第2回目は花王の洗剤「アタック ZERO」とP&Gジャパンの「アリエールジェル プラチナスポーツ」を比較した。ブランドを統一してパッケージをフルリニューアルした花王と、既存製品の上位に位置付けるP&Gでは、訴求すべき強力な洗浄力をどう表現するかで異なる。

19年4月1日に新発売した花王の「アタック ZERO」シリーズ。通常の洗濯機に対応する洗剤に加え、「ドラム式専用」の製品も作った。片手でプッシュするだけの「ワンハンドプッシュ」という製品もある
19年4月1日に新発売した花王の「アタック ZERO」シリーズ。通常の洗濯機に対応する洗剤に加え、「ドラム式専用」の製品も作った。片手でプッシュするだけの「ワンハンドプッシュ」という製品もある

 花王とP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)ジャパンが2019年春に相次いで新しい洗剤を発売した。いずれも化学繊維に向く強力な洗浄力を備えた製品だが、その特徴をどのように表現するかで知恵を絞っている。花王の「アタック ZERO」はパッケージデザインを抜本的に見直し、これまで複数に分かれていたブランドを1つに統一して市場へのさらなる浸透を図った。P&Gは「アリエール」の上位製品として「アリエールジェル プラチナスポーツ」を発売。スポーツ用ではないが汚れのひどいスポーツウエアにも対応できるとして、強力な洗浄力をイメージさせた。

花王とP&Gジャパンのアプローチの違い

花王
洗浄力と抗菌力にそれぞれ特化した緑と青の2ラインの「アタック」があったが、ブランドイメージも分散。両方の機能が欲しいという消費者の声も大きくなったため、パッケージを刷新してブランドを統一した。

P&Gジャパン
現状のアリエールに満足している消費者が多いとして、シリーズのラインアップに追加するという形にした。「スポーツ」というネーミングで洗浄力の強さをアピールしている。パッケージの色は今までの洗剤になかった紺を選んだ。

花王は今後、30年を支える強いアタックを作りたい

 19年4月1日、花王は09年から発売する現行の「アタックNeo」の販売を終了して「アタック ZERO」を新たに発売するなど、「アタック」をリブランディングした。これに伴い、通常の縦型洗濯機に対応する洗剤に加え、ドラム式専用という新しい分野の製品も導入している。ボトルも改良し、従来のようにキャップで計量するものと、片手に持ってプッシュするだけで簡単に使用できる「ワンハンドプッシュ」の2種類を用意した。ワンハンドプッシュはスプレーのような形状で、洗濯物の量に合わせてプッシュの回数を変えながら計量することができる。軽く片手で使えるため、片手で子供を抱いている子育て中の人や力の弱いシニア世代まで、さまざまな消費者に向いている。

 ラベルのデザインも大きく変更した。アタックといえば、緑や青を基調にしたパッケージに赤と紺のロゴマークを思い浮かべる人が多いが、今回のアタック ZEROでは、その印象を変更。通常の洗剤は白とシルバーに、ドラム式専用の洗剤は白と黒にした。ロゴマークも片仮名から英語表記に変更し、世界共通で使用できるようにした。

 アタックは1987年に世界初となるコンパクトタイプの洗剤として発売。以来約30年間、時代のニーズに合わせた洗剤を提案し続け、日本の洗濯用洗剤の市場でトップクラス。2009年に発売した「アタックNeo」から細長いボトルに入った濃縮タイプの洗剤になり、13年には「ウルトラアタックNeo」へと刷新。11年には抗菌をテーマにした「アタックNeo 抗菌EXパワー」を発売した。以来、濃縮タイプでは洗浄力に特化した緑の「ウルトラアタックNeo」と、抗菌力に特化した青の「アタックNeo 抗菌EXパワー」の2ラインで販売を続けていた。しかし、「洗浄力と抗菌力、両方の機能が欲しい」という消費者の声が大きくなった他、2ラインの販売を続けたことでブランドイメージも緑と青に分散してしまった。

09年に発売した「アタックNeo」は、13年に「ウルトラアタックNeo」(左)へと刷新して、11年には「アタックNeo 抗菌EXパワー」(右)を発売。以来「洗浄力の緑」「抗菌力の青」の2ラインで販売を続けていた
09年に発売した「アタックNeo」は、13年に「ウルトラアタックNeo」(左)へと刷新して、11年には「アタックNeo 抗菌EXパワー」(右)を発売。以来「洗浄力の緑」「抗菌力の青」の2ラインで販売を続けていた

 「これからの30年間もずっとトップでいるために、一度原点に返って、このままでいいのか、何を提案すべきなのかを考えた。もう一度強いアタックを作るため、思い切った改革が必要だった」(花王ファブリックケア事業部の野村由紀ブランドマネジャー)。

 時代にふさわしい洗濯とは何か。見えてきた課題は2つあった。1つは衣服素材の変化への対応だ。家庭での洗濯環境は変化しており、化学繊維を使用した衣料は07年には20%だったが、15年には35%まで増加したという(15年花王調べ)。化学繊維は木綿に比べて油汚れが落ちにくい。さらに共働き世帯の増加とともに洗濯回数も減少傾向にあり、まとめて1回に洗う洗濯物の量が増加している。大量の洗濯物を扱うため、洗濯機も洗剤も本来の洗浄性能を出しにくくなっているという。

 もう1つは衣類の黒ずみだ。花王は消費者を対象にした洗濯物の調査を行っているが、一般家庭から回収した洗濯物を観察すると以前より黒ずんでいた。背景には洗濯環境の変化に加え、ドラム式洗濯機の普及があるという。ドラム式洗濯機は通常の洗濯機よりも少ない水で洗濯するため、水が汚れやすく、一度落とした汚れが再付着しやすいためだ。

 アタック ZEROでは、皮脂や油汚れに吸着性が格段に高い洗浄基剤「バイオIOS」を開発。「油によくなじみ、汚れは落としながら、水によく溶ける」という特徴を持ち、これまで落とせなかった化学繊維の油汚れまでしっかり落とすことができるようにした。ドラム式洗濯機による汚れの再付着を防ぐため、ドラム式洗濯機の水量と洗い方に適した「アタック ZERO ドラム式専用」も販売。洗濯機のタイプに合わせて洗剤を選ぶことで、家庭ごとに最適な洗濯ができるようにした。

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