ライソンが中国の工場とどう付き合っているかは後編で紹介します。

(写真/小口覺)