とにもかくにも演技力!

 象印姉妹はキャラクター設定も細かく、まるでドラマのような緻密な撮り方をしている。「そのため登場人物には知名度に加え、とにかく演技力を求めました」と美馬本氏。

 最初に決まったのが長女役の安藤だ。自宅でイラストレーターの仕事をしながら、2人の妹の面倒を見る30代の長女は、料理が得意で白いご飯には目がない。旬の食材から季節を感じるのが好きな自然派でしっかりものだが、意外と天然っぽいところもあるという設定だ。

 「安藤さんは演技力についてはもはや説明の必要がないですし、お子さんを連れてドラマの撮影に臨むなど、しっかり生活をされているイメージがある。NHKの朝ドラ『まんぷく』でのイメージもいまだ強いようで、視聴者からとても好感を得ています」

 次女役を演じる奈緒は、日本テレビ系ドラマ『あなたの番です』での怪演で一気に知名度を上げた。姉妹で唯一会社勤めをしていて、世の中の流れに一番敏感なのが次女。“家庭のインフルエンサー”的な存在だ。

 「今最もトレンディーな女優の1人ですが、イメージが固まりきっていない。それがトレンドに敏感な20代女子にぴったりでした。実際、20代からの好感度も高い。次女は今後、共働き夫婦としてのストーリー展開にも発展できるかもしれません」

 箭内ふんする大学生の三女役だけは、象印叔父さんと共演し、テレビとデジタルの懸け橋の役割も務める。

 「TBS系ドラマ『チア☆ダン』にも出演され、演技力の評価も高くネクストブレーク女優と目されています。セブンティーンのモデルとして、10代のファンが多いのも起用のポイントでした。Web動画では叔父さんと対照的な初々しさで重要な役割をこなしていただきました」

10~30代の演技派女優で幅広い認知を狙う
10~30代の演技派女優で幅広い認知を狙う

 キーパーソンである象印叔父さんは売れない小説家。3人のことは小さい頃からかわいがっており、頻繁に遊びに来るもつかみどころのない自由人で、象印の製品になぜかやたら詳しく、魅力を熱く語っては、三女にさらりとあしらわれる癖のあるキャラクターだ。TBS系ドラマ『半沢直樹』でブレーク後、名バイプレーヤーの地位を確固とした滝藤賢一が務める。

 「象印叔父さんは変わり者ながら、スタイリッシュで爽やかさのあるイケてるオジさん、いわゆる“イケオジ”のイメージ。一方、長ぜりふをこなせる演技力も求められます。若い世代からも好感度が高く、抜群の演技力を備える滝藤さんは、満場一致で決まりました」

現場では、一度も間違えることなく約3分の長ぜりふをこなしたという滝藤。監督判断のリテイクの依頼にも快く応じたという
現場では、一度も間違えることなく約3分の長ぜりふをこなしたという滝藤。監督判断のリテイクの依頼にも快く応じたという

 くしくも新型コロナ禍で多くの人々が普通の暮らしの中にある幸せを見つめるようになった。「きょうを、だいじに。」という普遍的な価値観を伝える象印姉妹のCMは、時代の空気に沿いながら何気ない暮らしにある温かさを届けている。そのメッセージを温かいご飯、それを作る炊飯器へと消費者がイメージを結び付けることに、今回のキャラクターたちは大きな貢献を果たしたようだ。