エリエールブランドを展開する大王製紙の紙おむつ「グーンプラス」は、質の高さと価格帯で二分されがちな紙おむつに、両方を兼ね備えたハイグレードセグメントという価値を提案する。製品CMはまれな同社だが、パパになったばかりのDAIGOを起用したCMは消費者に好評で社内の士気も鼓舞している。

大王製紙「グーンプラス」のCMに出演するDAIGO(『敏感な肌に』篇)
大王製紙「グーンプラス」のCMに出演するDAIGO(『敏感な肌に』篇)

おむつのCMになぜ「ティッシュ」のカットが?

 寝転がる赤ちゃんに「ああ、いい子だね」と声をかけながら、テープタイプの「グーンプラス 敏感肌設計」を取り替える新米パパ役のDAIGO。「エリエール 贅沢保湿」や笑顔を浮かべる赤ちゃんのカットに合わせ、「大人だって保湿ティッシュを使うのに、誰よりも敏感な君の肌をどう守ればいいんだろう?」と語る。製品イメージとパッケージのカットに「エリエールの保湿成分配合。新生児の肌を守る『グーンプラス 敏感肌設計』、誕生」という女性のナレーションが重なり、DAIGOが自身の腕の中でスヤスヤと眠る赤ちゃんに温かいまなざしを注ぐ。

『敏感な肌に』篇

 大王製紙のテープタイプの紙おむつ「グーンプラス 敏感肌設計」および、パンツタイプの「グーンプラス 肌快適設計」のCMでは、普段のロックな面を封印し、白い爽やかな衣装で優しさや穏やかさを感じさせるDAIGOの笑顔が印象に残る。もう一つ印象的なのが、序盤に画面に映し出されるエリエールブランドのティッシュ「贅沢保湿」のボックス。CM製品以外の製品だけを1カットで取り入れるのは異例だ。

 実はグーンもエリエールブランドの製品で、2022年に20周年を迎える。今回発売したグーンプラス 敏感肌設計/肌快適設計では、肌に触れる面には贅沢保湿と同じ保湿成分を配合したシートを使用し、かぶれやすい赤ちゃんの敏感な肌に優しいおむつを追求した。

 主役である製品の前に別製品のカットを差し込んだのは、エリエールブランドとの親和性をアピールしてブランドの醸成を図りつつ、製品の特徴を分かりやすく伝える意図がある。

 「おむつ自体の肌触りがなめらかで肌に優しいことを伝えるためにも、ティシューを最初に出すのが効果的だと判断した」と、大王製紙のベビーケア・ブランドマーケティング部ベビーケアグループ課長の村尾勇樹氏は明かす。

CMでおむつよりも先に映し出されるのは、贅沢保湿のボックスティッシュ
CMでおむつよりも先に映し出されるのは、贅沢保湿のボックスティッシュ

 同社は競合に比べてテレビCMの出稿量は多くない。その中で「今回は認知獲得のため、商品を発売すると決まった時点でCM制作を決めていた」と村尾氏。テレビ離れによるデジタルマーケティングの重要性も意識しつつ、より多くの認知を獲得してリーチを伸ばすことを狙ったという。

 大王製紙は1980年に国産初(大王製紙変遷史より)の紙おむつ「ウォーキーウォーキー」を発売し、その後も日本初(17年6月時点 大王製紙調べ)の通気性シートや高い吸水性を発揮する素材を使用したおむつを開発し続けている。だが、国内シェアではユニ・チャーム、P&G、花王に次ぐ4位に甘んじている。シェア拡大のため大王製紙が打って出たのが新たな製品セグメントの創出だ。

 競合メーカーはおむつを2つのカテゴリーに分けて販売している。上質だが高価格の「プレミアム」と、価格重視の「スタンダード」だ。これにはインバウンド需要が影響していると村尾氏は指摘する。15年をピークに中国でメイドインジャパンのおむつの需要が急伸したため、各メーカーが高級路線の製品を開発した。17年以降は国内でもプレミアム市場が広がった。だが、「当社はマーケティング戦略を一から見直し、他社と差別化された付加価値製品を生み出す必要があった」と村尾氏は振り返る。

 国内ではしばらくテープタイプもパンツタイプもスタンダードの「グーン」一本で、「安価なものと位置付けられ、品質に納得して購入している人が少ないというデータがあった」と村尾氏は打ち明ける。

