満島ひかり、石田ゆり子、堤真一、鈴木亮平が食事との相性の良さをアピールするキリン「一番搾り」のCMに、2019年5月から濱田岳と足立梨花が加わった。6人起用の背景にはあえて各タレントの“キャラクター色”を薄め、ビールや料理のおいしさと、それがもたらす幸福感を際立たせる狙いがある。

2019年4月にリニューアルした一番搾りのおいしさを伝える。満島ひかりは「餃子とビール」編に出演
2019年4月にリニューアルした一番搾りのおいしさを伝える。満島ひかりは「餃子とビール」編に出演
今回のキャラクター:満島ひかり、堤真一、鈴木亮平、石田ゆり子、濱田岳、足立梨花
■商品:一番搾り
■企業:キリンビール

<クリエーターズファイル(餃子とビール編)>
■エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター/コピーライター:磯島拓矢(電通)
■エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター/プランナー:篠原誠(篠原誠事務所)
■クリエイティブディレクター/プランナー:今井政広(電通)
■コピーライター:渡邊千佳(電通)
■アートディレクター:大藪厳太郎、瀬尾大、西田光(すべて電通)
■演出:大根仁(オフィスクレッシェンド)
■撮影:近藤龍人
■作詞:篠原誠
■音楽:「茶色の小瓶」(演奏:メロディー・パンチ)
■広告代理店:電通

4度目のリニューアルでも伝えたいのは“おいしさ”

 「一緒じゃなきゃだめなんだ 餃子とビールは一緒じゃなきゃだめ 餃子よ ごめんよ やっぱりフライング~♪」――。グレン・ミラー作のスイングジャズの名曲『茶色の小瓶』に合わせて歌ったあと、ギョーザと一番搾りを飲む満島ひかりがたまらず「……あぁ、幸せ!」とうなる。

 19年4月にリニューアルしたキリン「一番搾り」のCMのワンシーンだ。他にも堤真一はバーベキュー、石田ゆり子はさつま揚げ、濱田岳はうなぎ、足立梨花はホルモンと、それぞれが料理に合わせて新しい一番搾りのおいしさを強くプッシュする。さらに鈴木亮平は早めに仕事を切り上げ、明るいうちから一番搾りを飲む喜びを歌い上げる。

 6人6様の設定だが、一口飲んだ後に思わずこぼれる「あぁ、幸せ!」という一言だけは共通。これが今回のCMのキーフレーズだ。

 キリンビールマーケティング本部ビールチームブランドマネージャーの鈴木郁真氏は、「一番搾りはおいしさだけを30年間追求してきた。おいしさがもたらす喜びやビールを飲む時間の幸せがコミュニケーション戦略のテーマ。昨今の働き改革もあり、おいしいものをホッとしながら飲みたいという需要が高まっている。そこでリニューアルを機に『やっぱりビールはおいしい、うれしい』というメッセージを届けようと考えた」と、キーフレーズに込めた思いを明かす。

石田ゆり子は「お土産編」でさつま揚げと一番搾りの相性の良さをアピール
石田ゆり子は「お土産編」でさつま揚げと一番搾りの相性の良さをアピール

 一番搾りは多様化する消費者ニーズに合わせ、1990年に発売された。「キリンと言えばラガーというほど当時はラガービールが強かった。そこに『アサヒスーパードライ』という競合が現れた。だがあえて意識せず、強みの醸造技術を生かして新定番の生ビールを作ることにした。一番うまいビールを追求して行き着いたのが、従来のビールの作り方を覆す“最初に搾った一番麦汁しか使わない”という製法だった」と、鈴木氏は一番搾り開発の経緯を説明する。

 発売直後から話題になり売り上げも伸びた。味の改良も行い、発売20周年の2009年に米などの副原料の使用をなくして麦芽100%にリニューアル。13年、17年にもリニューアルを実施し、その都度シェアを伸ばした。「毎回消費者と向き合って、飲みやすく、飲み飽きないおいしさを追求した」(鈴木氏)。

 緒方拳の「うまいが一番」の言葉とともに、初期のCMから一番搾りは一貫して食事と合う「ビールのおいしさ」を訴求してきた。その後中山美穂や役所広司が出演する2000年に、おいしいビールとおいしい食事で「リラックスする」路線に変更する。新CMの「あぁ、幸せ!」もこの流れをくんでいる。日々いろんなことがあっても、「おいしい食事とうまいビールがあれば、人は幸せな気分になれる」というメッセージを素直に打ち出した。ただ気になるのがキャラクターを6人も起用する理由。またなぜこの6人なのか……。

堤真一はバーベキューをしながら飲む一番搾りのおいしさをアピール
堤真一はバーベキューをしながら飲む一番搾りのおいしさをアピール

いろいろな「すてきな表情」を伝えたい

 「特定の個人が薦めるより、年齢や性別を分けることでタレントのイメージだけでなく、色々な人が見せる、おいしいビールを飲んだときのすてきな表情を伝えたかった」と、鈴木氏はCMキャラクターに6人も起用した理由を明かす。逆説的だが、大人数を登場させることにより個々のタレントが持つ“キャラ色”を薄め、ビールや食事のおいしさ、そして幸福感といったメッセージを際立たせようと考えたのだ。「あくまで商品を中心に置きたい」と鈴木氏も明言する。

 キャラクターはバラエティー豊かにする一方、イメージがばらけてしまわないよう歌を共通項にして、1つの世界観を作り上げた。「音楽や歌はCMの記憶になりやすい」(鈴木氏)ため、CMの浸透度を高める利点もある。

鈴木亮平は早く仕事が終わって、まだ明るいうちに直帰するサラリーマンの設定。“ビールと直帰する幸せ”に浸る
鈴木亮平は早く仕事が終わって、まだ明るいうちに直帰するサラリーマンの設定。“ビールと直帰する幸せ”に浸る

 「各世代を代表するタレントの方々を採用したい」(キリン)との思いから、17年4月のリニューアル時点で堤、満島、鈴木、石田の起用を決定。2年後の4度目のリニューアルに合わせて追加起用した濱田、足立はそれぞれ31歳、26歳と若く、「エントリー層の代表として一番搾りの世界の広がりを表現してもらいたい」(鈴木氏)という期待がある。鈴木氏は「これまでのCMの中で、今回が一番素直にメッセージを出せたと思う。虚勢を張らずに商品で勝負したい」と語る。

 麦汁ろ過の工程で自然に流れ出る“一番搾り麦汁”だけを使って作る一番搾り。コストアップは避けられずプレミアム商品にすべきだとの声もあったが、おいしいビールを多くの人に飲んでもらうことを優先し、通常価格で販売した。ただ真っすぐにおいしさがもたらす幸せを伝えるCMは、「一番うまいビール」を追求した開発の原点に通じている。

19年5月から登場する濱田岳は「うなぎ編」で、白焼き、うまき、肝焼き、かば焼きと、うなぎ料理との相性の良さをアピール
19年5月から登場する濱田岳は「うなぎ編」で、白焼き、うまき、肝焼き、かば焼きと、うなぎ料理との相性の良さをアピール
濱田と同時に起用された足立梨花。「ホルモン編」では初めてホルモンとビールの相性の良さに気づくという設定でエントリー層を狙う
濱田と同時に起用された足立梨花。「ホルモン編」では初めてホルモンとビールの相性の良さに気づくという設定でエントリー層を狙う

(写真提供/キリンビール)