サイズ変更には配送料がかかりません――。2011年開始のファッションECサイト「LOCONDO.jp(ロコンド)」は、返品のしやすさで支持を集め、現在は年間取扱高91億円に成長した。一方で、自前で構築したプラットフォームをメーカーや店舗に貸し出すことで物流全体を効率化する仕組みを生み出している。
- 「みんなハッピーになれる」配送料金
- 1~3日後に発送、「急ぎません。便」比率は半分近く
- 倉庫の管理システムをメーカーや店舗に貸し出し
- メルカリの新施策もレポート
宅配危機でヤマト運輸が配送料の値上げに踏み切った17年。配送の大半をヤマト運輸に委託しているロコンドは、配送メニューの改定に踏み切った。かつては「1回の購入金額が5400円(税込み、以下同)以上の場合は配送料無料」としていたが、17年9月からは金額によらず配送料を支払ってもらい、購入金額が5400円以上の場合はポイント還元という形に切り替えた。
「5400円以上買っている人の比率は約7割」(ロコンドの田中裕輔社長)であり、多くのユーザーにとって配送料無料を実質的に維持する仕組みとした。翌日配送の「お急ぎ便」は 486円から390円に、ポスト投函(とうかん)可能な荷物を対象とする「ポスト投函便」も190円に値下げした。注文から1~3日後に発送する290円の「急ぎません。便」も設定した。
利用者がポスト投函便や急ぎません。便を選べば配送料は安くなるし、配送事業者も配送の負荷を分散しやすくなる。ポイント還元とすることで、ロコンドとしてはリピーターの獲得や収益の改善が期待できる。「みんなハッピーになれる」(田中氏)という料金設定とした。
ヤマトの配送業務を支援する仕組み
ヤマト運輸をはじめ大手宅配事業者による運賃の適正化によって、ネット通販に関わる事業者は、配送コストの上昇に苦心している。消費者が負担をあまり感じない仕組みを、ロコンドが構築できた理由は何か。「ヤマトさんの仕事の中で、我々が効率化できることがあればそこに取り組み、配送業務の負担を下げる」ことで、配送料についての協議の余地を生み出すことができたと田中氏は説明する。
配送の負荷を下げると同時に、再配達の削減にも寄与する具体例が、急ぎません。便だ。最近のネット通販は当日や翌日配達が当たり前。消費者の立場では早く届く方がありがたいが、配送事業者にとっては、お歳暮シーズンなどピーク時に急ぎの配達が重なると、負荷は飛躍的に高まる。一方で、社会問題として宅配危機の課題は消費者に広がりつつある。その結果、ロコンドの複数ある配送メニューの中で、急ぎません。便が選ばれる比率は半分近くになっているという。「社会実験という意味合いもあったが、実はそれほど急がなくてもいい、という人も多いことが分かった」と田中氏は話す。
ロコンドは千葉県八千代市に物流拠点を持っている。この内部でも、送り先の地域に合わせて荷物を仕分けする、ヤマトのシステムとロコンドの物流管理システムを連携させて送り先などのデータをスムーズに伝えるといったヤマトの業務を支援している。
ロコンドの特徴は、サイズ変更や一部を除き返品の配送料がかからないこと。この返品の配送については、運賃適正化の影響は受けなかったのか。田中氏はほぼ影響がなかったと説明する。コンビニから発送する人が多いためヤマト運輸にとっては荷受けをするケースが少なく、ロコンドの物流拠点で受け取るので「再配達が発生せず、配送業務の負担は比較的少ない」(田中氏)からだ。
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