妻・石田ゆり子、夫・ムロツヨシ。異色のカップルが最新機能でよみがえった家で、快適な暮らしを送る。2019年で3年目を迎えるパナソニックリフォームのCMは、家電メーカーのイメージが強すぎて認知されにくかったリフォーム事業への注目度を、大きく向上させた。

異例の年の差カップルがパナソニックリフォームの認知度をアップ
異例の年の差カップルがパナソニックリフォームの認知度をアップ
今回のキャラクター:石田ゆり子、ムロツヨシ
■企業:パナソニックリフォーム

<クリエーターズファイル>
■クリエイティブ・ディレクター:金城博英(電通)
■プランナー:松下耕二、橋本晋明、良知耕平(すべて電通)
■コピーライター:小郷拓良、佐藤日登美(すべて電通)
■アートディレクター:高瀬未央(電通)
■演出:栗原康(ダイス)
■撮影:小丈康方(STURGEON)
■音楽:山田勝也(愛印)
■広告代理店:電通

「家電だけじゃない!」を伝えたい

 「いいくらしが、いい私をつくっていく」。仕事をしながらも家事に追われることなく、ゆったりと日々を送る石田ゆり子と、それを支えるちょっと二枚目気取りのムロツヨシ。2人が暮らすのは、パナソニックリフォームでリノベーションをしたマンションの一室だ。家事をラクにする最新テクノロジー「ラクテク」を完備した部屋が、生活にゆとりをもたらしている。

 「おはよう」「いってきます」「ただいま」などの言葉で照明や空調のON/OFFや、施錠までしてくれるHOME IoT、自動で洗浄するレンジフードや新素材でお手入れしやすいキッチンや浴室、さらには除菌までするトイレ――。“ラクテク”の魅力を、色彩豊かな料理や入浴シーンといった、生活の風景を描きながらアピールする。

 「パナソニックの家電CMや他の専門メーカーに比べて放映回数は多くはなく、接触機会が少ない割にCMの認知度はとても高い」と、パナソニック宣伝・広報部宣伝制作課主幹の大谷洋氏は反響の高さを明かす。

 1958年に開始したパナソニックの増改築事業は、82年に「リファイン」という名称が付き、2016年には「パナソニックリフォーム」に。施工会社数は全国で増え続け、着実に実績を重ねてきた。一方で家電メーカーのイメージが強すぎるあまり、「パナソニックは増改築事業も手掛けている」ことが消費者に浸透しないという葛藤があった。

 「IHもレンジフードも食洗機も自社で作れる強みがある。性能が伝わればTOTOやリクシル、クリナップやタカラスタンダードといった専門メーカーと横並びで選んでもらえるという思いがあった。施工店から勧めるのではなく、直接お客さまから指名してもらえるようになりたいという目的で、タレントを起用したCMを作ることにした」と、コミュニケーション部広報課汐留分室室長の奥瀬史郎氏は打ち明ける。

 大谷氏によると、「リフォームとリノベーションの割合は約6:4。顧客のボリュームゾーンは50~60代で、ほとんどがリフォームを希望する。リノベーションそのものを知らない人が多い。リノベーションをするのはほとんど若い人」と言う。そこで16年にはターゲット世代の吉田鋼太郎、草刈民代、立川志の輔を起用し、50~60代向けにリノベーションを訴求した。その結果、シニア層のリノベが増え、手応えを感じた。

 そこで次はシニア層と若年層どちらにも訴求できる、中間世代のタレントを起用することにした。社内から挙がった複数の候補のうち、決定したのが石田とムロだった。決め手は一体何だったのか。

HOME IoTおはようおやすみ篇

年の差夫婦の日常を映画監督が描いた

 最初に決まったのは石田だった。

 「リフォームやリノベではキッチンの仕様など主導権を握りやすい主婦をターゲットにしていたので、主婦層から受け入れられる夫婦像を求めていた。キャラクターを選定していた頃、石田さんがドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で脚光を浴びていた。性別問わず人気があり、さらにエッセーなどで生活感も感じさせるキャラクターがぴったりだった」と、大谷氏は石田起用の理由を語る。

 次は夫役だ。パナソニックが求めていたのは、「石田さんを支える40代の年下夫を演じられ、これからブレークしそうな人。パナソニックリフォームと一緒に世の中に広がっていきそうな人。見つけるのは非常に難しかった」(奥瀬氏)。

 そんな中、同社の宣伝部長が当時コント番組などで注目され始めていたムロを推薦した。「他にも候補はいたが、石田さんが決まったことで、それならムロさんしかいない、となった」と奥瀬氏。これまで共演経験がなかった石田とのカップリングを見込んでの起用だった。

 パナソニックは今どきの夫婦像を描くため2人を“共働きの、年の差夫婦”に設定し、普通の商品紹介にしたくないとの思いから、そのストーリーを映画監督に撮影してもらうことにした。第1作のメガホンを取ったのは、『フラガール』の李相日監督。李監督は、2人のキャラクターを通常のCMよりも細かく設定した。

 夫婦ともにアパレルメーカーで働き、当時アルバイトで働いていたムロが7歳年上の石田にほれて結婚した。石田のおっとりした性格は兄がいるから。ムロは実は気が変わりやすい性格で、学生時代はクラブ活動をコロコロ変えていた――。李監督は三枚目キャラのムロをあえて二枚目気取りで演出し、ムロの新たな一面を引き出した。

 2~3秒のカットでも10分はカメラを回し続けた。すると役者も自然と熱が入る。おかげで初共演の2人の息は、ぴったり合うようになった。その後監督が代わってもキャラクター設定は引き継がれている。

ムロは石田とのカップリングを見込んでの起用だった
ムロは石田とのカップリングを見込んでの起用だった

CM効果でショールームの来店客が大幅増

 こん身のCMの効果はすぐに表れた。

 「放映2週間後にはショールームの来店客が大幅に伸びた。さらに『CMに出ていたあれが欲しい』と指名して足を運んでくださる方が増えた。これまでは施工店などに勧められて来店していたが、それに比べて圧倒的に契約に結び付きやすい。紛れもなくCMのおかげだ」(奥瀬氏)

 2人の人気を生かしたデジタル施策も展開した。「#ツヨシとゆり子のFeel Happiness」では、本当の夫婦のような掛け合いの中でラクテクを紹介していく動画を、ツイッターとインスタグラムに投稿した。10本の動画の再生数は数百万回にも上った。

 人気女優と遅咲きの俳優のコンビで狙い通り認知度を高め、商品訴求に成功したパナソニックリフォーム。次なるブランディングの一手に注目したい。

年の差夫婦で「ラクテク」訴求に成功したパナソニックリフォーム
年の差夫婦で「ラクテク」訴求に成功したパナソニックリフォーム

(写真提供/パナソニックリフォーム)

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