応募で選ばれた1000人の10代と全力で「OH~」と熱唱する広瀬すずとSHISHAMO。ロッテのラクトアイス「爽」のCMは、若者のあふれるアツさが充満している。CM戦略の転換で巻き返した爽の次なる一手は「青春時代への共感」。広瀬とSHISHAMOにCMへの“アツい”思いを聞いた。

1000人の10代と広瀬すず&SHISHAMOによるコラボレーションは一日限りの部活動という設定で、「全力合爽部」と名付けられた
1000人の10代と広瀬すず&SHISHAMOによるコラボレーションは一日限りの部活動という設定で、「全力合爽部」と名付けられた
今回のキャラクター:広瀬すず、SHISHAMO
■製品:「爽」
■企業:ロッテ

<クリエーターズファイル>
■クリエイティブディレクター:小布施 典孝
■コミュニケーションプランナー:吉川 隼太
■コミュニケーションプランナーー/CM・PRプランナー:高橋 慧至
■コピーライター:姉川 伊織、澤田 桃子
■アートディレクター:齋藤 陽平
■クリエイティブ・プロデューサー:阿部 浩二(DCF)
■プロデューサー:須堯 大介
■監督:三國 喜昭
■撮影:越後 祐太
■音楽:SHISHAMO「OH」
■広告代理店:電通

情緒面への訴求で売り上げを巻き返し

 「OHー。 ダサくて何が悪い」。川崎市・等々力陸上競技場内の円形ステージを囲んだ1000人の若者が、拳を突き上げ全力で歌う。ステージに立つのは、青い衣装を着た広瀬すずと女性3ピースバンド・SHISHAMO。2019年に発売20周年を迎えるロッテのラクトアイス「爽」のCMだ。

 青いパッケージが印象的な爽は、微細氷が入ったカップ入りのラクトアイス。濃厚なアイスクリームの中に入ったシャリシャリとした独特な食感が特徴で、ロッテのアイスの中では比較的若年層を狙っている。「リフレッシュメントを求めるすべての人がターゲットだが、メインは今回CMに出演した若い層から働き盛りの30代男女。部活や仕事を全力でがんばっている人たち」と、ロッテノベーション本部ブランド戦略担当アイス企画課の久野和雅氏は言う。

 1999年にオンリーワンの食感を武器に、「新感覚ラクトアイス」として登場した爽。ただ、全国発売2年目の01年を頂点に、その後は「少し飽きられたのか下降気味になった」と久野氏。そこでまず09年に新フレーバー「ソーダフロート味」を発売し、ヒットしたことで再び存在感を示した。さらに独自のポジションを築くために爽が取った手段が、CM戦略を16年春からこれまでの品質や情緒・シーン訴求から存在意義への訴求に転換することだった。

 「2020年を見据えて一定の水準で生き残り定番ブランドになるためには、存在意義が必要で、社会価値にまで昇華させる必要があった。スマホやSNSが普及し常に何かに追われ、余裕がなくなってしまっているという時代の潮流に着目。窮屈で余裕がない現実から解放されて何も考えないひとときにこそ、“微細氷”がスッキリと頭を空っぽにしてくれ、“バニラの味わい”が癒しを提供できる『爽』がぴったりではないか、ということに気が付いた」(久野氏)

 爽を食べている時くらい、頭をからっぽにしてほしいという思いも込め『NO THINK 爽ハッピー』というキャッチコピーを付けたコミュニケーション戦略を18年まで継続した。ロッテノベーション本部宣伝担当コミュニケーション戦略課の川崎大輔氏は、「路線をシフトしたことで共感を得られ、売り上げも上り調子になり、2018年4月~2019年3月のパーソナルカップ市場での金額シェアは2位(インテージSRI)だった」と、路線転換の成果を実感する。

 このコミュニケーション戦略の路線変更で起用されたのが広瀬だった。若い俳優は数多くいる中でなぜ広瀬に白羽の矢が立ったのか。そして、1000人の若者がSHISHAMOと全力合奏した理由は何なのか。

商品発表会では4人での“合爽”を披露した
商品発表会では4人での“合爽”を披露した

爽やかさと明るさが広瀬起用の決め手

 「広瀬さんは国民的に愛されている爽やかな女優で、ブランドの明るく、楽しく、爽やかな世界観ととてもマッチする」と、川崎氏は広瀬の起用理由をこう説明する。

 路線変更をした16年のCMはスマホの着信を無視したかと思えば突然叫び「考えるのや~めた」という内容で、「少し小難しい概念的なコミュニケーションになってしまった。その反省から17年は『NO THINK』の気持ちよさを明るく元気なアクティブなトーンで表現し、行動喚起を図ろうということで、広瀬さんを起用した。描きたかったCMのイメージにもぴったりだった」(ロッテ)。これまでも同社の「フィッツ」や「ガーナチョコレート」など複数ブランドのCMに出演してきた広瀬。爽では特に商品特徴に合致する爽やかさや明るさが決め手となった。

