企業のAI活用・導入を支援するパロアルトインサイトCEOの石角友愛氏とCTOの長谷川貴久氏が、米国のビジネスと技術の最新情報から、次のトレンドを予測する連載。第2回は米テスラの自動運転技術の最新動向を取り上げる。
私がCTO(最高テクノロジー責任者)を務めるパロアルトインサイトの本社所在地である米パロアルトで4月下旬、テスラは投資家向けに「Autonomy Day」(自動運転説明会)を開催した。主な発表内容は次の4つだ。
(1)全自動運転を実現するためのコンピューター「FSD」(full self-driving computer)のハード
(2)機械学習のパイプラインと、なぜ「LiDAR」(レーザーレーダー)が不要かの説明
(3)自動運転をスケールで導入するためのインフラの説明
(4)ロボタクシー構想
自動運転の業界ではここ数年、LiDARの必要性が論点となっている。LiDARとは光のレーダーのようなもので、通常のレーダーが電波で物体との距離を検知しているのに対して、LiDARはレーザー光線を利用して物体との距離や対象の成分を検出できる。(米アルファベット傘下の自動運転技術開発会社)WaymoなどはLiDARを早くから導入しており、「LiDARを活用することによって人の写真と実際の人間を区別することができる」とブログ記事を通して説明している。また、悪天候の中で、物体や他の車との位置関係を知るのに必要だという主張もある。
(テスラのAI開発責任者である)アンドレイ・カルパシー氏は、LiDARが不要な理由として、「(現在イベントを開催している)この会場に皆様が運転してきたときは目からの映像のみを頼ってきたはずで、目からレーザー光線を打ち出して他の車両との遠近感を計りながら運転していた人間はいないはずだ」というジョークを交えながら、あくまでも画像処理の重要性を主張した。
そこでスライドに映し出されたのが、携帯電話を見ながら歩く女性の写真だ。人間が運転をしていてその女性を見かけたら、もしかしたら不注意で道に飛び出してくるかもしれないと注視しながら運転するだろう。それは画像を通して世界を解釈した場合のみ得られる情報で、LiDARからは点の集合があるだけで、そのような示唆を得ることは不可能だ。今後テスラが目指すAIは、そのような脇見をしながら歩く歩行者に注意するといった細かさを持ったAIだと発表した。自動運転の次の一手のカギはAIと人間との共存にあると思わされた。
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