アリババ集団の多彩な事業を下支えするクラウドサービス「アリババクラウド」は、中国市場でシェア1位、世界市場でシェア3位と最近、急成長中。最高位(TOP)スポンサーとしてクラウドサービスを提供する五輪・パラリンピックで、国際オリンピック委員会(IOC)の期待以上の実績を上げ、中国以外の市場へ浸透を狙う。

 「淘宝(タオバオ)」「天猫(Tモール)」といった中国最大のECサイト──。
 傘下のアント・フィナンシャル・サービスグループが運営するスマートフォン決済アプリ「支付宝(アリペイ)」──。
 オンラインとオフラインをシームレスにつなげた“新小売”店舗「盒馬鮮生(ファーマーションシェン)」──。

アリババクラウドがアリババの全事業を下支えする
アリババクラウドがアリババの全事業を下支えする

 これらはすべて、中国を代表する企業グループ、アリババ集団(アリババグループ)が手掛ける事業だ。そして、これらの様々な事業の根幹を支えているのが、アリババ集団のパブリッククラウドサービス「アリババクラウド」である。

 クラウド上にハードウエアや通信インフラ、アプリケーションを動かすためのプラットフォームなどをそろえ、さらに、社内コミュニケーションツールやデジタルマーケティングツールなど、アリババの様々な事業で使われて実績のあるアプリケーションも300近く用意した。クラウドサービスのユーザーは、自らサーバーやアプリケーションを用意することなく、定められた月額利用料などを支払うだけで、アリババクラウドが提供するハードやアプリケーションを利用できるわけだ。

28年まで五輪の最高位(TOP)スポンサー

 米調査会社ガートナーの調べによれば、アリババクラウドは、中国とアジア太平洋地区では市場シェア1位。世界市場で見ても、米アマゾン・ドット・コムが運営する「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」、米マイクロソフトが運営を手がける「アジュール」に次ぐ3位に位置付けられる。

2018年9月にオリンピック放送機構(OBS)との提携を発表
2018年9月にオリンピック放送機構(OBS)との提携を発表

 その高い実力を証明する事実の1つが、国際オリンピック委員会(IOC)とのスポンサー契約である。アリババ集団は2017年1月、IOCが定めるカテゴリーのうち、クラウドサービスとECを手掛ける「最高位(TOP)スポンサー」として、それも28年に開催されるロサンゼルス夏季五輪までという異例の長期契約を結んだ。

 五輪・パラリンピックのスポンサーは、カネさえ払えばなれるものではない。五輪・パラリンピックの運営を危うくしないためにも、相応の実力が求められる。つまりアリババクラウドは、IOCから「実力あり」とお墨付きをもらったことになる。

 では、その実力はどれほどのもので、IOCの期待に応えて何を目指すのか──。アリババクラウドが進めている五輪・パラリンピックでの取り組みと、その狙いを追った。

大会をまたいで再利用できる運営システムの構築へ

 アリババクラウドが、IOCの期待に応えて実績を上げようと取り組んでいる領域は、主に2つある。1つは五輪・パラリンピックの運営の効率化とコストの削減だ。

 例えば、これまで五輪・パラリンピックの運営システムは大会ごとに新しく作られてきた。だがこのやり方だと、毎回、数十億円単位の巨額が必要なうえ、1つの大会を通して蓄積された運営ノウハウを次の大会に伝えていくことも難しい。

 そこでアリババ集団は、大会をまたいで再利用できる運営システムをクラウド上に構築し、五輪・パラリンピックの開催地が負担するコストを引き下げる。「クラウド上での運営システムの構築は、20年の東京大会で一部に取り組み、22年の北京大会で完全形の実現を目指す」と、アリババクラウドでグローバルストラテジックイニシアティブ部門の責任者を務め、五輪・パラリンピック担当の責任者でもあるジョーイ・タン氏は言う。

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