低価格ビール類との戦いとスーパードライの迷走

 2000年に発泡酒の出荷量が大幅に増加し、05年には新ジャンル(第3のビール)も勢力を伸ばす。各社企業努力で改良を重ね、手ごろな価格でビールに似た味わいを楽しめるようになった。低価格ビール類の活況の余波で、ビールの出荷量は00年以降徐々に減少傾向にあるという。「10年には発泡酒と新ジャンルの合算出荷量が、ビール出荷量とほぼ同数になった」(石原氏)。

 かつてない苦境に追い込まれながらも、ビール分野では約50%というシェアを維持するスーパードライが採った施策は、今飲んでいる人を逃がさず“ロイヤルユーザー”にすることだった。「安さを理由に離れたユーザーを取り戻すのは難しい。だから主にスーパードライを飲んでいる人だけでなく、新ジャンルなどと併飲している人をターゲットに、スーパードライの主飲率を上げる方向に切り替えた」(石原氏)。

 落合氏から続くCMでは仕事の成功による達成感を主に描いてきたが、「仕事の成功や勝利ではなく、意志の強さやひた向きさを感じるアスリートを起用し、挑戦し続けるというメッセージを伝えた」(石原氏)。再び存在感を強調することで主飲率やロイヤルティーなどの主要な指標は上向いたものの、「市場は新ジャンルの新商品に沸き、販売実績を明確に好転させるには至らなかった」(石原氏)と振り返る。

 それならばと、低価格ビール類ユーザーを取り込むためカジュアルに振った演出でCMを展開。しかし「併飲率は高まったが、逆にスーパードライ主飲者のロイヤルティーが緩んでしまった」(石原氏)と裏目に出る結果に。

 こうした低価格ビール類登場後の曲折の歴史を見れば、なぜスーパードライが「ビールナンバーワンブランドとしての確固たる地位の強化」という原点回帰にたどり着いたかが分かるに違いない。“ビールナンバーワン”こそが、スーパードライが消費者に対して打ち出せる、最も揺るぎないメッセージだからだ。そのメッセージを託せる強力な頼みの綱こそが、福山雅治という「唯一無二のキャラクター」(石原氏)なのだ。

 以降は先述の通り、福山をメインキャラクターに据えながら10年間トップを守り抜いてきた。30周年を迎えた17年には、ジョニー・デップと“一度限りの競演”も果たした。そして19年には、ビールトップの自信と誇りをアピールすべく、「THE JAPAN BRAND」のメッセージとともにスーパードライを打ち出す。

「アサヒスーパードライ THE JAPAN BRAND宣言」編
「アサヒスーパードライ THE JAPAN BRAND宣言」編

 イタリアの有名ビール「ペローニ ナストロ アズーロ」を製造するビラ・ペローニ社のパドバ工場で欧州に向けてスーパードライの製造が始まったことを伝える「アサヒスーパードライ THE JAPAN BRAND宣言」編など、現在放映されているほぼすべてのCMにTHE JAPAN BRANDのメッセージを乗せる。

 「これまで海外ではライセンスで製造してきたが、パドバでは技術者が現地に入り日本と全く同じクオリティーで製造している。日本で最も売れているビールから、日本を代表するブランドとして訴求していく」と石原氏は狙いを明かす。

 とはいえ低価格ビール類との競争は終わるどころか、熾烈(しれつ)さを増している。歴史を振り返れば、いかに“ビールの巨人”とはいえ、手綱を緩めればすぐそこに迷路が待ち構える。さらにその先は、トップ陥落への急坂かもしれない。原点回帰を掲げ、福山の起用でひとまず迷いから覚めたスーパードライ。それは同時に、これからも「挑戦と革新」をひたすら繰り返すという宿命を再確認したことに他ならない。

“五感で感じる”「スーパードライ 新エクストラコールド」

「スーパードライ 新エクストラコールド」編
「スーパードライ 新エクストラコールド」編

 「スーパードライ 新エクストラコールド」編では、氷の洞窟を歩く福山がキンキンに冷えた「スーパードライ エクストラコールド」を振るまうバーを見つけ、“五感で感じながら”飲む。限定店舗でしか飲めない氷点下(ー2~0度)まで冷やしたエクストラコールドの新感覚をアピールする。

One and Onlyのスーパードライの挑戦を伝える企業広告

「イノベーション広告 辛口篇」
「イノベーション広告 辛口篇」

 「イノベーション広告 辛口篇」は工場や研究所で働く従業員が出演し、辛口ビールでイノベーションを起こした“One and Only”のスーパードライの挑戦を伝える。

なつかしCMギャラリー

18年には20~30代をターゲットした「アサヒスーパードライ 瞬冷辛口」のCMに菅田将暉を起用し若者に訴求した
18年には20~30代をターゲットした「アサヒスーパードライ 瞬冷辛口」のCMに菅田将暉を起用し若者に訴求した

(写真提供/アサヒビール)