個人と仕事を完全に切り分けることは不可能

小口: お話を聞いていると、趣味から始めたとはいえ、かなり仕事としての意識が高くなっている。

岩下: お礼のコミュニケーションは取るけれども、仕事と呼べるレベルのものではないと僕は思っていたし、実は今でもそう思っているところはあります。ただ、ネットの世界を経由してテレビに情報が入ったり、色々な媒体に取り上げられたりして、年齢層が上の方たちが新生姜を再発見してくださる現象は起こっています。

暁美ほむら(『魔法少女まどか☆マギカ』)に扮する岩下社長。脚がキレイ!
暁美ほむら(『魔法少女まどか☆マギカ』)に扮する岩下社長。脚がキレイ!

小口: Twitterも社長アカウントとしての存在が大きくなると、以前写真をアップされた『魔法少女まどか☆マギカ』のコスプレのようなものは、今後やりにくくなりません?

岩下: 暁美ほむらというキャラクターのコスプレだったのですが、最初に公開したのは2012年ですね。最近また話題にされているのですが、なぜ暁美ほむらだったかは、まさに仕事抜きには語れないんです。

小口: というと?

岩下: 今の時代の仕事のあるべき姿と、自分がこの立場で働くことになった原因ともいうべき「家」の論理など、さまざまな葛藤があり、信じたことを必死で積み重ねては、粉々に砕かれ、一からやり直しみたいなことが多かったんですよ。

 暁美ほむらというキャラクターは、時間を遡行できる能力を持っていて、魔女に戦いを挑む。鹿目まどかという女の子を助けようとするのですが、何度戦っても勝てない。さらに、時間遡行を繰り返すことで因果が濃くなり、悪循環となる。つまり、仕事についての感情移入したのが、あのコスプレというわけです。

小口: そんな深い意味が込められていたとは……。

岩下: mixiまでは仕事のバックグラウンドを出していなかったんですが、どこか座り心地が悪かったんですよ。隠すようなことでもないのに。自分について仕事抜きに語れるはずがなく。なのでTwitterは仕事についても語れる場所にしたというのが実態です。

小口: 身元を明らかにしたことで自由度が高まった。

岩下: それまでは匿名のほうが言いたいことが言えると思っていました。でもそれは違っていて、事実を言っていないに等しい。暇つぶしにはなるけど。Twitterを絶賛するつもりは正直ありませんけれども、お客さんとのコミュニケーションは、何よりもうれしいなと思う気持ちでやっています。そのために時間を割いているけれども、今の規模だからできることでもある。しかし、既に、今でもかなり無茶をしてTwitterの時間を捻出しています。1日平均で500いいね、多いときでは1000いいねを付けていますから。

小口: 機械的にクリックしたとしても相当時間かかりますよね。いわゆる「中の人」を立てようと思ったことは。

岩下: そのために人を雇うとなると、うちの商品群の単価と買う世代を考えるとコストが合わないでしょうね。若い層の商品や高額商品であれば見合うかもしれませんが――。いろいろ考えさせられる投稿もありますし、だから自分自身でやっているところもあります。

小口: 社長は暇なのかと言われたりします?

岩下: しますします。社内でもそう思われているかも。経営者なので労働基準法は適用されず、誰にも文句を言われない存在ですけど。ただちょっとやり方を考えないと、本気で睡眠不足ですね。でも、何より、私のTwitterで、ファンの皆さんが喜んでくださるのが、本当にうれしくて。悩みどころです。

無料で公開されている「岩下の新生姜ミュージアム」。後編では、この施設の狙いに迫ります
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当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2018年4月9日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています