「ザ・ノース・フェイス」の商品開発に長年携わり、“ものづくりの職人”といわれた新井元氏が取り組んだのは、社名を冠したスキーウエアブランド「ゴールドウイン」のリブランディング。そこで目指したのは、スキーのときでも日常でもシームレスに着られるウエアだった。
売り上げの7割を占めるアウトドアカテゴリーの伸びによって成長を遂げてきたゴールドウイン。しかし、「ザ・ノース・フェイス」(以下、ノース)「ヘリーハンセン」といった主力のアウトドアブランドは商標権が日本国内に限定されているため、海外展開できないのが弱点だ(ノースに関しては同社が商標権を持つ韓国でもビジネスを展開している)。
そこで、同社が推し進めているのが、自由度の高い展開が可能なオリジナルブランドの開発。アスレチックの「NEUTRALWORKS.(ニュートラルワークス)」、コンプレッションウエアの「C3fit(シースリーフィット)」、消臭ウエアの「MXP(エムエックスピー)」がこれに当たる。
そんななか、2014年に社名を冠したスキーウエアブランド「ゴールドウイン」のリブランディングを任されたのが、長年ノースの商品開発に携わり、“ものづくりの職人”といわれた新井元ゴールドウイン事業部長だ。
かつてスキーウエアは同社のビジネスを支える花形だった。「僕が入社した頃はスキーウエア市場全体が1000億円くらいの印象で、ゴールドウインブランドも200億円以上の売り上げがあった。それが年々縮小し、今は20分の1以下になっているのでは」(新井部長)。
そんなスキーウエア市場は、ずっとノースをやってきた新井部長から見ると異質だったという。シーズンごとに商品が総入れ替えになる市場のため、シーズン末の在庫処分が通例で、値引きを前提としたビジネスモデルで収益性が低い。「このままだとユーザーの信頼を勝ち得ないし、売れ行きに即したマーケットに変えないと、スキーをメインにしたゴールドウインブランド再生の足かせになると考えた」(同)。そこで、高機能で付加価値の高い商品を開発し、適切な価格を設定。シーズン末の在庫を減らして値引きを抑えることを目指した。
さらに、「従来のスキーウエアはゲレンデの白に映える、非日常の艶やかなものが多かったが、非日常でも普段のスタイルを貫くほうが心地良い時代になっているのではないか」と考えた同氏は、シンプルでスタイリッシュでありながらスキーに特化した機能を盛り込み、スキーのときでも日常でもシームレスに気持ち良く着られるウエアを目指した。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー