おもしろ広告のハードルは限りなく高くなる?

小口: 日清食品さんの広告は昔から面白いですが、その中でやる大変さもあるのでは?

尾上: 面白さのハードルが高く、なかなかこれでOKですとはならないのはツライです。「もうちょっと面白くなりませんか」と。これはアイデアを出すほうからすれば結構キツくて、追い詰められます。ひよこちゃんに「やってられっか!」「茶番はもう終わりだ。」などと言わせたのは、そのときに出た僕の本心なんですよ。

小口: (爆笑)

尾上: Webページにひよこちゃんに落書きさせたのも、最初は東新宿にある日清食品の本社にというアイデアでした。「バカ」とか本社の壁に書きましょうよと。ウケたんですけど、さすがに社長が先代に怒られると、Webページになりました。

小口: 犯罪と見分けが付かない広告(笑)。

尾上: 向こうが日和るぐらいなものを出さないとダメなんです。

不良になったひよこちゃんが商品紹介ページに落書き(画像提供/日清食品)
不良になったひよこちゃんが商品紹介ページに落書き(画像提供/日清食品)
公式ツイッターでの過激な発言(画像提供/日清食品)
公式ツイッターでの過激な発言(画像提供/日清食品)

小口: そのとき、これをやったら、どのぐらい売れるとかは考えない。

尾上: 考えないですね。面白けりゃ売れるだろうという発想です。それは日清食品さんの商品が、一度は食べたことがある、思い出すと食べたくなる商品だからです。みんなの記憶の中においしさがあるので、思い出しさえすれば買うんですね。実際、話題になるとものすごく売れています。いかに感情を刺激するか。そこに、数字的な計算はありません。

小口: しかし、そんなクライアントばかりではないですよね。

尾上: 別のクライアントさんの場合は、一応説明するんです。でも、説明しすぎるのはあまり良くないですね。それが意識高いものを産みますから。説得するために、「なんとかモデル」とかを使っていくと、自分もそのモデルにいつのまにか絡め取られてしまう。結果、本当にやりたかったことじゃないことをやってしまう。担当の人から始まって、その上役、さらに上役と通してしていくには、データやロジックを使っていく。そうなると、過去の事例をコピーしたようなものになって、こけるんです。

小口: トップに直接プレゼンしたほうがうまくいく?

尾上: まあ、正直そうですね。その点、日清食品さんは社長とブランドマネージャー、商品担当の人がよく打ち合わせされていて感覚を共有しているのでスムーズです。

小口: とはいえ、日清食品にも飛ばしすぎてダメだった広告とかもあるんじゃないですか。

尾上: それは多分あると思います(笑)。でも日清さんは失敗しても反省をしないというか、それを元に誰かを責めたりはしません。やると決めてやったんだから、それは今後の糧にすればいいと、嫌な感じにはならない。

小口: 常に新ネタに挑戦するお笑い芸人のような。

尾上: 逆に資料でガチガチに固めて通したものというのは、失敗すると誰の責任? となる。面白いかどうかの指標でやれば、外れたとしても俺らの面白いと世の中の面白いが違っていたと考えられるので。

小口: ポジティブですね。岩下食品のときも思いましたが、3代目社長は攻めに転じるケースが多いですね。

尾上: 現社長が大変勢いのある方なので、僕らも乗っかりやすい。多少は、これまで築き上げたブランドを壊しすぎではと不安になることもありますけどね(笑)。

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