 高品質のグーンプラス 敏感肌設計/肌快適設計の導入で、同社でもパンツタイプは「グーン まっさらさら通気」と合わせて2ラインでの展開となる。「ただ追随するだけではすでに醸成された市場で戦えない」と考え、独自の新たなセグメント「ハイグレードセグメント」を創出することにした。ハイグレードセグメントはプレミアム製品の品質ながら、価格はプレミアムとスタンダードの中間に抑えた製品を指す。

 「新生児時代はプレミアムを使っていても、サイズが大きくなるにつれ価格志向が高まり、スタンダードに移る人が多い。しかし、スタンダードユーザーも品質の高さを求めている。そこで高品質で低価格のハイグレードセグメントを導入すれば、新生児から継続的に長く愛用してもらえる」(村尾氏)

 ブランド20周年で初の新ラインである。社内の士気を上げるためにも、タレントを起用したCMの制作を決意した。では、なぜDAIGOに白羽の矢を立てたのか。

母親たちを意識した繊細なキャスティング

 実はおむつのCMでタレントが起用されることは多くない。その背景には、購買層である母親たちを意識した繊細な事情がある。「例えば有名な女優さんが出ていれば、『生活レベルが違い過ぎて共感できない』と反発されてしまう」(村尾氏)というのだ。なるほど、ノンタレ(タレントではない人物)と赤ちゃんのほのぼのとした内容になるのも無理はない。

 だが今回、大王製紙は新製品に対する本気や覚悟を伝えるためにも、広告塔になるタレントの起用を決めていた。そこで女性タレントよりも客観的に受け止めてもらえる男性タレントを選ぶことにした。しかし、子どものいない人物であれば「パパでもないのに」と嫌われてしまい、パパタレのイメージが強過ぎると商品イメージに合わない。狭いストライクゾーンにぴったりはまったのが、DAIGOだった。

出演した赤ちゃんは撮影現場で一度も泣かなかったという。DAIGOとの息もぴったり!
出演した赤ちゃんは撮影現場で一度も泣かなかったという。DAIGOとの息もぴったり!

 「上質で優しさを表現するのにDAIGOさんはまさに適任。パパになるご予定もあったことも決め手でした」と村尾氏。DAIGOのナチュラルで柔らかいという、普段とは一味違った一面を見せるのも重要な狙いだった。

 ユーザーからはSNSを中心に「やさしい表情が印象的」「上質感や優しさがしっかり伝わる」「贅沢保湿と同じですごくなめらか」と評価を得ている。狙い通り社内向けのアピールも奏功し、社員の熱意が取引先にも伝わっているという。「いかに棚を取るかが最初の課題だった。今回は反応が全く違い、強い手応えがある」と、村尾氏はDAIGO効果を実感する。

自然なふれあいを映すため、特にセリフの指示もなかったという。「ああ、いい子だね」はDAIGOの本心から出た一言だった
自然なふれあいを映すため、特にセリフの指示もなかったという。「ああ、いい子だね」はDAIGOの本心から出た一言だった
今回のキャラクター:DAIGO
■企業:大王製紙
■商品:GOO.N(グーン)プラス 敏感肌設計/肌快適設計

<クリエイターズファイル>
■広告会社:電通
■制作会社:太陽企画 UNIT4
■CD:秋永寛
■企画:石橋枝里子
■C:熊埜御堂由香
■AD:青木謙吾
■ストラテジ―:中村洋介、大蔵桃子
■CPR:山口真由美
■PR:泉家亮太、田邉剛
■PM:冨原将司、本郷ゆき、来嶋穂乃香
■演出+撮影 上杉哲也
■撮影:山田圭吾
■照明:秋山恵二郎
■美術:荻野玲子
■編集:上杉哲也・八尋南実(オフライン)、加藤才弘(オンライン)
■音楽:宮地裕輔
■ST:長瀬哲郎
■HM:キクチタダシ
■CAS:浦田光久、竹内直子、石澤めぐみ
■AE:早川昭仁、伊藤源一、萩谷賢、皆川浩一
■出演:DAIGO
■VE+DIT:直井聡
■MA+MIX:坂門剛
■SE:宮良明彦
■CG:高橋剛、山田明歩
■NA:田久保柚香
■カラリスト:大角綾子

(写真提供/大王製紙)

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