バッテリーで自走する新しい2輪モビリティー「電動キックスケーター」の人気が海外で高まっている。自転車より気軽に乗れるうえ、安価なシェアリングサービスが世界各都市で急速に広がっているためだ。日本でもMaaSのファースト、ラストマイルの本命として、サービス提供を目指す動きが出てきている。

 福岡市民の間で桜の名所として知られている舞鶴公園。約1000本の桜が満開に咲き乱れた2019年3月、電動キックスケーター「mobby」の試乗会が開かれ、2日間で約400人が詰めかけた。

 「電動アシスト自転車と同じ感覚で乗れた。公道でも走ってみたいかも」。たまたま花見見物に訪れていた40代男性会社員は、興味本位で未知の乗り物に挑戦してみた。「簡単に乗りこなせ、(さっと横に降りれば)すぐに止まれるので意外と安全」と驚きを隠せない。電動アシスト自転車の法定最高速度である時速24キロメートルとほぼ同等のスピードが出せることにも感心した様子だった。20代など若者ばかりでなく40代以上も行列に並び、参加者の95%が「楽しい」とも回答するなど、試乗会は盛況のうちに幕を閉じた。

AnyPay(東京・港)は2019年3月、2日間にわたって電動キックスケーター「mobby」の試乗会を開いた(写真提供/AnyPay)
AnyPay(東京・港)は2019年3月、2日間にわたって電動キックスケーター「mobby」の試乗会を開いた(写真提供/AnyPay)

老若男女問わず自転車より簡単に乗れる

 電動キックスケーターとは、バッテリーで自走が可能な2輪の乗り物だ。ハンドルに手を添えて直立で乗り、地面を数回蹴ると後は自動的に走り続けてくれる。「電動キックボード」「電動スクーター」などとも呼ばれ、海外では街中で借りられるシェアリングサービスが普及したことで、急速に市民の支持を集めつつある。

 「練習不要で誰でもすぐに乗りこなせる。速度や走行エリアを遠隔制御で制限する工夫もある。シェアサイクル以上に操作性が良く、しかも安全」。試乗会を開催したAnyPay(東京・港)取締役の日向諒氏は、電動キックスケーターの将来性に同社が期待する理由をこう明かす。

 福岡市は18年12月、電動キックスケーターを使って市民の移動を効率化・活性化したいというAnyPayの提案を、同市が主催する「実証実験フルサポート事業」に採択した。この事業は、先端技術を使った実証実験を福岡市内で行えるようにするもので、キャッシュレスなど10以上のプロジェクトを福岡市がこれまでに全面サポートしてきた。

 電動キックスケーターについても19年夏、市内の私有地を使った実証実験を数カ月間にわたって開催する予定だ。安全性の検証はもちろん、利用ニーズや料金体系などシェアリングサービスの事業化に向けて各種課題を洗い出す考えだ。

 先行普及する米国では、17年に登場した「Bird」と「Lime」が2大サービスとされ、それぞれ欧州などにも進出している。Limeの場合、20カ国以上、100以上の都市でサービスを提供中。19年4月には、利用者の累計乗車回数が5000万回に達するなど急成長している。19年5月には、陸上競技から引退した元スーパースターのウサイン・ボルト氏がフランスのパリで事業を立ち上げると発表するなど、続々新サービスが世界各地で登場している。

海外の2大サービスの1つ「Lime」のホームページ。20カ国以上、100以上の都市で電動キックスケーターのシェアリングサービスを提供している(写真提供/Lime)
海外の2大サービスの1つ「Lime」のホームページ。20カ国以上、100以上の都市で電動キックスケーターのシェアリングサービスを提供している(写真提供/Lime)

 人気を生む理由として、シェアリングサービスに操作性の良さを引き出す工夫がある点も見逃せない。専用スマートフォンアプリを使うと近くの電動キックスケーターが置かれている場所を簡単に探し出せる。現地に着いたらスマホのカメラでハンドルに取り付けられたQRコードを読み取る。これで本人認証が実施され、タイヤのロックを解除できる。後は乗るだけだ。

 しかも、目的地に着いたら適当な場所に乗り捨ててOK。同じワンウエイ方式でも、ポートに返さなければならないシェアサイクルとこの点で異なる。アプリ上でタイヤをロックする操作をすれば、自動的に乗車時間に応じた料金が登録済みのクレジットカードで支払われる仕組みである。

 料金の安さも魅力だ。Birdの場合、初乗りに1ドルかかり、後は1分当たり15セントが課金される仕組み。最高速度は時速15マイル(約時速24キロメートル)なので、単純計算で15分乗ると3.25ドル(約350円)で6キロメートル程度は移動できることになる。サンフランシスコのように、月間24.99ドルの定額乗り放題サービスを提供するエリアもある。自転車よりカジュアルに乗れてしかも安いからこそ、「市民の足」として街の光景に溶け込みつつある。