見積書を必要とする相手とは取引しない

小口: アパレル不況が叫ばれるなか、御社はネット販売ではなくリアル店舗の拡大によって業績を伸ばされています。店舗での販売に注力する理由は?

土屋哲雄さん(以下、土屋): 現在われわれが825店舗で、2位(の会社)が50店舗、3位が40店舗ぐらいです。

 ワーキングウェア(作業着)の市場は全体で3000億円ぐらいあるのですが、その6割は法人向けです。ワークマンは、残り4割の自営業など個人向けマーケットに特化しています。従業員が20人以上の会社や、見積書を必要とするような会社とは商売しません。店舗に来て現金で買ってくれる場合は別ですけどね。

 残り4割といっても1200億円の市場です。この市場では(弊社には)競合相手がいません。おそらく売り上げ1000億円、1000店舗までは、昼寝していても行くと考えています。

小口: ワークマンの強みは、やはり価格ですよね。放熱冷感の半袖Tシャツが税込み499円、企業ユニフォームとして着られる長袖シャツとパンツの上下が税込み3000円と、圧倒的に安い。

土屋: 上下で3000円は、日本の工場はもちろん、中国でも実現できません。ミャンマーで生産してやっとできた。とはいえ50万着以上発注しないと、この値段にはなりません。うちは種類によっては350万着発注しますからね。ちなみに、国内の建築技能労働者は320万人ぐらいです。

WMCRAFT ジャンパー(左)とカーゴパンツ(右)。税込み各1500円
WMCRAFT ジャンパー(左)とカーゴパンツ(右)。税込み各1500円

小口: サラリーマンにとってのワイシャツやスーツのようなものなので、1人で何着も必要とするのでしょうね。さきほど、法人の市場のほうが大きいと言われましたが、個人向けに特化している理由は?

土屋: 会社支給なら高いものがいいんですけど、個人で買うのは安いほうがいい。だから上下で3000円の作業着が売れるんです。

小口: 消耗品ですし、それは安いほうがいいですね。

土屋: もうひとつ起こっているのが、ワーキングウェアのスタイリッシュ化です。3年ぐらい前からワーキングウェアと一般的なアパレルでデザインなどの違いがなくなってきました。これは、建築現場での人手不足が原因です。昔ならば、ド派手で一見しただけでは作業服だか一般的な洋服だか分からない服装では、現場に入れてもらえなかった。今はどんな服装でも許容しないと若い人が集まらないので、工期が遅れてしまう。

小口: 確かに、工事現場の人の服がカラフルになってきた気がします。

土屋: そんな理由もあって、ワークウェア、とくに個人で買うものはファッショナブルになってきました。私が今着ているものも作業着です。

小口: クールビズなど、企業でも服装のカジュアル化が進んでいますから、違和感ないですね。

土屋: 下をデニムにするなどすれば、ちょっと地味目で男っぽい普段着になります。作業着として上下セットで売っている商品でも、上下を別にして売れば、カジュアルな日常着として売れるんです。

小口: 確かに! その発想はなかった。セットでなければ、カーゴパンツとか種類が豊富で結構カッコイイですね。今回の「ららぽーと立川」への出店も、ワークウェアがファッショナブル化して、一般の人にも売れるようになったことがベースにあるんですね。一般向けとなれば競合もたくさんありますが、勝算は?

一見するとワークウェアには見えないGERIDE(ジェライド)。ストレッチジャンパー(左、税込み3900円)、ストレッチカーゴパンツ(右、税込み2900円)
一見するとワークウェアには見えないGERIDE(ジェライド)。ストレッチジャンパー(左、税込み3900円)、ストレッチカーゴパンツ(右、税込み2900円)

土屋: 下の図は、縦軸を価格、横軸をデザイン性と機能性で分けたものです。右上の場所には、デザイン性と価格の両方が高い、アパレルの高級ブランドが入ります。その下(低価格、デザイン性)は、いわゆるファストファッションで、ユニクロやZARAの2社が強い。左上(高価格、機能性)は、スポーツブランドやアウトドアブランドです。ノース・フェイスさんやアシックスさんなどですね。そして左下、低価格で機能性が高いというのは、少なくとも国内には1社もないんですよ。この空白の市場が約4000億円あると考えています。

小口: 防水・防寒など、進化した素材が安く供給されるようになったからこそ、ここの市場が生まれたということもできそうです。一般向けのアイテムもワークウェアと同じように、大量に作られるのですか?

土屋: スポーツで売れなければワークとして翌年売りますから、10万着は作れます。これも、ワークがカジュアルと一緒になってしまったからこそできることです。今やデニムのワークウェアは普通で、もっと派手なものもありますから。

小口: そこは既存の店舗数の多さが強みになるわけですね。新業態への挑戦ではあるのですが、かなり手堅いですね。