繊細なストーリーだが演技派で心地よく伝える

 思春期の子供の心の動きと親との関係を描く繊細なストーリーのため、CMキャラクターは演技力を最も重視した。最初に決めたのは、母親役の宮沢りえ。

 「表現の仕方で(話の)受け止め方が違ってくる。見たくないものを見せられたと思ってほしくない。宮沢さんは演技力抜群でキャリアも長く、からっと明るい母親から繊細な役どころまで演じられる。視聴者に心地よく受け止めてもらえると確信していたので、彼女しかいなかった」と、宮沢起用の理由を玉井氏は説明する。

 次に娘役の南沙良と夫役の大倉孝二が決まった。2人とも宮沢と比べてそん色ない演技力が見込まれた。特に16歳の南は、まさに思春期。「見る人たちの気持ちを想像しながら一緒にCMの世界を作り上げてほしい思いがあり、同年代なら想像しやすいに違いないと考えた」(玉井氏)。

 大倉演じる中学の生物教師はどこか抜けた感じで、妻の尻に敷かれる役どころ。「一見強そうな人が演じることで、ギャップがチャーミングに映ると思った」(玉井氏)。

 18年9月の放映以来、「ポッキー何本分」シリーズに夫婦のコミュニケーションをテーマにした「午後の贅沢」編を含め、4つのバージョンを重ねてきた。最初からSNSを中心に大きな反響があった。母親目線では「感動した」「自分が娘のときにしてもらったことを思い出した」という感想が。一方、子供の立場では「実際にポッキー5本分話そうをやってみた」「これからポッキー買ってきます」という声があったという。

 「回を重ねるごとに、新作を楽しみに見てくれる人が少しずつ増えてきたと実感する」と、玉井氏も手ごたえを感じている。

宮沢りえの演技力が繊細なストーリーを心地よく伝える
宮沢りえの演技力が繊細なストーリーを心地よく伝える

 Web上ではデビュー編を丁寧に描いた7分間の長編動画も公開した。他にも南のみが出演する6秒動画や、学校生活を描いた4分間の動画を限定公開するなど、デジタル展開に注力している。「ある程度の長さがあるほうがメッセージが伝わりやすい。特にここ数年で視聴環境も変化してきているので、デジタルに重きを置いている」と玉井氏。

 18年12月にはグーグルが優れたYouTube上のCM映像を選ぶ「Japan YouTube Ads Leaderboard:2018年 下半期」でグランプリを受賞した。「動画再生数が320万回を超えていること、7分という長さにも関わらず『視聴者維持率(途中で止めずに見続けた割合)』が非常に高いことを評価された」(江崎グリコ)という。

 今回はポッキーを「会話のきっかけになるコミュニケーションツール」と位置づけていることから、メール、SMSなど意思伝達のツールはすべて“競合”と見ている。「ポッキーならではの、対面によるコミュニケーションがもたらす幸せを伝えていきたい」と玉井氏は意気込む。思春期を迎えた子供を持つ親なら、自分たちも長きにわたってポッキーを食べてきた世代だろう。親も子供も、互いに「どういうわけか、最近話しづらくなったな……」と感じているなら、この“細い棒”に懸けてみてはどうだろう。案外、頼りになるかもしれない。