爽やかさや明るさが決め手に
爽やかさや明るさが決め手に

 働き方改革など新たな潮目が表れた19年には、さらに戦略を見直し『全力って爽ハッピー』というコピーに変更した。そのタイミングのSHISHAMOの起用については、「いろいろなアーティストの中でも爽の世界観に非常にマッチする。若年層、特にティーンに人気があり、実力もある。19年は『君の隣にいたいから』がNHK全国学校コンクールの中学生の部の課題曲に選ばれ、さらに注目度は上がるだろう」(川崎氏)と、爽のメインターゲットと合致することが大きな理由だ。

 「合爽部」に選ばれた1000人はTwitterとTikTokを通じて募集した。「熱意のある動画やメッセージ」が応募条件で、「部活をがんばれなかった自分が悔しいから今回の場でぶつけたい」などアツいメッセージが全国から届いた。抽選が困難なほどの応募数だったが、アツさが際立った1000人を選んだ。

 当日の熱気は出演者をも圧倒するほどだった。広瀬は「1000人が全力で声を上げて歌ってくれた。そのエネルギー、パワーはすごく、みんなの全力の思いを受け止めながら自分たちも全力で伝えた。リアルな空気感をそのまま撮ってもらったので、ミュージックビデオのような新鮮さ。新感覚の撮影だった」と振り返る。

ライブのような臨場感をそのままCMに
ライブのような臨場感をそのままCMに
10代の熱い思いは出演者を圧倒するほどだった
10代の熱い思いは出演者を圧倒するほどだった

 ティーンばかりが目立つCMだが、若年層だけを狙ったわけではない。川崎氏は「10代の熱い映像は大人も共感できる。『こういう青春時代もあったな』と共感してもらえるよう、CM放映直後の1週間は大きな交通広告も張り出した」。青春時代の懐かしい思いを呼び覚まし、幅広い層にブランド訴求を図る目的があったという。

歌が始まる前に念入りに発声練習をして一体感を高めた
歌が始まる前に念入りに発声練習をして一体感を高めた

広瀬すず&SHISHAMOにインタビュー

今回のCM撮影で特に印象的だった点、 広瀬さん自身が意識された点を教えてください。

広瀬すず:どこを見ていいのかすら分からないほどの“ドギマギ”を隠すのに必死でした。 でも高校生のみなさんのエネルギッシュなパワーに圧倒され、自然と楽しんじゃいました。

今回はCM用に書き下ろした曲ですが、意識した点を教えてください。

SHISHAMO(宮崎朝子氏):最初から“全力合爽”と言うテーマは決まっていて、みんなで歌えるものを作ろうという話になりました。みんなが参加してくれる曲というものを初めて意識して作ったのでバンドとしてもいい経験になりました。

 すでにライブでも結構演奏しているが、最初にサビの部分をみんなで練習をして歌ってもらうというのは初めてで、演奏中にみんなの声が聞こえるというのは気持ちよく演奏できます。

これまでもテーマを決めて曲を作ることはありましたか。

宮崎氏:結構多いんじゃないかなと。こういう曲を作りたいというものがあるほうが私は作りやすいので、タイアップで作る方が楽しい。縛りがある中で作る方が好きなので。

CMソングはファンではない人も聞くし、一生心に残る場合もあります。

宮崎氏:ありがたいです。SHISHAMOを好きな人だけでなく、自然とテレビをつけていたら流れてくるというのは。私達も誰かに聞いてほしくて曲を作っているので。テレビで流れてくると何回聞いても「私の曲だ!」と感動します。

広瀬さんの印象は?

すごく話していて楽しい方。最初はお互いなんとなく距離があったんですが、お会いするうちにいろんなお話をするようになって、楽しくてかわいらしくて素敵な方だと思いました。

ライブの臨場感で「全力って爽ハッピー」

 等々力陸上競技場で広瀬すず、SHISHAMO、そして1000人の10代が「OH」を声を張り上げて歌う。吹奏楽を演奏する生徒の姿も。白熱のライブのあと、笑顔で爽を食べる姿に広瀬のナレーションとテロップで「全力って爽ハッピー!」のメッセージをアピールする。

(写真/酒井康治、写真提供/ロッテ)