テレビCMと店頭ポスターで異なるキャラ展開

18年の「お母さん食堂」のCMでは、1作目同様自然体の香取さんが食事をし、店頭ポスターでは母親姿になりました。媒体でキャラクターを分けたのはなぜですか。

権八氏 やはり「バクバクおいしそうに食べる」姿が香取さんの最大の魅力なので、ふるまう側になってしまうとそれを見せられない。一方、店頭ポスターの訴求力は規模が大きい。ファミマは全国に約1万6500店あり、毎日平均1000人が来店する。つまり1日で約1500万人の目がポスターに触れるわけです。そこでポスターではシンボリックにPRするアイコンとして母親姿で“お店でお客さんを待ってる”キャラにしました。

店頭ポスターの親しみのある母親姿は一気に浸透した
店頭ポスターの親しみのある母親姿は一気に浸透した

2年目は、ついにCMでも母親姿になっています。

権八氏 いよいよキャラクターを動かしてもいいかと。香取さん本人の希望でもあったはずですが、「こんなにおいしく食べる僕に食べさせてくれなかった」という不満があるようです。(笑)

2年目の「お母さん食堂」では、ファーストサマーウイカと共演。慎吾母の相手役として、号泣→実食→おいしそうに食べる→あっという間に立ち直る……という落差のある芝居を、今最もインパクトを持って表現できる女優は彼女しかいないとオファーしたという
2年目の「お母さん食堂」では、ファーストサマーウイカと共演。慎吾母の相手役として、号泣→実食→おいしそうに食べる→あっという間に立ち直る……という落差のある芝居を、今最もインパクトを持って表現できる女優は彼女しかいないとオファーしたという

コンビニCMならではのスピードとダイナミズム

お母さん食堂もそうですが、毎回さまざまなキャラクターが登場します。

権八氏 実は最初は立ち位置(キャラクター)を決めてシリーズ化しようと考えていました。展開もしやすく、イメージが蓄積されることで想起されやすいという利点があるからです。例えばファミマを愛してやまないお客さん、熱血ファミマ社員、無頓着な人にファミマに出合わせる――など。ところが澤田社長の「キャラを固定する必要ある?」の一言で、言われてみれば毎回違うスタンスで広告してもいいのではと思い直しました。

 もともと1案を決めるのに何十案も考えてしまい、しかもどれも愛着を持ってしまう。澤田社長の意見はプレッシャーである一方、考える楽しさを与えてくれました。キャラクターを固定しない代わりに必ず入店音メロディーを取り入れて、それを軸にさせています。

 澤田社長の考えには、コンビニ業界のスピードが根底にあると思います。日々のルーティン自体もそうだし、世の中の動きの速さに合わせたメッセージの伝え方も刻々と変化する。いつも膝を曲げてスタンバっている感じです。当然商品によって課題が違うので、それに合わせてキャラクターを変えるというのは理にかなっている。

 例えば、(独自スマホ決済アプリ)「ファミペイ」では、いろんな“ペイ”が乱立する中で、相当インパクトがないと埋もれてしまう。そこでいかに強く面白くするかに重点を置きました。その点、香取さんは長年いろいろなキャラクターを演じてきて、独立後はますますボーダーレスに活躍している。“慎吾くんは変幻自在”という前提が視聴者にあることがとても大きかった。無名の人だと成立しなかったでしょう。

独自のスマホ決済アプリ「ファミペイ」のCM「“香取ファミ平さま御来店”」編では、“ぺ”の文字がデザインされた眼鏡をかけた長髪の“香取ファミ平”が驚きのあまり100センチ伸びたアゴでレジを破壊するというシュールさ
独自のスマホ決済アプリ「ファミペイ」のCM「“香取ファミ平さま御来店”」編では、“ぺ”の文字がデザインされた眼鏡をかけた長髪の“香取ファミ平”が驚きのあまり100センチ伸びたアゴでレジを破壊するというシュールさ