日本で2ケタ成長を続ける米国発のアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」。その陰には「アウトドアと日常のシームレス化」という創業者の理念と、日本独自のノースを作った男のモノづくりの哲学があった。

 米カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にある岩壁「ハーフドーム」をモチーフにしたアイコンに、「THE NORTH FACE」の文字。街を歩いていると、このロゴが入ったウエアやバッグを見ない日はないだろう。

 「ザ・ノース・フェイス」(以下、ノース)は1966年に米カリフォルニア州サンフランシスコで創業したアウトドアブランド。2015年から2ケタ成長を続け、日本でノースを手掛けるゴールドウイン(東京・渋谷)の19年3月期の業績予想は約830億円と前期比約126億円増の見込み。18年8月、11月に続いて19年2月に3度目の上方修正を行ったほどだ。主力商品のダウンジャケットに至っては入荷して即完売するため、平日でも開店前から行列ができるくらい入手困難となっている。

 人気の要因はアウトドアで培った本格的機能を盛り込みつつ、日常生活でもスタイリッシュに身に着けられること。そういった商品を生み出せる理由は、まず日本で販売されているほとんどのアイテムが国内で独自に企画・開発されていることが大きい。

 ゴールドウインは1978年に米ノースとライセンス契約を結び、生産を開始。さらに94年に日本と韓国における商標権を獲得。これによって商品開発からマーケティングまで自社の裁量で自由にできるようになった。海外ブランドの商品だとサイズ感が合わないこともあるが、日本のノースの商品はそもそも日本人の体形やニーズに合わせて作られているのだ。インバウンド(訪日外国人観光客)がわざわざ日本企画の商品を買いに来ることもあるという。

「アウトドアと日常のシームレス化」は創業当初からの理念だった

 ノースの人気を押し上げる背景として、アウトドアウエアの日常化もある。昨今のフェスブームやキャンプブームをきっかけにアウトドアファッションが一般的になり、その機能性や快適さを実感してそのまま通勤・通学や普段の生活にも取り入れる人が増えた。しかし、実はこの“アウトドアと日常のシームレス化”はそもそも約50年前に米国でノースが設立された当初からの理念であり、長年にわたって実践してきたことだという。

 ノースは66年にダグラス・トンプキンス氏が立ち上げたマウンテンスポーツの道具を専門的に扱うショップが源流。その店とブランドを米スタンフォード大学でマーケティングを学んだケネス・ハップ・クロップ氏が68年に譲り受け、アウトドア用品メーカーとして育てた。

ザ・ノース・フェイスをアウトドア用品メーカーとして育てたケネス・ハップ・クロップ氏
ザ・ノース・フェイスをアウトドア用品メーカーとして育てたケネス・ハップ・クロップ氏

 「ハップは『若い人たちの生活の中にアウトドアが密接に関わっていくことがこれからの社会でとても大切になる』と考え、アウトドアでも日常でも使えるものを前提に商品開発を始めた」

 そう語るのは、ゴールドウインの渡辺貴生副社長。30年以上ノースに関わり、今日の“ジャパン ノース”を作り上げた人物だ。ケネス・ハップ・クロップ氏と一緒に仕事をした世界でも数少ない現役の一人でもある。

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