発売10周年を迎える日本コカ・コーラの天然水「い・ろ・は・す」は、2019年3月に土屋太鳳と渡辺直美を新キャラクターに起用し、CMを刷新した。全国7つの採水地の天然水やフルーツフレーバーでブランディングを強化する一方、い・ろ・は・すならではの身近さや楽しさの訴求にも踏み込んだ。

2019年3月にリニューアル発売した「い・ろ・は・す」のフルーツフレーバーのCMから土屋太鳳(左)と渡辺直美(右)を起用した
2019年3月にリニューアル発売した「い・ろ・は・す」のフルーツフレーバーのCMから土屋太鳳(左)と渡辺直美(右)を起用した
今回のキャラクター:土屋太鳳、渡辺直美
■商品:い・ろ・は・す
■企業:日本コカ・コーラ

<クリエーターズファイル>
(「あなたの近くで採れた天然水」編)

■エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター:篠原直樹
■クリエイティブディレクター:時松哲哉
■プランナー:牧田智之
■コピーライター:時松哲哉
■アートディレクター:岡室健
■演出:舟越響子
■撮影:中原昌也
■音楽プロデューサー:丹俊樹
■広告代理店:博報堂

ブランドのターニングポイントでセレブリティを一新

 〇〇のCMキャラクターといえば誰――。この質問はブランディングにとって両刃の剣だ。商品やサービスを特定のキャラクターのイメージで訴求すれば、認知度向上に寄与する。しかしそのキャラクターとの“蜜月”が裏目に出て、消費者に飽きられれば注目度は下がってしまう。マンネリのリスクと戦いながら、うまくブランドに対する信頼の醸成につなげていく。それが難しくなれば、企業はキャラクター変更の決断を下さなければならない。だが時として、思い切った刷新が新たな問題の引き金となることもある。

 新しいイメージが定着する前のキャラクター交代――土屋太鳳と渡辺直美は、そうした難しい状況からの脱却を託されることになった。

 実は18年に「い・ろ・は・す」は大きなターニングポイントを迎えていた。09年発売から8年にわたってブランドイメージをけん引してきた阿部寛に代わり、モデルの萬波ユカの起用に踏み切ったのだ。期待に応え、萬波は定番の「い・ろ・は・す 天然水」やフレーバーウオーターをおちゃめに表現してみせた。

 日本コカ・コーラマーケティング本部ウォーターグループグループマネジャーの富重豪氏は、「これまで阿部寛さんという男性タレントが根付かせてくれたブランドイメージに、清らかでスタイリッシュな萬波さんが新たな一面を表現してくれた」と評価する。

 実際、メーンターゲットの20~30代以外の40~50代、シニア世代の需要が高まり、売り上げも上昇。キャラクター刷新は成功したかに見えた。

 ところが別の課題が浮上する。「女性的、スタイリッシュに見えすぎた部分があり、特にフレーバーウオーターは男性ユーザーが多かったことから距離を感じる消費者もいた。もっと身近なものとしてとらえてほしい。阿部さんの時代から重視してきた“楽しさ”という価値も改めて伝えたかった」と、富重氏は打ち明ける。

 いったいなぜ、水のブランドに楽しさを求めるのか。

 い・ろ・は・すは、北海道、奥羽山脈(岩手)、白州(山梨)、砺波(富山)、大山(鳥取)、阿蘇(熊本)、えびの(宮崎)の7つの採水地の水を各エリアで販売する。通常は最寄りの採水地で採れた水しか飲めない。富重氏は「水そのものは味のないもの。だが水源によってのど越しや味わいに微妙な差がある。何となく飲んでも気づきにくい、天然水の楽しさを根付かせたかった」と、楽しさを訴求する意義を説明する。

 その楽しさを伝えるキャラクターとして、同社は土屋と渡辺に目を付けた。

19年に阿蘇が新たに採水地に加わり、改めて身近で採れた天然水であることを強調。7つの採水地を「love me tender」のメロディーに乗せて軽快に歌う