人気のメニューでも仕入れが高くなれば消える

小口: 実際には、市場の仲卸さんとの信頼関係があって、安い食材をその都度仕入れることで実現できたと聞きました。市場から直接仕入れているからうまくて安いとうたっている飲食店は珍しくないと思いますが。

鈴木悠理さん(以下:鈴木): 鮮魚は、日本中から豊洲市場に集まります。地方の市場でたくさん水揚げがあっても、その市場で流通する量は決まっており、残りは豊洲に運ばれます。その後、大卸→仲卸と食材が分けられていきます。あくまで分けてもらうというスタンスです。

小口: 自分の欲しいものだけは買えない。

鈴木: はい。一方で居酒屋に来るお客さんに、「本まぐろが食べたければコハダを食べなきゃダメだよ」とは言えない。漁船は小売りや飲食店の注文に合わせて獲ってくれるわけではないので、どこかでダブつき続ける。仲卸が処理に困ってしまう魚が出ると、晩杯屋は値段も数量も仲卸の「おっしゃる通り」に買う。それで信頼を得ていって、どんどん良い品を分けてもらえるようになった。

小口: ここまで店舗数が増えても(現在49店舗)安定的に供給できるのでしょうか。

鈴木: 晩杯屋はグランドメニューがないことが特徴であり、強みです。つまり、どんな人気商品でもものがなければ終了で、無理して買って出したりはいたしません。

小口: 安く提供できなければ出さない。以前、「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)でタモリが晩杯屋のアジフライを絶賛したらしいですが、評判になったから定番化しなきゃというふうにはならないんですか。

鈴木: ならないです。話題にしてもらってありがたいんですけど、アジが高くなったらやめます。実際、撮影時に常連のお客様がご注文なさったメニューでも、放映日までに残念ながらメニューから無くなったものもありました。

小口: テレビに映るというのに(笑)。

タモリが絶賛したアジフライ。1尾110円、2尾180円
タモリが絶賛したアジフライ。1尾110円、2尾180円

鈴木: 最近ですと、人気メニューだった塩サバは、市場での価格が高騰しているため、なかなか仕入れられておりません。世の中の需要が高まり、価格が高騰すると、晩杯屋のメニューから無くなることもあります。逆に、旬で安くなった魚は新メニューとして加わる。また、きのこ類は年中採れますが、需要として増えるのは鍋物を食べるようになる秋から冬にかけて。ここで値段が上がってくる。逆に暑い時期は値段が下がるので、夏にきのこメニューを作ったりします。

小口: 市場の調整みたいな役割ですよね。食品ロスをなくすために貢献している。

鈴木: 一般的には、店舗側からの発注に合わせて商品は納品されるのですが、それとは別に、市場で安く手に入った食材があれば送り込むこともあります。店舗は売るしかない(笑)。すごくプロダクトアウトな商品ですが、だからこそ値段も安くできる。大特価で仕入れた商品なので、ボリュームもたっぷりで価格も安いので喜んでいただける。それに、晩杯屋は対面でサービスしているので、「今日は、いい○○が入りましたよ」とお客さんに直接おすすめができるんです。

メニュー。右上に「2019/6/2~」とあるように、メニューが頻繁に更新されているのが分かる。注文点数が多くなるときは、注文票に記入する
メニュー。右上に「2019/6/2~」とあるように、メニューが頻繁に更新されているのが分かる。注文点数が多くなるときは、注文票に記入する

小口: そのあたりはトリドール傘下でも変わらない。

鈴木: スピード感という強みは残していきたい。一方でその他のさまざまな食材は、トリドールグループ傘下になったことのメリットが非常に大きいです。

手書きの張り紙におすすめが
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【意識低いポイント】「世の中で大人気になると、晩杯屋からは消える」
すでに告知したメニューも原料の高騰で中止にしたことがあるという。特定の料理を求めて来るというより、晩杯屋に飲みに行けば、何かしら安くておいしい料理があると考えるお客さんのほうが多いからできることだ。

(写真/小口覺)