ニッチ市場ナンバーワンを目指す
井下: 有名なメーカーがひしめく大きなマーケットで戦うのは苦手で、小さな、誰も見向きもしないようなマーケットで一番を取る戦略が好きです。たとえば家庭用のかき氷器の市場は年間約85万個ですが、そのうち55万個はわれわれが売っている。
小口: ダントツじゃないですか。昔から市場規模は変わらないのですか?
井下: 昔から85万個から90万個ぐらいですね。最終的には一家に1個ぐらいある計算になるのかな。
小口: たこ焼き器に近いでしょうか。みんな知っていて、実家にあったりするけど、そんなにしょっちゅうは買わない。
井下: そもそもかき氷器を市場として選ぶことが不思議だと思われるようで、後から参入してくる会社もほとんどありません。
小口: これだけドウシシャがシェアを押さえていれば当然にも思われます。昔はかき氷器というと、夏休みに子供が楽しむオモチャ的なイメージでした。
井下: 実際にそういう流れがあって、1990年代はハローキティ、ドラえもん、セーラームーン、ウルトラマンなど、ありとあらゆるキャラクターをかき氷器に貼り付けてかなりの量を売りました。ニッチで一番でも、開発は常に新しいことを考えていて、5年ぐらい前から大人向けのかき氷器を企画しました。
小口: 僕も3年ぐらい前に買いました。なぜ大人向けに作ろうと?
井下: かつては、かき氷は冷やし中華のような、喫茶店が季節モノで扱うイメージでした。ここ数年は、「アイスモンスター」をはじめ、海外のかき氷専門店が上陸し、1000円出しても行列を作っている。かき氷をスイーツとして大人が食べるといったニーズの変化が見られました。(大人向けかき氷器の)問題は、価格が(機能が高いので)5000~6000円と従来の倍ぐらいになること。高くて売れない懸念もありましたが、結構売れて、単価が高いぶん売り上げも上がるうれしい結果になりました。