ところが世界に目を向ければ紅茶市場は拡大している。キリンが算出したところ、17年の消費量はコーヒーの約7315億~9510億杯に対し、紅茶は約1兆700億~1兆6050億杯。「圧倒的に紅茶のほうが需要が多いことが分かった」と加藤氏は話す。

 世界的な紅茶人気の波に乗ろうと、午後の紅茶では紅茶を好んで飲む人を「紅茶派。」と称し、紅茶飲料のシェア拡大を狙うことにした。新たに微糖の「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」を投入し、既存の「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」にもスポットを当てるなど、甘さ離れで取り逃がしていた層に向けたコミュニケーション戦略を柱に据えた。

先入観を覆しオールターゲットに訴求

 「甘くない午後ティー」を訴えるためのキーワードは、「意外性」に決めた。

 そこでザ・マイスターズ ミルクティーでは、「甘いイメージの深田さんに甘くないラフな衣装を着てもらい、甘くないミルクティーをアピールしてもらうことにした。レースやフリルの似合う深田さんを、あえてシンプルな格好にすれば意外性が際立つ」(加藤氏)。幅広い層から人気があることも、深田の起用につながったという。

 「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」では、新たにリリー・フランキーを起用。「狙ったのは糖離れの中年男性。いかにも大人の男性という雰囲気のリリーさんはブラックコーヒーを飲んでそうなイメージがある。そんなリリーさんでさえおいしい無糖に出合って、それを選んだという点に意外性を込めた。率直な言動をするリリーさんだけに、説得力もある」と加藤氏はリリー起用の理由を話す。

 18年6月から午後の紅茶のCMに登場している新木優子も、今回おいしい無糖で続投させた。リリーの中年男性に対し、新木は20代の女性をカバーする。「20代は味覚が変わりつつあり、甘さ離れも始まる世代。同世代の新木さんに甘さから卒業して、甘くない午後ティーを選ぶ姿を演じてもらった」(加藤氏)。

 加藤氏によると「一番リーチが取れる」とのことから、微糖と無糖の認知度を上げるため今回はこの2商品にテレビCMを集中させたという。

 新CMの反響は大きく、「ザ・マイスターズ ミルクティーの売れ行きは想定を上回っている。午後の紅茶全体で、19年3月の売り上げは前年比単月で112%となった」(加藤氏)と、意外性を前面に打ち出した戦略は的中したようだ。

 大人になり「午後ティー離れ」をした人たちに、「甘くない」意外性で改めて魅力の掘り起こしに成功した午後の紅茶。世界的な紅茶人気にあやかるためには、これから先もいい意味で消費者を裏切りながら、「甘いだけではない」というメッセージをしっかり印象にとどめることが重要だろう。