超熟ブランドを憧れとして確立させた小林聡美

 実は超熟のCMは、発売から数年間はタレントを使っていなかった。その後、ブランドとして確立させるために小林を起用したところ、認知がぐっと広がったという。「小林さんと共に超熟は育っていきました」(CM担当者)。

 当時まだ日本の食卓にはなじみのなかった、イングリッシュマフィンを使った様々なアレンジレシピを作る小林のCMを覚えていないだろうか。イングリッシュマフィンは50年以上も前から発売されていたが、超熟ブランドから発売することになったタイミングで広告に力を入れ始めたのだ。

 時にホームパーティーで、はたまた屋外のお店で、子どもたちに静かにかつユーモアあふれる表情でイングリッシュマフィンを振る舞う小林に、当時のターゲット層だった女性たちは共感し、一気に食卓への登場回数が増えた。『かもめ食堂』『めがね』『プール』など、小林主演の映画とのコラボにも注目が集まった。

 「長く愛されるようなストーリーを作ろう」という制作陣の思いが生み出した、パンのCMとは思えぬ独特の世界観は、多くの女性の関心を誘った。今回のCMでBGMを歌うシンガーソングライターの二階堂和美さんもその一人。CMにクレジットは入らないが、「CMのファンだから」と喜んで手を上げた。

 小林に続く深津絵里も、突然街に越してきてサンドイッチ屋をオープンさせたかと思えば、キッチンカーでいろんな土地でおいしいパンを振る舞い続ける。キッチンカーへの思い入れは、「CMにおいて自然の多い風景も重要な要素。それを取り入れる作品を作るためには、キッチンカーが良いアイコンになった」(CM担当者)からだ。

 ブランドイメージを確立した小林、その後を引き継いだ深津、それに続く3代目の杉咲は、「小林さん、深津さんのようにナチュラルで凛とした魅力があり、余計なものは入れないというブランドメッセージを伝えるのにぴったり」(Pasco)とバトンを託された。

 パンを振る舞う人から食べることを楽しむ人へ転換したことで、おいしそうに食べる姿も杉咲起用の決め手となった。正反対のアプローチで杉咲がもたらす新たな世界観が、小林・深津同様に女性の共感を引き出せるか。比較してみるのも面白い。

おいしそうに食べる姿も決め手になった
おいしそうに食べる姿も決め手になった

(写真提供/Pasco)