2020年にリブランディングしたケロッグのシリアル「オールブラン」。製品に含まれる発酵性食物繊維が腸内環境を整えることが認められ、刷新に踏み切った。ブランドの全商品が機能性表示食品になり、安達祐実を起用した新広告戦略を進める最中、ミルクボーイのあのネタが大旋風を巻き起こし、急きょ共演が決まった。
「腸能力」でブランドを再生
「体にいいものはおいしくない。そんな思い込み捨てましょ?」と安達が視聴者へ投げかけたかと思うと、全身を使って威勢よく「うりゃー!」の掛け声とともに「思い込み」をゴミ箱へ向かって投げ、見事カップイン――。
「オールブラン ブランチョコフレーク」のCMの冒頭シーンだ。この製品は2021年3月に発売されたオールブランシリーズの新作。小麦ブラン(小麦の表皮部分)を用いたブランフレークをチョコレート味にして、イチゴやレーズン、カボチャの種、ダイスチョコを加えた多様な食感や味わいが特徴だ。CMで伝えるように、「オールブランって何となく体にいいのは分かるんだけど、おいしくはないよね」という先入観を裏切るおいしさを目指した。
オールブラン最大の武器である機能性をアピールするのが、冒頭のシーンに続いて登場する「あがれ、腸能力」のフレーズ。20年にブランドを大幅にリブランディングした際に取り入れたキーメッセージだ。
1987年に日本で発売された「オールブラン」は、94年「オールブラン オリジナル」が食物繊維を成分とする食品として国内で初めてトクホ (特定保健用食品)表示の許可を取得。原材料の小麦ブランに含まれる発酵性食物繊維が、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を改善するという研究結果が発表され、20年にはブランド全体が機能性表示食品となった。これがリブランディングを後押しし、「あがれ、腸能力」のフレーズにつながった。
リブランディングに伴う安達祐実とミルクボーイによるCMも大きな反響を呼んだ。「20年4月に放映して以降は、直近の21年3月までで昨年比30%の売り上げ増と好調」と、日本ケロッグ(東京・千代田)の西村香里氏はその効果を語る。
「過去最大の反響でブランドの存在感もドラスティックに変わった。安達さんとミルクボーイさんの組み合わせのインパクトに加え、安達さんの美しさによって、伝えたかったオールブランの『腸内環境改善による効果』を理解していただけたことが大きかった」(西村氏)
このCM、実は安達とミルクボーイを別々に撮影した映像を合成したもので、安達との共演を喜んだミルクボーイの内海崇が、現場で落胆したという逸話がある。というのも、本来はブランドアンバサダーである安達のみでCM撮影を進めていたところ、19年の漫才コンテスト「M-1グランプリ」で優勝したミルクボーイの「コーンフレーク」のネタが話題になったことで、ミルクボーイがケロッグの公式応援サポーターに就任し、急きょ出演が決まったからだ。
安達の美しさと表現力を見込んでの起用
「オールブランを食べると腸内環境が改善され、美容にも健康にもよいというポジティブなメッセージを伝えられる人を考えたとき、何歳になっても変わらずきれいな安達さんの美しさはそれだけで説得力がある。それに加えて、言葉で訴求しづらい効果感のメッセージを表情など絵(映像)で表現できる女優としての表現力にも期待感があった」と、西村氏は安達を起用した理由を明かす。
オールブランのコアターゲットは30~50代の女性。CMでは仕事や子育てに忙しく、自分のために使う時間が少なくなりがちな年代の女性に対し、「1食で1日分の発酵性食物繊維が取れるオールブランで、手軽にベネフィットを感じてもらうこと」を狙っている。
自身も子育てと仕事をこなしつつ、驚異の美しさを保つ安達はまさに適任だった。
「オールブラン ブランリッチ ほっとひといきショコラ」のCMでは、同時期に放映したオールブラン ブランチョコフレークのCMから一変、安達はメガネをかけ、付けヒゲ姿のダンディーな大学教授風のいでたちで登場。2つの対照的なCMで表情を使い分ける安達の表現力は社内でも話題になるほどだという。
視聴者からの反響も大きく、「『CMを見て買ってみたらおいしくて止まらない』との声も多く、これまで味に対してネガティブなイメージを抱いていた人からも評価が高い。ジッパー付きの保存袋に入れて持ち歩く人もいるほど」(西村氏)だという。
■クリエイティブディレクター:松田健(GO)
■コピーライター:片岡良子(navy)
■アートディレクター:古谷憲史(クリエイティブ・ワン)
■デザイナー:地引未彩(クリエイティブ・ワン)
■プロデューサー:星翔太(クリエイティブ・ワン)
■ディレクター:瀧由理子
■チーフ撮影監督:乙幡優
■撮影監督:渡邊龍平
(写真提供/日本ケロッグ)