ツイッターのリストは5万以上

岩下: Twitterで商品などの紹介をするようになって、一番反応が良かったのが岩下の新生姜のレシピでした。実際にお客さんが作って写真とともにアップしてくれる。それを見た人がまたおいしそうと作り、それが回転していく――。

 自前でクックパッドを作ったような気分でしたね。僕はリツイートしてるだけなんですが。そんな中、ファンの方から「レシピ本を作ったら」という意見が出てきて、2012年に出版しました。

小口: 「We Love 岩下の新生姜」(マガジンハウス)ですね。

オリジナルレシピやTwitterの投稿が掲載された書籍「We Love 岩下の新生姜」(マガジンハウス)
オリジナルレシピやTwitterの投稿が掲載された書籍「We Love 岩下の新生姜」(マガジンハウス)

岩下: ただ、普通のレシピ本にするのは嫌だなと思い、253人のツイートをそのまま掲載する形にしました。許諾を取る手間もかかりますから、出版社は最初抵抗していましたが、最後は全部僕が許諾を取った。というのも、ファンの熱をそのままパッケージにしたかったのです。まだ「大切なお客様」のリストが6000人、私がお気に入りに登録したファンのツイート数が3万ツイートだった時代です。今ではリストは5万人以上。お気に入り登録数が71万ツイートですから、とても作れませんね。

小口: それこそ、クックパッドのようなWebサイトでないと。お客様リスト5万人はフォロワー数(約4万2000人)よりも多いですね。

岩下: リストに登録しているのは、岩下の新生姜について何かしら発言してくれた方々です。買っていただいた、食べていただいた、さらに広げてくださったので、リストの名前を「大切なお客様」としています。

プロであるわれわれよりお客様のほうが自由

岩下: 岩下の新生姜は自由であるべきと、これまでさまざまな試みをやってきました。しかし、固定観念というのはなかなか根強い。たとえば、「ぽかぽか生姜めしの素」は、岩下の新生姜を材料にするようリニューアルしたのですが、パッケージに「岩下の新生姜」の文字は入っていません。岩下の新生姜は酸味があって爽やかで辛味が少ないのが特徴ですが、炊き込みご飯のように加熱すると辛さが増して香ばしい傾向の味になる。いわゆる岩下の新生姜らしさがなくなるため、担当者はお客さんが誤解するといけないと外してしまったのです。僕は後から知ったのですが――。

小口: それは、もったいないですね。

岩下: 岩下の新生姜は、一般の人たちのほうがはるかに自由に使ってくださっていた。加熱すると辛さが強まることも、もちろん承知で。自分たちはプロだから偉いと思ったら負けなんです。謙虚に耳を傾けていかないと。もちろんプライドを持って仕事をすることは大事で、お客様に間違いのないものを届けるぞ、という意識は必要だけど、「俺の言ってることが正しい」は結構間違ってる。まさに、意識高くないマーケティングである必要があるんですよ。ちょっと話をしながら偉そうになってきているんですけどね(笑)。

【まとめ】仕事と個人は分けるべきという「固定概念」を壊す
岩下社長には、取材開始早々に「意識低い」の意味を、すぐに理解いただけた。社長の重要視する意識低いポイントをまとめると、普通であること、愛があること、自由であることの3つではないだろうか。パブリックとプライベートの境界にこだわらず、自然体で情報発信する普通さ。音楽や商品への愛情と、お客さんから寄せられる愛。そして、漬物のイメージ、固定概念からの解放。それらは、Twitterや商品、岩下の新生姜ミュージアムからも強く感じられる。

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2018年4月19日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています