都市部の新築マンションでは、いつでも荷物を受け取れる宅配ロッカーの設置が当たり前になりつつある。そうした設備がない住宅でも、ロッカー代わりに使える専用バッグを使ったサービスが登場してきた。顧客に付加価値を提供する販促の手段として、住宅会社などの注目を集めている。
平日の昼下がり。ネット通販のロゴが付いた箱を抱え、配送員が訪れたのは単身向けのマンションだった。玄関の呼び鈴を複数回押しても反応がない。案の定、不在のようだ。「また再配達か」。そうつぶやきながら、ふと荷物の備考欄を見ると「不在時は宅配バッグOKIPPAに預け入れ希望」とある。よく見ると、ドアに小さな手提げカバンのようなものがぶら下がっている。カバンに添付の説明書を見ながら、荷物を収め、錠前でロックをかけた。
スタートアップのYper(イーパー、東京・渋谷)が2018年9月に発売した宅配バッグサービス「OKIPPA」では、そんな使われ方を想定している。宅配危機の主な要因となっている再配達をなくすには、住宅に宅配ロッカーがあればよい。ただ、築年数の長い集合住宅では、宅配ロッカーがないケースも多い。戸建て住宅でも「設置スペースがないケースが多く、宅配ロッカーの設置率は1%」(イーパー社長の内山智晴氏)という。
使わないときは丸めて小さく
戸建て住宅向けに金属製の宅配ロッカーは販売されているが、2万~3万円とやや高価で、常時設置する場所が必要なので集合住宅にも適さない。ポリエステルなど柔らかい素材の簡易ボックスもあるが「小さくならず、使わないときには邪魔になるという人がいる」(内山氏)という問題があった。
そこでキッチンやハウス用具のマーナ(東京・墨田)と共同で、使い終わったあとはすぐに折りたためる宅配バッグを作った。マーナのエコバッグ「Shupatto(シュパット)」の仕組みを取り入れ、使い終わったあとで両端を引っ張ると、折り目に沿って帯状にまとまり、畳みやすい。コンパクトに丸めてドアノブに下げておけるようにした。
OKIPPAのバッグは、折りたたみ時で幅約13センチメートル。バッグとして利用するときは幅約70センチメートルで、容量は57リットルとなる。宅配ボックスと同じとみなされるので、受け取り印の必要もない。
もう1つの特徴は、配達の状況を確認できるアプリを提供していること。あらかじめアマゾンや楽天のIDを登録しておくことで、荷物の伝票番号で宅配事業者のWebページを参照し、荷物が届いたことを確認できる。配達員はOKIPPAに荷物を届けると、ほかの荷物と同様に業務端末で配送が完了したことを配送事業者に通知する。OKIPPAのアプリは、その情報をインターネット経由で取得して「配送完了」と通知を出す。
OKIPPAのバッグ自体にセンサーや通信機能が付いているわけではなく「バッグはアナログのまま安くシンプルに、アプリを作りこんでいくことで便利な機能を提供する」(内山氏)という方針を取っている。OKIPPAは3685円(税別)で発売している。
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