ハーゲンダッツ ジャパンは2019年、アイスクリーム「ハーゲンダッツ」のCMに初の男性タレントとして佐藤健を起用した。21年には元・欅坂46の平手友梨奈を新キャラクターに追加。2人が伝えるメッセージ「ハローしあわせ。」は、従来のハレの日需要だけでなく日常的な需要の刺激を狙っている。
物性価値に情緒価値をプラス
午後のやわらかな光の中、台本読みをひと休みし、冷蔵庫からハーゲンダッツバニラを取り出す佐藤健。そのおいしさにソファからずり落ちてしまう。至福のひとときを過ごした後、気持ちを切り替え、台本読みを再開する佐藤。その表情は充実感であふれている(「大切な時間」編)。
新しいブランドメッセージ「ハローしあわせ。」とともに、鼻歌交じりで登場する平手友梨奈。「私は知っている。私をごきげんにする方法を」と言いながらお気に入りの部屋、お気に入りのスプーンでハーゲンダッツを幸せそうに味わう。(「ごきげんにする方法」篇)
佐藤と平手がそれぞれ登場するハーゲンダッツのCM。どちらも部屋の中で1人、ハーゲンダッツを食べながら、ささやかな至福の時間を過ごす様子が描かれている。「ハローしあわせ。」のメッセージは、コロナ禍でおうち時間が増えた人たちのさりげない幸せ探しを後押しする。その効果もあって、CMが放映された21年3月の売り上げは前年同月比132%、コロナ禍前となる19年同月比でも122%を達成した。
「これまでハーゲンダッツは、どちらかと言うといいことがあったときにご褒美として買う、いわゆる“ハレの日需要”が多く、外出先から買って帰るものだった。しかし、コロナ禍で外出自粛が長引く中、何もいいことがなかったから、ハーゲンダッツでいい日にするためわざわざ買いに出る、というこれまでとは異なる購買行動を狙った」(ハーゲンダッツ マーケティング担当者)
1984年に日本での販売を開始したハーゲンダッツは、東京・青山にできたリアル店舗1号店に長蛇の列ができるなど、当初はショップがメディアとしての機能を果たしていた。
「当時、日本でアイスクリームは子供のおやつというイメージでしたが、大人も楽しめるプレミアムなアイスクリームという位置付けでハーゲンダッツは、アイスクリーム市場へ参入しました。世界のハーゲンダッツに先駆けて、ブランドイメージを訴求するためにテレビCMを放映開始しました」
91年、テレビCMをグローバルで初めて放映し外国人の男女が登場する情熱的な内容で、狙い通り大人からの人気も獲得した。
子どもから年配者まで幅広いユーザーに支持されるようになり、しばらくはおいしさを前面に訴求してきた。2008年からは国内で活躍する有名人をキャラクターに起用したCMをスタート。真矢みき、知花くらら、熊川哲也らの声だけの出演に続き、11年に柴咲コウを起用した冷蔵庫から出して「食べごろになるまで待つ時間」も楽しむという情緒訴求のCMが話題になった。「情緒訴求を加えたことで、モノの価値だけでなくハーゲンダッツならではのベネフィットを伝えられるようになった」(同)
16年には「幸せだけで、できている」のキャッチフレーズでさらに情緒訴求を推し進め、中条あやみを起用したCMでブランド力を高めた。途中から佐藤がキャラクターに加わり、男性タレントとして初めてCM本編に登場した。
佐藤を選んだ理由、そして今回平手を新たに追加起用した背景は何なのか。
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