サントリービールの新ジャンル「金麦」は2019年に実施した中身とパッケージ、宣伝広告の大刷新が奏功し、同ブランド史上最高売り上げを達成した。その勢いを反映するかのごとく、大胆にもキャラクターを長年看板を務めた檀れい、19年の木村拓哉から20年は石原さとみに変更。金麦の狙いとは。

2020年1月、金麦の新ブランドメッセンジャーに就任した石原さとみ。『NO.1』篇
2020年1月、金麦の新ブランドメッセンジャーに就任した石原さとみ。『NO.1』篇
今回のキャラクター:石原さとみ
■製品:金麦
■企業:サントリービール

<クリエーターズファイル>
■クリエイティブディレクター:高上晋、黒須美彦
■プランナー:岡野草平、萩原ゆか、村松さやか
■コピーライター:岡本欣也
■演出:箱田優子
■カメラマン:塩谷大樹
■プロデューサー:福井亜希子
■広告代理店:電通

20年の狙いは製品の進化をしっかり伝えること

 新年を迎えた2020年1月、「金麦」のCMに驚いた読者も多いだろう。セットが組まれた撮影現場でディレクターから企画説明を受ける石原さとみが、「サントリービール史上売り上げNO.1は金麦」と聞かされ驚き、さらに「おどろいた② そのCMキャラは……私だ~っ!」と叫びながら、パッケージロゴの「NO.1」の「O」の文字の奥から全力疾走してくる。そのまま勢いよく体を乗り出して金麦をグイッと飲み、「あったらしい!」と満面の笑みを見せる。

『贅沢麦芽』篇 CM動画

 金麦といえば、07年の発売当初から13年間ブランドメッセンジャーを務めた檀れいに加え、19年の大刷新で新キャラクターに木村拓哉を起用し話題になった(関連記事:「檀れいで守り、キムタクで開拓 『金麦』が下した13年目の決断」)。ブランド開始時には主なターゲットを40~50代男性に設定し、ターゲット層にとって理想の妻を檀が演じることで金麦のブランドイメージを決定づけた。

 その後、09年には累計出荷本数(350ml換算)が10億本を突破するほどのヒットを記録したが、共働き世帯の増加に伴いCMの世界観と実社会とにズレが生じ始めた。そうしたギャップを解消すべく、19年のフルリニューアルに合わせてコミュニケーションも大刷新した。木村が食材の買い出しや料理をし、いまどきの夫婦を表現した結果、狙い通り新規顧客の流入が大幅に増えた。

 一念発起のCMリニューアルが成功し、木村をこのまま続投かと思いきや、20年は長年ブランドメッセンジャーを務めた檀と共に大刷新で、新キャラクターを起用するという思い切った戦略を取ったのはなぜか。

 サントリービールマーケティング本部宣伝部の中村勇介氏は、「“幸せな家庭の食卓に最もふさわしい新ジャンル”というブランドコンセプトは変わらない。毎年策定するブランド戦略に基づいて、最適なメッセンジャーを起用している。20年は製品の進化をしっかりと伝えることを主眼に置いた。ブランド全体のリニューアルを、消費者目線で一から知ってもらう伝え方をするに当たり、フレッシュな新メッセンジャーを起用した」と打ち明ける。

 20年10月には酒税法の改正で新ジャンルの酒税が上がるため、強みだった低価格以外で存在感を示さなければならない。既に金麦は19年11月中旬以降、本体と「金麦<糖質75%オフ>」、19年に新発売した「金麦<ゴールド・ラガー>」の3品を同時にリニューアルした。さらに四季の気温や季節ごとの食事に合わせて、「かろやかに(春)」「爽やかに(夏)」「まろやか(秋)」「味わい豊か(冬)」と味をほんの少し変えて販売するなど、これまでにない方策にも挑戦する。

季節に合わせてほんの少し味を変える「春の金麦」の新CM『金麦醸造家』篇。アスパラガスを食べながら、春の金麦を楽しむ石原
季節に合わせてほんの少し味を変える「春の金麦」の新CM『金麦醸造家』篇。アスパラガスを食べながら、春の金麦を楽しむ石原

 石原の起用や上記の新方策によって、売り上げをけん引する金麦本体の新しさを訴求することで、ブランド全体の進化を強くアピールする狙いだ。「ブランド力がますます重要になってくる。ロイヤルユーザーだけでなく、買い回りの浮遊層に選ばれる価値を提供しなければならない」と中村氏。

 勝負どころの大役を引き受けた石原。なぜ彼女に白羽の矢が立ったのか。

『春の金麦』篇 CM動画