KDDIは2013年7月にアジャイル開発センターを設置し、自社の新サービス開発のためにリーン・スタートアップを本格的に採用した。「リーンとアジャイル開発は一体」というのが基本スタンスである。狙いは開発のムダを無くし、グローバルな競争に勝ち残って行くためだ。約20のチームがあり、BtoBとBtoCの新サービスを立ち上げ、“成功体験”を積み上げている。蓄積したノウハウを生かして取引先企業の新規事業開発の支援にも着手した。

 KDDIがリーン・スタートアップを本格的に採用したのは、13年7月にアジャイル開発センターを発足させたことに遡る。それ以前から、企画部門と開発部門が一緒になって新サービスをリリースする部門があり、その部門が母体となってセンターを立ち上げた。

 背景には、「従来型の開発にはムダが多かった」(IoT系を担当しているプラットフォーム開発本部アジャイル開発センター アジャイル開発第2グループ マネージャー・岡澤克暢氏)ことがある。「ウォーターフォール型をはじめとした従来型の開発体制の場合は、サービスを立ち上げるために盛り込むべき要件が膨らんでしまうため、リリースまでの時間がかかる。その一方で、実際に使われる機能は30~40%程度にすぎないと言われている。そのムダを無くし、バランスを取るためにリーン・スタートアップを採用した」と法人向けサービスを担当している同アジャイル開発第3グループ マネージャー・佐々木徹氏は話す。

 リーン・スタートアップとアジャイル開発の関係については、「リーンだけやっても価値がないし、アジャイル開発だけやっても価値がない。顧客価値を定義する際に、その優先順位付けにリーンキャンバス(優先順位付けした機能を含めてビジネスモデルを1枚のシートで示したもの)を使っている。顧客に最も刺さりそうなソリューションから順番に開発する。リーンとアジャイル開発を区切って考えたことはなく、両者は一体であり、一連の流れの中で開発プロセスを考えている」と同氏は説く。

 世界では、クラウドサービスを提供する多くの企業がリーン・スタートアップ、アジャイル開発を採用しており、熾烈化するグローバル競争に勝ち残るためには、KDDIとしても同様の俊敏な開発体制を構築せざるをえないという事情もある。

KDDIのアジャイル開発センターでのミーティングの様子(写真提供:KDDI)
KDDIのアジャイル開発センターでのミーティングの様子(写真提供:KDDI)

約20のスクラムチームを組織

 同社の体制は次の通りだ。企画部門としてライフデザイン事業本部、商品戦略部、商品開発部などがある。これらの企画部門からアイデアが出てきた段階で、デザインシンキングによってサービスイメージを詰めていく。企画部門のメンバーが、リーン・スタートアップで言うところのPO(プロダクトオーナー)を担当する。

 アジャイル開発の手法としてはスクラムを採用しており、アジャイル開発センターからはスクラムマスターとUI/UXのデザイナーを出してチームを編成している。各チームが各サービスの開発を担当する。

 スクラムを基本にしてはいるが、多少変えている。スクラムではチーム内のエンジニアの数は6~9人と定義されているが12人のチームがあるほか、POを複数人配置している場合もあるという。トヨタ生産方式のカンバン方式なども検討したが、体系が明確で導入しやすいためスクラムに落ち着いたという。

 アジャイル開発センターは当初数人から始まったが、現在は社員が約80人で約20チームに拡大した。これらのチームに約120人のパートナー(基本は準委任契約)が配置されている。なお社員約80人中、UI/UXデザイナーは数人で、各チームを横断的にサポートする役割を担っている。スクラムマスターをはじめとした資格取得者は社員の約8割で、定期的に米スクラムから講師を招いて研修を実施している。

 開発の基本は内製である。顧客のニーズを吸い上げながら、細かく分けた工程ごとに素早く改善を繰り返していく“反復開発”を行うためには、内製でなければ対応できないからだ。内製化に対する考え方は、アジャイル開発を採用しているほとんどの企業と同様である。

 なおチームの人数は増減するが、開発したサービスを稼働させながら改善を繰り返していくため、チーム自体は存続していくという考え方に立っている。

 実は、企画部門から出てきたアイデアに対して、すべてをアジャイルで開発しているわけではない。従来型のウォーターフォール型で開発するかアジャイル開発で進めるかについては初期の段階で議論し、開発期間とコストを勘案して、どちらの方式で開発するかを企画部門のPOが最終的に判断することにしている。

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