漬物という言葉を使わないようにしている

小口: そもそもの話になるんですが、新生姜というのは固有名詞なんですか?

岩下: およそ30年前、全く新しい類の生姜を発売するということで、会社として名付けました。大阪に対する新大阪のようなものです。

岩下の新生姜は、台湾のみで栽培される特殊な生姜「本島姜(ペンタオジャン)」を使用。土をかけることで芽の部分を伸ばし、やわらかくく辛みの少ない生姜となる
岩下の新生姜は、台湾のみで栽培される特殊な生姜「本島姜(ペンタオジャン)」を使用。土をかけることで芽の部分を伸ばし、やわらかくく辛みの少ない生姜となる

小口: 新じゃがや、新玉ねぎとは違うと。

岩下: そう、新玉ねぎじゃない。ヤングジンジャーではなく、ニュージンジャーです。

小口: パッケージには「New Ginger」とありますし、ここ(岩下の新生姜ミュージアム)の壁にもNEW GINGER MUSEUMとでかでかとピンクの文字が。

岩下: ただ、コストコさん向けのパッケージだけは「ShinShoga」になっています。英語としては間違っていると言われ、理解していただけなかったんです。いいんですよ、間違ってても別に。でも、コストコさんのそういうまっすぐな姿勢は好きです! ならば、ご要望にお応えします!

小口: コストコだって、英語読みはコスコですしね。

【意識低い系ポイント】「いいんですよ、間違ってても別に」
ノートパソコン、ガソリンスタンドなど、日本には和製英語があふれている。海外では通じないことを鬼の首を取ったように指摘する記事もあるが、致命的でない限り、細かい間違いは気にしなくていいのではないか。とくに商品名やキャッチコピーは、正しさよりもオリジナリティーのほうが大事。

小口: ほかにも、らっきょう漬けなどを商品として扱ってらっしゃいますが、その中で岩下の新生姜の割合はどのぐらいあるんでしょうか。

岩下: 紅しょうがやガリ生姜、新生姜を含めた生姜群で半分ぐらい。らっきょうが3割ぐらい。残りの雑多な商品が2割です。

小口: Twitterでは岩下の新生姜以外の商品に対する言及があまりないと感じられるのですが、一番売れている岩下の新生姜に経営資源を集中するというお考えから?

岩下: 岩下の新生姜の場合、若い人の購入が多少増えている傾向があるとはいえ、実態としては上のほうの世代の購入が多いです。そもそも、若い人たちはスーパーの漬物売り場に行かないですよね。キムチ鍋は若い人も食べるので、キムチを買いに行くぐらいじゃないでしょうか。いわゆる伝統的食品としての漬物、浅漬け古漬けの類が毎日の食卓にないと寂しいと思っていた時代は、商売がやりやすかったんですけど。

 ここ30年から40年、厚生労働省が塩分に関する啓発活動を続けてきました。日本人は塩分取り過ぎなので気をつけようと。塩分が高いものといえば、ラーメン、味噌汁、漬物。ラーメンのスープは残せばいい、お味噌汁も朝だけにしようとか量を調整すればいい。漬物については、伝統的な和食文化が衰退していることもあり、そもそも食べないから、これからも食べなきゃいいんだね、となる。健康を気遣う年配層も敬遠するようになるし、若い人は全然食べなくなってしまった。今の世の中で、健康にネガティブな商品が売れるワケがありません。漬物業界の将来見通しは今のままだと暗いですね。

小口: 生姜自体には、健康的なイメージがあるような気もしますが。

岩下: 岩下の新生姜は新しいタイプの生姜で、普通の生姜とは違うスペックや味わいがある。あとは、料理のバリエーションの豊富さ。そこはきちんと伝えていこうと思ってやっています。

小口: 売り上げとしては、どんな推移になってるんですか。

岩下: 漬物マーケットも、岩下の新生姜も、共に2000年ぐらいがピークですね。そこからじわじわと右肩下がりが続き、遂には売り上げはピーク時から4割近くまで減少しました。漬物マーケットについては手がつけられない縮小傾向にありますが、岩下の新生姜は、ここ数年は、V字回復的に反転し、2桁の伸びを3期続けています。岩下の新生姜の位置づけを従来の漬物から変えようとしている。それもあって、Twitterでは漬物という言葉をあまり使わないようにしているんです。

収穫された生姜は冷蔵輸入され、日本国内の工場で加工される。パッケージには、「New Ginger」の文字が
収穫された生姜は冷蔵輸入され、日本国内の工場で加工される。パッケージには、「New Ginger」の文字が