婚活に使えるマーケティング

小口: コンプレックスは人それぞれだと思いますが、女性の場合は容姿が大きな割合を占めているように思います。それをどう克服するかが、この本の主眼ですね。

田村: どこにゴールを設定するかにもよりますが、私は男性と付き合ってみたい、結婚してみたい、そしてできれば子供を産んでみたいという願望が強かった。こんな見た目だから夢はかなえられないのかな、というところからゴールを設定し、それに向かって走ってきました。別にゴールが一人で生きていけばいいのであれば相手にどう見られようと関係ないのかもしれないですけど。

小口: 婚活している人によく言うんですけど、顔は結婚にあまり関係ないですね。いい男がいないとぼやいている女性のほうがよっぽど顔は良かったりする。

田村: 顔面だけじゃないですけど、自分にも好みがあるように相手にも好みがある。相手の気持ちを考えられない人はブスだなと思うんです。自分の商品価値を分かっていない人は多いですね。

小口: 「商品価値」と言うとまた反発する人が……。

田村: そう、人間を商品と言うなと怒られる。

小口: しかしブスという言葉を使うなという人でも、見た目で人を判断していることはありますからね。政治家も顔が良いほうが賢そうに見えるので当選しやすいし、ニュースキャスターも顔が良いほうが話す内容に説得力が増すという研究結果もありますし。

田村: あと、見た目が良いほうが、視聴者としては落ち着いて見ていられる(笑)。

小口: しかし、結婚などのプライベートとなると、必ずしも美人や美男子が勝利するわけじゃないですよね。

田村: やっぱり相性じゃないですか。運でもあるし。自分の独り善がりで良い商品だと言い続けても、相手が選んでくれなかったら意味がないわけです。選んでもらえる市場を考えていかないと。

 でも、そう言うと、「自分の好みや希望を無視するんですか」と言われるんですが、それもゴールをどこに設定するか。絶対に結婚したい相手がイケメンでなきゃイヤなのか、とりあえず結婚できたらいいのか。何歳になってもイケメンを待てるなら待てばいいですけど。

時代によってニーズは変わる

小口: 結婚は一つの基準に縛られると失敗しやすいと思うんですよね。年収がすごく高くても暴力を振るう人は困るわけだし。田村さんの本を読んで、クレイトン・M・クリステンセンの『ジョブ理論』(ハーパーコリンズ・ジャパン)に考え方が近いなと思いました。ちゃんと読んではいませんが(笑)。人は、自分自身の“ジョブ”を片付けるためにその商品やサービスを“雇用”するのだという視点です。なので、企業が素晴らしいと思って出す商品が必ずしも売れるとは限らない。

 結婚も、見た目などのスペックよりも、「独りは寂しい」とか「趣味を一緒に楽しみたい」「経済的に安定したい」「手料理が食べたい」といった片付けたいジョブによって成立する側面があると思います。身もふたもない言い方ですが。

田村: 私が結婚するときの売り文句は、「私は一生働き続けます。だからあなたは仕事がつらくて辞めたくなっても大丈夫です。料理はできないけどお金は私が頑張って稼ぎます」というものでした。昔だったら絶対売れ残りますよね。専業主婦が求められている時代に、女性が働くといっても結婚できない。市場と商品の特性がマッチしていないわけですから。