ミュージアムは赤字でいい

小口: 岩下の新生姜ミュージアムは、どういう声から実現したのでしょう。

岩下和了さん(以下、岩下): 以前から、「岩下の新生姜が食べられるレストランやバーを作りなよ」という声をいただいていました。また、僕がフェスやジャズのライブに足しげく通っているので、「社長はいつかジャズ喫茶を作ったらいいね」「フジロックで新生姜を食べたいから店を出してくれないか」と言われることもありました。

 フジロックは出店費用が高いし運営も大変そうなので、地元のフェス「ベリテンライブ」を協賛することにしました。そこで、協賛初年度から一本串に刺した岩下の新生姜を売り出しました。最初は挑戦だったのですが、今ではそのイベントの名物となっています。岩下の新生姜を片手にロックの爆音に身を委ねる若者たちを見つけては、目を潤ませています。

小口: 岩下の新生姜ミュージアムは、ライブステージやカフェもあり、まさにTwitterの声が実現されたわけですね。それにしても広くて立派な建物です。

お花見シーズンに合わせてデコレーションされたライブステージ。世界で1台の新生姜色のピアノが設置されている
お花見シーズンに合わせてデコレーションされたライブステージ。世界で1台の新生姜色のピアノが設置されている

岩下: ここは、もともと父が所有する美術品を展示する美術館でした。父が病気になり、本人の意思で美術品を全部処分し、建物だけが残っていました。岩下の新生姜のレストランを開こうと、東京で物件を物色していた時期もあったのですが、ここを活用することにしたのです。

小口: 入館は無料ですが、収支は。

岩下: もちろん持ち出しですけれども、費用はそれほどかかっていません。テレビにCMを出すのに比べれば、たしたことはないです。社内にも、ミュージアムは、売店の売り上げなどの採算が最優先ではないと言っています。もちろん無駄遣いはいけませんが、そうでないなら、ここではお客様が喜ぶような赤字には目をつぶっています。ここは広告宣伝の施設ではあるけれど、そもそもファンの方々に喜んでもらうために作ったので。

 商売として見るなら、ミュージアムからお客様がお帰りになってからが勝負です。岩下の新生姜を好きになっていただいて、日々のお買い物で長くご支持いただけるようになればという思いです。だから、ミュージアムは、どれだけ楽しんでもらえるか、いい気持ちになっていただけるか、それが一番大事な仕事です。オープンから3年を迎えるのですが、入館者数は間もなく30万人。片田舎ですし、想像もしなかったほど大勢の方にご来館いただいて、感謝でいっぱいです。

ファンアートやコラボグッズと、まじめな新生姜についての説明が同居するカオスな館内
ファンアートやコラボグッズと、まじめな新生姜についての説明が同居するカオスな館内