亀田製菓の「亀田の柿の種」は2019年のマツコ・デラックスを起用した施策で、柿の種とピーナツの比率についてファン投票を行った。その結果、従来の6対4から発売当初の7対3へと原点回帰した。20年9月には19年に続きマツコ扮(ふん)する主婦“ママツコ”が、亀田の柿の種の存在意義について疑問を投げかける。

「亀田の柿の種 何なの?問題」編で、またしても主婦“ママツコ”に扮したマツコ・デラックス
「亀田の柿の種 何なの?問題」編で、またしても主婦“ママツコ”に扮したマツコ・デラックス
今回のキャラクター:マツコ・デラックス
■企業:亀田製菓
■商品:亀田の柿の種

<クリエイターズファイル>
■クリエイティブディレクター/プランナー/コピーライター:玉川 健司(ADKマーケティング・ソリューションズ)
■アートディレクター:岡本 祥平、前川 星花、古澤 聡子(ADKクリエイティブ・ワン)
■クリエイティブプロデューサー:磯 拓馬(Quark Tokyo)
■監督:石井 聡一
■スーパーバイザー:早坂 明(亀田製菓)

消費者の声を元に発売当時の配合比率に原点回帰

 「亀田の柿の種はおやつ? それとも、おつまみ?」。屋上遊園地で乗り物に乗る2人の子供に問いかけるマツコ・デラックス扮する“ママツコ”。柿の種の帽子をかぶった男の子が「おやつー」と答えると、ピーナツ帽の女の子が「主食―」と意表を突いた答えを発する。しばらく沈黙の後、「…ま、コメはコメか」と納得するママツコ。商品とキャンペーン告知のカットの横で亀田の柿の種を食べるママツコにナレーションが「おやつ? おつまみ? それとも何なの?」と問いかけ、「何でもいいわよ」とぶっきらぼうなママツコ――。

「亀田の柿の種 何なの?問題」編

 亀田製菓はマツコを起用して、2019年10~11月に「当たり前を疑え! 国民投票」と題し、主力商品「亀田の柿の種」の柿の種とピーナツの配合比率(重量比)についてファン投票を実施した。SNSなどを通じて25万5903もの票が集まり、首位に輝いたのが7万5598票(約30%)を獲得した「柿の種7対ピーナッツ3」で、従来の「柿の種6対ピーナッツ4」は4万5693票で3位という結果に。

 社内で検討の結果、20年3月に6対4比率の商品の“解散”を決定、20年5月から7対3比率にリニューアルした「新黄金バランス」の亀田の柿の種を発売した。実は7対3は1966年に初めて発売した当時の比率と同じ。その後さまざまな比率をたどり、6対4に変更してから約40年以上、その比率を続けてきた経緯があったのだ。つまり、今回の投票で原点に回帰したことになる。

 同社経営企画部コーポレートコミュニケーションチームの池ノ上雄樹氏は、「1位が『柿の種7対ピーナッツ3』、2位が『柿の種8対ピーナッツ2』と、柿の種をもう少し多く食べたいという声が上位となり、これまでの比率(柿の種6対ピーナッツ4)がまさかの3位になったの予想外だった」と驚きを隠さない。

 「投票を実施したのは、お客様の食シーンが変化していたため。以前は男性のおつまみとしての需要が高かったが、今は女性やお子様のおやつとしても食べられている。アルコールのお供であればピーナツが多めのほうが相性はいいのだが、女性がおやつとして食べる際にはピーナッツは少なくても良いという声もあった。ニーズに合わせて常に変化が必要だと考え、お客様の今の声を聴くことにした」(池ノ上氏)

『新黄金バランス「7:3」誕生!』編。子供を乗せて自転車をこぐママツコが「私、亀田を変えたいの」と、7対3のほうがいいという胸中を訴える
『新黄金バランス「7:3」誕生!』編。子供を乗せて自転車をこぐママツコが「私、亀田を変えたいの」と、7対3のほうがいいという胸中を訴える

比率の次は存在意義を問う

 80年代後半にビールのドライ戦争によっておつまみ需要が高まり、亀田の柿の種は急成長した。その後、消費者の嗜好の変化に合わせてわさび味や梅しそ味、さらにはチョコレートでコーティングされた商品や、減塩タイプに梅ざらめなど、さまざまなニーズに合う商品を展開してきた。配合比率に決着がついた次に浮上したのが、「そもそも亀田の柿の種ってお客様にとって何なのか?」という存在意義への疑問だった。

 おつまみでもあり、おやつでもある。主食だと言い張る人もいる。多様なニーズがあるのはうれしい半面、商品の軸足の置き所に悩むのも事実だ。20年7~8月にはマツコがVTRで出演する「亀田の柿の種オンラインサミット」を一般消費者500人を巻き込み開催した。「どんなときにどんな場所で食べるか」「おやつかおつまみか、それとも」などへの課題について議論。「フライの衣にする」「朝ごはんとして食べる」など個性的な意見も続出した。

 ダイソンやバルミューダの製品を抽選で1010人にプレゼントするキャンペーンとして、SNSでも応募を受け付け。20年9月30日にはテレビCMを放送するなど「大変どーでもいい問題」と謙遜しながら、大々的な広告を展開している。投票の結果は今後の製品開発やプロモーション等に活用していくという。

 ブランドの本質に影響する2つの大きなキャンペーンにマツコを起用したのは、もともと彼女が亀田製菓のファンで、亀田の柿の種を主食として公言していたから……だけではない。亀田側にはお客様を巻き込んで大々的に展開したいという狙いがあった。しかし、SNS全盛の現在、無名の口コミでは信頼されず、ステルスマーケティングなどもってのほか。信用のおける人物の推奨に対して反応する傾向が強い。

 「そこで率直で的確な言動で好感度の高いマツコさんを起用し、メーカーに忖度(そんたく)しない、お客様目線で意見する主婦として疑問を呈してもらった。さらに、投票やオンラインサミットなどで楽しく盛り上がりながら自ら試したい、発信したいと思ってもらえる施策でお客様の参画意欲を高めたかった」(池ノ上氏)

 亀田製菓のもう一つの主力商品「ハッピーターン」でもCMキャラクターを務めている。今や同社の看板となったマツコが仕掛ける「亀田の柿の種何なの?問題」キャンペーンの結果は、20年11月10日の投票締め切り後に集計し、発表する予定だ。消費者が親しみを持っている商品だけに、ファンならずとも気になる調査に違いない。

柿の種の命運を握るママツコ
柿の種の命運を握るママツコ

(写真提供/亀田製菓)