とりあえずバッターボックスに立て

小口: ここ数年、京都はもちろん大阪でも外国人の姿が非常に目立つようになりました。御社もインバウンド需要は大きいですか。

中西: そうですね。伏見稲荷駅などはここ5年ぐらいで乗降客数が約2倍になっています。

吉城寿栄さん(以下:吉城): 京阪沿線にはJRや阪急と比べても、有名な寺社が多く点在しています。(京阪本線につながる鴨東線の終点)出町柳駅まで行くまでの間に、石清水八幡宮や伏見稲荷大社に始まり、清水寺や平安神宮など、(京阪沿線には)京都の東の観光名所が集まっています。もともと参拝の需要が高い路線であり、昔から寺社とのお付き合いは深かったのです。

中西: 一方で、京都に観光客が集中しすぎるオーバーツーリズム対策として、6月に京都タワー3階にある「関西ツーリストインフォメーションセンター京都」で滋賀県の観光情報を発信する業務もスタートし、観光客に自然の景観など滋賀県の魅力を紹介する活動も進めています。

小口: 比叡山のケーブルカー(比叡山鉄道)や琵琶湖汽船が御社のグループ企業である強みですね。ところで、こうした面白い取り組みができるような社内文化ってありますか。

吉城: 昔から京阪は鉄道ファン受けする会社と言われてきました。車両の構造でも細かいマニアックな工夫をいろいろとやってきました。

小口: 僕らの時代だと、車内にテレビを設置したテレビカーが有名ですけど、台車や駆動方式などの先端技術を、日本で初めて採用することが多い。

吉城: そういうのが好きな会社。通勤電車に5扉車(5000系)を導入したのも京阪が初です。

小口: 1970年ですから、かなり早い。山手線の6扉車導入(2002年)の30年以上前。

吉城: 急行電車を私鉄で初めて走らせたのも京阪です(1914年)。当時は信号機がなく、普通列車しか走らせられなかった。急行を導入するためには、追突しないよう自動閉塞(閉塞)信号機が必要で、米国から輸入した。これも日本初です。

日本初の急行電車に合わせて導入された「色灯式三位式自動閉塞信号機」
日本初の急行電車に合わせて導入された「色灯式三位式自動閉塞信号機」

中西: チャレンジ精神は旺盛です。いまだにCEOも「取りあえずバッターボックスに立て」と言いますからね。最初から諦めるなと。そういうDNAが宿っている。

吉城: クスッと笑えるのも好きですよね。ひらかたパークの「ひらパー兄さん」とか。

小口: ひらかたパーク(ひらパー)は御社グループの遊園地。菊人形展は有名ですね。「ひらパー兄さん」は、東京に住んでいるので、よく知らないですけど。

吉城: V6の岡田君(岡田准一さん)がひらパーの園長としてテレビCMに出演しているのですが、東京では禁止だろうという“いちびり系(ふざけたり調子に乗ったりすること)”なことをやって受けている。岡田くんが出演している真面目な映画のパロディー版を作って横並びに出すとか。

小口: ああ、ネットで話題になっていました。(気になる人は「ひらパー兄さん」で検索してみてください)大阪らしい“いちびり”を今後も期待しています。ありがとうございました。

ひらパー兄さんの最新作は「巨大目洗い」。学校のプールにあったアレが成長して帰って来るという設定
ひらパー兄さんの最新作は「巨大目洗い」。学校のプールにあったアレが成長して帰って来るという設定
【意識低いポイント】「とりあえずバッターボックスに立て」
京阪ホールディングス会長兼取締役会議長CEOの加藤好文さんの発した言葉。あれこれ考えてやらないよりは、まずはやってみる、チャレンジすべきだという意味で使われる。「バットを振れ」も同じ意味。ビジネスの心構えが野球に例えられることが多いのは、分かりやすさゆえだろう(世代によって感じ方は異なるかもしれないが)。ちなみに関西の5大私鉄でプロ野球チームを持たなかったのは京阪だけだが、大手私鉄で初めてCEO/COO制度に移行したのは京阪だそうで、ここでも独自性が光る。

(写真/小口覺、写真提供/京阪ホールディングス)