アリババ集団が運営するクラウドサービス「アリババクラウド」は、ネットに接続された多くのデバイスから送られるデータを収集・分析し、デバイスもコントロールする「IoTプラットフォーム」を、エッジコンピューティングと組み合わせたハイブリッドシステムに仕立てて、強みとして打ち出す。
多くのユーザーがスマートフォンを利用し、誰もがネットにつながっているのが当たり前になった昨今。次の時代の成長分野として注目を集めているのが、家電や自動車、ベッド、トイレなど、あらゆるデバイスをネットに接続してデータを収集・分析したり、デバイスをコントロールしたりするIoTの世界である。
例えば、建設業でのIoTの活用はこんな具合だ。ビルの建築現場に各種センサーを配置すれば、現場のスタッフが指定通りの材料を用い、設計図通りに施工しているかなどを遠隔地から監視し、必要があれば修正を指示できる。また、建物内部に各種センサーを埋め込めば、これまでは主に目視で検査するしかなかった鉄筋コンクリートなど原材料の耐久性を、建物の完成後もIoTによって分析できる。IoTを活用することで、これまでよりも、工事の進行や建造物の管理を効率的に進めることができるようになるのだ。
だが、例えば建築事業者や住設メーカー、家電メーカーが、自社デバイスに各種センサーや通信モジュールを埋め込むことはできても、そのデバイスに適した広域通信ネットワークを用意して大量のデバイスと常時接続したり、デバイスから得た膨大な量のデータを収集・分析したりするのは、必ずしも簡単ではない。
IoTプラットフォームは「LoRa」などへの対応が必要
例えば、次世代通信規格「5G」に対応した通信モジュールは消費電力が高いためコストが高くつくし、そもそも電力・電源を確保できる場でなければ使えない。電力消費を抑えてコストを下げる必要がある場合や、荒野で孤立した井戸などを監視するような場合は、少ない消費電力で広いエリアをカバーできる無線通信方式「LPWA(Low Power Wide Area)」の1つ、「LoRa」に対応した通信モジュールと通信ネットワークを用意する必要があるわけだ。
そこで、ハードウエアや通信環境、各種アプリケーションなどをクラウド上に構築し、原則、月額課金でユーザー企業に提供するクラウドサービス事業者がこの分野に目をつけた。クラウドサービスの“メニュー”の1つとして、ネットに接続された多くのデバイスから送られるデータを収集・分析し、デバイスもコントロールする「IoTプラットフォーム」を、さまざまな業種の企業向けに提供し、クラウドサービスの成長をけん引させようというのだ。
エッジコンピューティングと組み合わせ
アリババ集団(アリババグループ)が運営する世界市場シェア3位のクラウドサービス「アリババクラウド」も、このIoTプラットフォームを、メニューの特徴の1つとして打ち出している。3Gや4G、5G、それにLoRaなど、異なる通信ネットワーク上にあるデバイスからの接続が可能なのに加え、映像や音声など多様なデータの種類にも対応している。特に、「IoTプラットフォームとエッジコンピューティングを組み合わせたハイブリッドシステムとして、いち早く提供しているところに強みがある」と、アリババクラウドでIoTプラットフォームを構築するアリババクラウドIoT部門のチーフサイエンティスト、ショーン・ディン氏は強調する。
ディン氏はその理由をこう説明する。「IoTサービスを提供しようとする企業や自治体は、大量のデバイスから集まる膨大な量のデータを分析して処理する必要がある。そのためのIoTプラットフォームは、単なるクラウドサービスでは対応できない。膨大なデータをすべてクラウド上に送って分析・処理していたのでは、通信にかかる時間やコストが膨れ上がるし、リアルタイムでの対応も難しくなるからだ。どうしてもエッジコンピューティングと組み合わせたハイブリッドシステムを構築する必要がある」
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