ネット時代は上から行ったらダメ

小口: 尾上さんはネットを得意なフィールドにされていますが、テレビなどの広告との違いは?

尾上: それもまた意識低いに近いかもしれないですけど、ネットでは上から行ったら失敗します。テレビは国営放送から始まったように、構造的に上から降りてくるメディアですが、ネットはボトムアップのみんなで作っていく世界です。そこで上から言ってくるやつはウザい老害みたいになる。そうじゃなくて、この人たちは僕らを好きになってくれそうだなという人を見つけて、一緒の目線で作り上げていく必要があります。

小口: ツイッターのいわゆる「中の人」も、企業代表じゃなく同じ会社員の目線から発信する点が好まれました。逆に外のプロの人ができることはどんなことですか?

尾上: だいぶ昔ですが、クライアントの「中の人」をやったことがあります。面白かったのですが、ずっと続けるのは、本当の社員じゃないと難しいと思いました。その都度、確認を取るのは大変ですし、リスクが取れませんから。SNSで企業が直接発信できる中、代理店ができることは、言葉だけじゃないアプローチで世界観を拡張していくことだと思います。もちろん、その一環でツイートの中身を考えたりしていますし、色々やるんですけど。

小口: 権限のほかにセンスや情熱も必要ですし、シャープのような強いアカウントを社内で作るのはなかなか難しそうです。それに、中の人もキャラクターとして人気になるほど、宣伝しにくくなりますよね。

尾上: 有名な企業のアカウントなのにフランクだと、ギャップで人気を獲得しているので、商品の紹介はむしろしづらくなる。友達みたいな顔して、いきなりモノを売り始めたら嫌じゃないですか。そういうときに、別に広告的なコンテンツがあれば、「こういうの作ったから見てよ、こういうイベントを企画したから体験してよ」とは言いやすいですよね。

【意識低いポイント】「友達みたいな顔して、いきなりモノを売り始めたら嫌じゃないですか」
自分以外の広告コンテンツがあることで、「中の人」も企業人として意識低い系のスタンスのまま活動することができる。ネットでは広告や宣伝の行為が嫌われがちであることが前提。上から目線ではないからこそ考えられる発想だ。

小口: ああ、「会社員なんで一応宣伝しますけど」みたいなスタンスがとれるわけですね。

(後編に続く)

(写真/稲垣純也)

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当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2018年12月4日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています