独立を経て循環するファンの愛情

さまざまなキャラクターを誕生させることの他に、コンビニのCMで感じたやりがいはありますか。

権八氏 他のクライアントでは経験できないダイナミズムを感じます。コンビニはお店自体がメディアなんです。CMではリーチできない規模の方に毎日アピールできる。

松田氏 リサーチではキャンペーンごとのテレビCMの認知度が30~40%に対し、店頭は60~70%。いかに店頭での訴求が大切かということを示しています。権八さんはCMやポスターだけでなく、AR(拡張現実)と連動したカタログなどいろんなアプローチで動線を作ってくれています。

「ファミマのクリスマスケーキ“パパの崩壊編”」(18年)。19年のクリスマスケーキはカタログだけに香取を出演させたが、香取プロデュースのケーキは2週間で完売した
「ファミマのクリスマスケーキ“パパの崩壊編”」(18年)。19年のクリスマスケーキはカタログだけに香取を出演させたが、香取プロデュースのケーキは2週間で完売した

香取さんとはSMAP時代の全日空のCM(01年)からお仕事をされていますが、一時は独立などでその後の活躍を心配する声もありました。「新しい地図」を命名するほどの関係性を築かれて、香取さんの魅力を深く知る権八さんとしては、今回のCMシリーズに対する特別な思いはありましたか。

権八氏 彼をよく見せよう、というよりはとにかくまずは商品をおいしく見せようということを念頭に置きました。ただ、(18年の「お母さん食堂」の演出を担当した)映画監督の永井聡さんには、「ファミマにとっても、みんなにとってもいざ勝負のとき」と言われました。

 その後のCMの反響をみると、(独立で)泣いていたファンの人たちが笑顔に戻って支えてくれていると感じます。もしかしたらいなくなってしまうかもしれなかった存在を温かく受け入れてくれた、というファミマへの感謝が売り上げという形になって表れている。SNS上でもコアなファンの声が一般ユーザーにまで広がり大きな渦になっていて、愛情の循環を感じます。熱は伝播(でんぱ)するのだな、と。

松田氏 そうなんです。「慎吾くんをテレビCMに起用してくれてありがとうございます! コンビニはファミリーマートに行きます!」といった手紙が届くこともあります。香取さんが出演されるようになってから、SNSでもこれまでなかった温かいメッセージをはじめ、叱咤(しった)激励が増えました。社内コミュニケーションも活発になり、まさに家族としての一体感が生まれています。

「ファミマのフラッペ」(19年)。変幻自在な香取の笑顔がファミリーマートの“家族”らしさを唯一無二のものにした
「ファミマのフラッペ」(19年)。変幻自在な香取の笑顔がファミリーマートの“家族”らしさを唯一無二のものにした

(写真提供/ファミリーマート)


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