社内文書の「てにをは」は直さない

小口: ショッピングセンターへの出店となると、女性客を取り込まないと。

土屋: はい。既存の店舗はマネキンも置いていませんでした。昔は、女性が入りにくい雰囲気で、ほとんどいらっしゃらなかったのですが、最近は2割が女性のお客様です。これは、自分が着るものだけではなく、旦那さんや子どもさんの服を買いに来られる分を含めてですが。

 女性の特徴として、1点でも欲しいものがあれば買いに来てくれるということがあります。それがレインスーツなのか、あったかパンツなのかはまだ分かりませんが、ヒットすれば女性は買いに来てくれる。一点突破ができるんです。それを、ららぽーとで実験したいですね。

小口: ぜひ、実店舗での商品ラインアップを見たいです。

土屋: 我々が一般向けに乗り出すにあたって、ゼロからではなく、本流で売っているワークウェアをスポーツ着として売れる状況があった。これは非常にラッキーでした。

小口: 時代が味方した。

土屋: 後から気づいたんです(笑)。将来のことを考える人はいなくて、日々の稼ぎに追われていたのでなかなか気づけなかったですね。これまで失敗した商品がなく、マーケティング的なことはほとんどやってこなかった。作るだけ売れていたので、むしろ機会損失が多いです。

小口: かなり合理的に無駄を排除したビジネスモデルのように思えます。

土屋: 社内文書なんかだと、「てにをは」の間違いぐらいなら直すなと言っている。直すとお金かかるから、分かればいい、数字だけは間違えるなと。もう余計なことしないで早く帰れと。社長への説明も座らないで立ったままします。そうすれば、短くてすみますから。

小口: 働き方改革としても興味深いです。

土屋: 生産性が随分と上がり、お客さんや加盟店に還元できていると思います。社員も、この5年で給料が100万円上がりました。

小口: まさに、それこそが “やる気ワクワク”の源じゃないですか!

【意識低いポイント】「将来のことを考える人はいなくて、日々の稼ぎに追われていたのでなかなか気づかなかった」
新規事業においては自社に都合の良い未来を考えて失敗するケースが多い。ワークマンの新業態(ららぽーとの新店舗)は、同社が好調である理由から陸続きに導き出されたものであり、非常に手堅いのと同時に発展性が感じられる。また、日々の稼ぎに追われるとは、その瞬間瞬間でお客さんのニーズに対応しているということであり、「考えるな、感じろ」にも通じるポイントではないだろうか。

後編に続く。

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2018年9月6日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています